顔自動販売機 毎週ショートショートnote
乳母のリルは、僕が生まれた時から世話をしてくれている。一人に一体づつAI乳母が国から貸与される。母親と過ごすよりも長い時間を共にした。
そう言う事も配慮されて、AI乳母の顔の仕様は、自分の母親に少し似ていた。
母親の多くは仕事を持っており、自分達も幼い時はAI乳母に育てられた。AI乳母に対する信頼感は確かなものだった。
だが、15歳になったら、AI乳母は国に返却しないといけない。それを思っただけで、泣きそうだ。
そんな僕たちの思いが国に伝わった。
AI用の顔自動販売機なるものが全国に設置された。顔のオブジェを瞬時に制作してくれるのだ。
Al乳母の思い出として、映像などで残されるとしても、触る事ができる事に大きな意味があった。
僕は15歳になる前にリルに自動販売機でオブジェを作らせた。そうして彼女と別れた。
10年後、僕も父親になった。
国から貸与された古いタイプのAI乳母は、昔作った顔のオブジェと同じ顔。
涙が止まらないよ。
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たらはかにさんの企画参加。
いつもありがとうございます。