ハロウィンの夜 ショートストーリー
2学年のハロウィンパーティーの後、仮装したままパレードに参加した。
私の仮装は黒猫。本当は魔女になりたかったのだけど、いろいろあって私は黒猫に仮装する事にしたの。
星のついたステッキを振りながら意気揚々と行進の末尾を行く私。様になっていると自画自賛。
そしたらね、本物の黒猫たちが私の後ろをついて来たのよ。足取りも軽やかに。初めからそうなるのが当たり前だったみたいに。不思議よね。
皆も驚いた顔をしていたけれど、気に入ったみたいで、私の肩をポンポンと叩いてくれたんだ。
「やったね、ネココ!スゴイじゃん!」
私が黒猫たちを呼んだのではないって、とうとう言えなかった。
パレードは進み、私たちの後の黒猫の行列が少しずつ長くなっていく。
沿道からも拍手喝采。猫たちも気を良くしたのかお回りをしたり、頭を下げて声援に応えていた。
小さな私たちの街を一回り半して学校の前で散会となった。
「大盛況だったと言っても良いわ、ネココ!」「ネココ、ありがとう!」「楽しかったね、ネココ。また明日ね」
俄か魔女たちはそう言いながら散っていった。なぜか私と黒猫たちはその場に残された。
「ネココさん、今日はありがとう。楽しいパレードでした。でもまだお別れしたくないです」
「もう少し一緒に遊びましょう。ところで、なんでネココなんですか?」
黒猫たちが言葉を話しているのは今日がハロウィンだからかしらと私は思った。
「私の名前は『山根ココロ』っていうの。皆が面白がってそう呼んでるの。まあ、ヤマネコでなくて良かったんだけどね」
「なるほど面白いですね、ネココさん。実は僕たち、魔女のお供の猫なんです」
「え!?ビックリ!それで喋れるのね。へー、凄い!」
「喋れるのは今日だけです。だから遊びましょう!お喋りしましょう!」
「なんで私となの。今日会ったのが初めてでしょ」
「さっきのパレードであなたがステッキを振っていましたが、あの動きは『黒猫集まれ』の合図だったのですよ。僕らも偶然だとはわかっていますが、つい、ついて行きたくなりました。
「私としては、魔法の国や魔女の話を聞きたいけど、みんなは遊びたいのよね」
「はーい」と皆大きな声で返事をした。
今日はハロウィンなんだから黒猫たちと遊ぶことにした。三日月がいつのまのか大きな満月に変わっていた。
それもハロウィンの魔法なんだと思った。
そう、満月こそが合図だったのだけれど。
こんなこと誰も信じてくれないと思うけれど。その先の記憶が無いの。忘却魔法をかけられたのかしら。それとも夢?私はいったいどんなハロウィンの夜を過ごしたのかしら。
でも、とても楽しかった……。と思うのよ。
それとね、私の胸に黒猫のブローチが光っているでしょ。黒猫たちが記念にくれたのだと思うの。
ね、夢じゃないわよね?
おしまい 1134文字
彼女はどんなハロウィンの夜を過ごしたのでしょうね。いつか黒猫のブローチが語ってくれるような気がします。
読んで頂きありがとうございます。 めい