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ハチミツは シロクマ文芸部

「ハチミツは肌に良いのよ」
そう言いながらお姉ちゃんは今夜もハチミツパックを始める。
食べるだけじゃダメなのかしら。
もったいない。あのハチミツは結構お高い。
ああ、舐めたいなあ。お姉ちゃんのホッペ。

同じことを考えた者がいた。猫のフジ。
お姉ちゃんが鏡とにらめっこしてる間に、狙いを定めてお姉ちゃんの肩に飛び乗る。
お姉ちゃん、逃げ隠れできない。お姉ちゃんは「やめて〜!」と言いながらも笑ってる。

フジは少し舐めて気が済んだのか、お姉ちゃんの肩から飛び降りた。透かさず私はお姉ちゃんのホッペを舐める。ちょっぴりだけど。
お姉ちゃんはフジには怒らなかったのに、私には怒った。なんで?

そのあとお姉ちゃんは顔を洗うために洗面所に行った。ここでお母さんに顔を見られてしまい怒られた。
食べ物を粗末にしたり遊んではいけないって。
お姉ちゃんも言い返す。
「綺麗になりたいんだもん」
「大人になってからやりなさい。そんなことしなくても、子供の肌はきれいなんだから」


そんな昔々の思い出話をお姉ちゃんとした。
子供の頃の話しはいつも盛り上がる。同じ話を繰り返す。
お母さんもフジもすでにいない。
二人で紅茶を飲む。
ハチミツ入りの甘い紅茶はずっと私たちを繋いでいる。




了 509文字

小牧部長、参加させて頂きありがとうございます。
今週の小牧部長のお題「ハチミツは」から始まる思い出話です。
実際は姉の方が私ですけれど。




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