金の指輪 シロクマ文芸部 653文字
金色に広がる世界はどこかにあるのだろうか。
あれば是非見てみたい。
そして、その一部を切り取って、金の指輪にしてみたい。
そんなことを考えていて、気づいた。そこは現在両親がいる場所なのではないかと。そうであれば罰当たりだよね。
神様、ごめんなさい。
幼い頃、母の指に光る金の指輪が欲しかった。
時々借りて自分の指に指輪をはめる。
ブカブカだけど、ドキドキとウットリを同時に感じた。
母の返事は承知で、いつも母にねだった。
「これ、欲しい」と。返事はいつも同じ。
「結婚する時、お婿さんに買ってもらいなさい。私のもそうなのよ」
私のお婿さんがくれたのはプラチナだった。
これにはちょっとした事件ともいえる出来事があったのだが、それを人様に言うのは憚られる。
とても悲しかった。いまだに何故だったのかわからない。
それでも今現在、私の左の薬指には金の指輪が光っている。
還暦を迎えた時、主人の姉たちと主人がお金を出し合ってくださり好きなものを買うようにと言って頂いた。本当に感謝しています。
私は迷わず金の指輪を購入した。
嬉しくて何度も何度も指輪を眺め、なでた。そして空にかざしてみたりした。
私のプラチナの指輪は、主人のものと一緒にリボンで結び、引き出しの奥で眠っている。(主人は鬱陶しいと言って、ひと月ほどしか指輪をはめなかった)
いつか母に出会ったら、母は笑顔で
「良かったね」と言ってくれるだろう。
そして、その場所は金色の雲の中にあればいいのだけれど。
そうであれば、私は母に会えるだろうか。
日頃の自分を思えば、少し(?)不安ではありますが。
シロクマ文芸部の今週のお題『金色に』から始まるショートエッセイを書いてみました。
小牧部長、よろしくお願いいたします。