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誘惑銀杏 毎週ショートショートnote

秋も深まり、心の奥底で人知れず残っていた小さな炎が少しずつ成長を始める季節。

黒の魔女は、銀杏の実を木から落ちる前に集めていく。黒いカラスと黒い猫を伴って。毎年の大仕事。

銀杏の匂いに鼻をつまむ者は多いが。これはお宝なのだ。秘薬を作るためにはこれが無くてはならない。
例えば香水を作るのに、良い香りのものを調合するが、ほんのちょっぴりだけ臭い香りを足す。よく知られた事で知っている者も多かろう。それと似たような事だ。銀杏が無ければ秘薬は完成しない。

お察しの通り、私が作ろうとしているのは、惚れ薬だよ。私の作る惚れ薬は引く手あまたでね、そろそろ邸宅が建てられるよ。

「おばあさん、危ないですよ」
そう声をかけたのはイケメン。
私も女の端くれなのでイケメンには弱い。

「木の銀杏が必要でしたら私が」
言うが早いか、スルスルと木に登り、彼は籠一杯の銀杏を取ってくれた。
な、なんか惚れちまったよ。
完成した秘薬は彼に飲ませ誘惑しよう。楽しみだね。



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