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欲張り。

金曜日から体調があまり良くない。
前日の木曜日に卒業以来会っていなかった大学の友達と集まった。久しぶりの酒を飲み、始発で帰った。
途中下車して、少し吐いた。人生初めての経験だった。朝の奈良は肌寒い。
酒が残っていたのか胃が少し気持ち悪くて、二日酔いかなと思いながら、金曜日を過ごした。
頭痛とかはなく、ただ気分が良くなかった。
ご飯は食べられるけれど、気持ちが悪い。
まあ翌日には治るだろう、と高を括っていた。現実は惨憺たるもので望みは紙切れのように破られた。

何か、少し浮いてるような。ジェットコースターに乗ってる時みたいな感覚?僕は人生で一日しかジェットコースターに乗ったことはないが。
それが四六時中つきまとう。
人と関わってる間はそれを忘れられた。一人になると苦しかった。忘れられるように作業に打ち込んだ。あまり集中は出来ていなかった。
食事は美味しいと感じられる。ただ一口で味には満足できた。
だけど、僕はご飯をおかわりした。

寝転がりながら、一つのことを考えていた。僕が今求めているもの。
漠然と、抽象的な、触れたら砂のように僕の手の間からこぼれ落ちて逃げてしまいそうな。

その翌日、つまり今日になるわけだが、依然として気持ち悪さとのルームシェアは続いていた。
なんなら奴は勝手に友達まで連れてきた。えずき、という。
お前とは、俺が不安とか緊張の前に立った時だけ会う約束だったろ?
日常の動作の最中でも、彼は僕に肩パンしてきた。される度に、沈むような気持ちになった。
やはり、この日も人とコミュニケーションを交わしている間は彼らは僕にちょっかいは掛けてこなかった。

夕食を終え、何かに駆られるように散歩へと出かけた。
歩くときポッドキャストを聴くが、このときは音楽を聴いた。ふと思う。情報の供給過多、という可能性。
ポエトリーラップを聴きながら川沿いに向かって歩いていく。車のライトが眩しい大通りではなく、暗い川沿いの道を求めていた。
よく歩いたり、走ったりした道。僕にどこか落ち着きを与えてくれる。
歩きは一つの気づきをくれた。ただ歩いてるだけなのにえずいていた。その時に。
この数日のえずきや気持ち悪さは酒によるものではなく、僕を超える"何か"によるものだ。
そう思ったとき、世界を感じた。
この世界はユグドラシルを中心に9つの世界が繋がっている。

川沿いを歩く。途中すれ違う人が通り魔で、刺されたら気が楽になるか。
この期待は儚くも裏切られる。
さらに川に近づける階段の前で立っていた、あの女性は何を思ってそこにいたのだろう。目標地点としていた橋にたどり着き、渡る。そして復路にさしかかる。
身体の思うままに、川に近づける階段を下り、より近い川沿いの道に来た。
周りには誰もいない。これはこの日の朝に読んでいた漫画の影響だが、走りたくなった。
そう思ったときには、小走りになって徐々にスピードを上げる。
走っているときは何も考えていなくて、ただ走ることだけと対峙していた。
100mくらい走れたかな。徐々にスピードを落として歩き始める。
全力で走ったのはいつぶりだろうか。人生史上一番速かった気がした。
そう思いながら、少し歩いていた。また気づいたら走っていた。
橋の下にさしかかる。家へと近づいていく為の道だ。だのに、僕はUターンしてもう少し走ることを選択していた。
結局5本くらい全力疾走した。意外と体力があったことに驚きながら、口の中に広がる鉄の味にはどこか爽快感を覚えた。
これまであった気持ち悪さがどこか払拭された心地だった。
荒い息を整えながら、家へと歩みを進める。
歩いていると、またえずいた。

人が居ない静かな道。歌いながら歩いた。
この一ヶ月で知って、頭に流れるその歌。
対岸を見ると、男の人がタバコを吸っていたが、歌いやめなかった。

家に帰ると、気分の悪さはまだ帰っていなかった。
もう少しルームシェアをすることになりそうだ。

久方ぶりの友人たちと会い、何か形容しがたい孤独感みたいなものを感じていた。皆と居て、皆と居ない感じ。

最近の僕が求めるもの。
それは420のような快楽や安らぎをくれるようなもの。
余談だが、僕の誕生日5/21は中国では語呂合わせ的に我爱你という意味をもつらしい。
僕はただ、あなたからの【好き】という二文字が欲しい。寂しいんだ。


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