惰性のエッヘン開放 毎週ショートショートnote
気の小さな殿様がおった。
家来達は小さな声で話す殿に、もう少し胸を張って威厳をもって接して欲しいと思っておった。
殿も心の中では威厳をもって大きな声で話して「エッヘン」とも言ってみたかった。いつもいつも惰性で、心の中だけで呟いてきた「エッヘン」は溜まっていくばかりでな。
殿様はとうとう心の病気になったそうじゃよ。
名医と言われる者たちが入れ替わりお城に呼ばれたが、殿様の容態は変わらんじゃった。
そんなある日、お城に一人の女がやってきた。
医者の妻であったので殿の世話係として働くことになったんだと。名はサキと言ったかの。
彼女は医者の夫から、心のほぐし方を伝授され、殿の側に訪れたんだよ。
秘伝ともいえる方法で殿の心を解きほぐす事に成功したんだと。
そしてある日、殿は叫んだ。とても大きな声で。
「皆の者、わしはこの国を守り、国を繁栄に導くぞー」
殿の心に溜まったエッヘンが一瞬で開放されたんだな。
サキは、たんと褒美を受け取ったそうじゃよ。
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たらはかにさんの企画です。
今回の裏お題 惰性のエッヘン開放 は、『惰性』『エッヘン』『開放』と三つの単語が連なる。難しいはずですよね。