神様時計|毎週ショートショートnote
私が中学生になった時、お祝いに買ってもらったのは初めての腕時計。大抵の子がそうだった。
もう外にいる時、見知らぬ人に
「今何時ですか」と聞かなくてもいいし、バス停の前でオロオロしなくても良いのだ。
大人への階段を一段だけ上がったような気がして嬉しかった。
時刻を知るには、腕時計は無くてはならないアイテムだった時代。特に田舎ではね。
大人になるまで大切に使った腕時計。
もうネジを巻いても動かない。寿命が尽き、時計とお別れの日が訪れた。
私は腕時計を丁寧に磨き、ありがとうを伝えた。
私を、見て、感じていてくれた腕時計は天に昇る。
神様に新しい命をもらう為に。
こうして集められた時計達は、前の所有者の記憶が無くなる。
天の時計工場で再生される。
勿論、再生されるのは時計の部品では無い。時計の心、魂だ。
再生された時計の魂は、神様時計と名前が変わる。
どこに届けられるのか知っていますか。
勿論、私達の新しい時計の中にね。
また大事に使いましょうね。
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初めて腕時計を手にした時を思い出しました。
今なら、中学生になったお祝いはスマホなのかな。
たらはかにさんの企画に参加させて頂いています。