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書庫冷凍 毎週ショートショートnote

「アイスクリームを買って来るわ」
そう言って出かけた彼女がもう二ヶ月も帰ってこない。

そんなある日、一人の男が訪れて彼女の居場所を知っていると言う。
居場所を教える代わりに、我が家の書庫を見たいと話す。
書庫は何度も探したが、彼女に繋がる情報は得られなかったのだ。
しかし藁にも縋る思いで男を書庫に案内した。
古い書物があるだけの書庫は、いつもと同じ黴臭い匂いが漂っている。

「この書庫の一部はかつて冷凍庫として作られたのです」
男の言葉。
「なんでそんなこと知っているのだ」
「この家を建てたのは私だからですよ」
男は本棚から何冊かの本を抜く。そして現れた目立たないスイッチを押す。

現れたのは人間一人が入るくらいの空間。
男はあっという間に彼をそこに押し込み、素早く閉じ込めた。
「な、何をする!」
狭い空間に冷気が押し寄せてきた。
彼は声を上げたが無駄だった。

男は携帯を取り出し
「終わった」
と一言。

その日から彼女は姿を現し、彼が行方不明となった。


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たらはかにさんの今週のお題『書庫冷凍』です。
よろしくお願いいたします。


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