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紅葉のステージ シロクマ文芸部

紅葉から落葉するまでを私は病院のベッドの上で眺めていた。美しい秋のステージ。たった一人の観客のために、儚げに寂し気に舞う踊り子たち。私のために表情豊かに秋の最後のステージを見せてくれていた。
しみじみと窓の外を眺めている私に、夫は言ったのだ。

「お前は、次の紅葉を見届けることはできないだろう。しっかり心に刻んでおくんだな」
昨年私に耳打ちした夫の声が蘇る。冷たく私の中に流れ込んだ言葉。
その夫は既にこの世にいない。皮肉なものだ。
そして、私のたった一人の身内、妹も私から離れていった。予定では妹は今頃、私の夫と結婚式を挙げるはずであったのだ。私が命を失わなかったばかりにそれは叶わなかった。

文字通りのひとりぼっちだが、あっさりとサバサバとした気持ちでもある。

明日、私は退院する。秋のセレモニーの最中に私は自身の一つのステージを降りるのだ。次のステージを歩いて行くだけの力はある。医者も太鼓判を押してくれた。
赤や黄色の様々な形や色の花吹雪ならぬ落ち葉の中を胸を張って歩くつもりだ。
その道の先に続く場所は、きっと華やかな色に満ちていると思われた。
辛いリハビリのおかげで力強い私の歩み。頼もしい。
頑張れたのは、私の仕組んだ罠をいの一番に片付けておかねばならないから。立つ鳥はけっして跡を濁してはならないのだ。


了 548文字


小牧幸助さんの企画に今週も参加させて頂いています。
よろしくお願いいたします。めい


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