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星が降る シロクマ文芸部

星が降るようになった。しかも大量に。毎日毎晩。
星が降る。それはもはやロマンチックな意味相いを持たない。
文字通りの星屑と化した星。
このまま行けばいつかはこの小さな島は、その重みで海に沈むと思われた。

当然このまま黙って島の最後を見届けるわけにはいかない。
島民は溜まっていく星屑を海に捨てていく。来る日も来る日も。
男も女も若者も年寄りも、そして子供たちも。
しかし、思ったほどの成果があったとは思えなかったが島民はひたすら作業を繰り返した。

数か月が過ぎた時、星屑はこの島に降って来なくなった。
それはあまりにも突然の事で、島民たちは呆然と空を見上げた。
気づいてみればこの島は少しずつ大きくなり、その地形にも変化があった。
星屑のせいだけではなく、島自体が少しずつ隆起していたのだ。

いや、隆起したと言うのは間違いであったことを島民たちは知った。
島は海から離れ、ポッカリ浮かんでいた。
少しずつ島は高さを増していく。海はどんどん島から離れていった。
遠くにある大きな島や、かなり離れているはずの大陸が遠目ながらも見えてきた。
島は空に向かっていた。恐怖が島民たちを襲う。


周辺の島々に住んでいる者たちは一つの島が空に消えていくのを目撃した。
それは恐怖と言うより神々しい事態のように感じ、涙を流しながら跪くひざまずくのだった。

それから数日後、消えた島民たちは住んでいた隣の島に突然現れた。
口々に意味不明の不思議な話をしたが信じるものは皆無であったとか。

消えていった星の降る島がその後どうなったのか永遠の謎とされていたが、それから考えられないほどの年月が過ぎた時解明されたのだ。島は星屑の捨て場として宇宙人に利用されていたらしい。
その島は人が住んでいる島と宇宙人は認識していなかったようだ。
たくさんのゴミである星屑をほかの星に残してはおけないという判断で、島ごと回収したらしい。
人が住んでいる島だと知ったのは回収が終了してからだ。
島の者達は彼らを神と思ったようだが無理もないだろう。
神という名の宇宙人だと思われる者達の住む星については現在も探索中である。

宇宙のどこかにあの島は存在しているのだろうか。もしかしたら、また地球に戻されたのかもしれない。そうであれば探し当ててみたいものだ。案外私たちにとってそれはよく知っている身近な島なのかもしれない。

その島はきっと今でも流星が多く観察されているような気がするのです。


了 


小松幸助部長、今週もよろしくお願いいたします。
今週のシロクマ文芸部のお題『星が降る』から始まる話です。

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