見出し画像

納豆の話

〈古い記憶〉こんな事ありました



先日、凡筆堂さんが納豆のお話を書いておられました。
私にも納豆にまつわる話、ハッキリ言えば笑い話ですが思い出したので書いてみたいと思います。

私は北九州市で生まれ育ちました。
当時、納豆というものは知ってはいましたが、西日本では、あまり馴染みがありませんでした。近所のお店で売っていたという記憶はありません。気づかなかっただけかもですが。私の両親は広島の生まれで、やはり食べた事は無かったと聞いています。

「もの凄く臭いらしい」「腐った匂い」そんな情報しか無かったので、食べたいと思った事はありませんでしたし、見た事さえ無かったのです。

そうして私も大人になりました。当時は広島市に住んでいました。1970年代です。
その頃TVで納豆の健康食品としての実力をワイドショーなどで紹介されていました。
そんなにすごい食品だったのかと、興味が湧き始めたのです。
何でも試してみなければわからない。案外、口に合うやもしれぬ。一度は買ってみようと家族で話し合って、私が買ってくる事になりました。

そして次の日、なんだか冒険に行くようなワクワク感を胸に抱え、スーパーにご入店あそばしました。納豆の置かれている棚にそれは当然ありました。今のように3食パック、2食パックであったかどうかは記憶に無いのですが、いくつかのメーカーの物が私を手ぐすね引いて待ち構えていたのです。

どれを選んでいいのか判らず、値段を見て上から二番目の価格のモノを買いました。迷った時はそうしていたので。(高級品は除く)
ほかにも買うものがあり、サッサとするべき事をなして帰宅しました。

そして、晩ご飯。父も在宅しており、いよいよお披露目です。

妹がフタを開けました。

なんという事でしょう。当時は、納豆の匂いは、今よりきつかったです。家族は顔だけのけぞりました。
「早くフタをして!」
誰かが言いました、鼻をつまみながら。
「ちょっとぉ、腐ってない?腐っているよね?」
私の質問に誰も答えません。納豆の匂いを体験したのは全員が初めてだったので、返事のしようが無かったのです。

賞味期限が過ぎてもいないし、いや、お店の保存状態に問題あり?私達は全員、糸を引くのを目前にして、腐っていると思ったのだと思います。腐ったような臭いがすると聞いていましたが。でも、やはり腐っている!

私は購入した責任があると思い、
「明日、返品に行く」と宣言しました。
母は近所の事だし、高いものでも無いし、止めるように言いました。

それでも私はもう一度声をあげました。
お店の為にもならないから行くと。

そして私は翌日、鼻息も荒くお店に向かいました。
私が萎れた青菜となって帰宅したのは言うまでもありません。
当分そのスーパーに足が向かう事はありませんでした。
お店の方はきちんと説明してくださり、親切に返品にも応じて下さったのです。申し訳ないやら恥ずかしいやら。時に真実は残酷です。

後日談ですが、その後そのスーパーで母がパートで働いた事がありますが、納豆を腐っていると返品に来た女性の話を聞いたそうです。母も皆さんと一緒に笑ったとか。皆さんの笑いとは、少し意味合いが違ったと思いますが。

今では問題なく、美味しく頂いております。私は『引き割り』がお気に入りです。書いていたら食べたくなりました。

いつから食べられるようになったのかは、また別の話。

おしまい


凡筆堂さんへ
凡筆堂さんの納豆のお話が、この記事を書くきっかけとなりました。ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。めい


#納豆
#エッセイ
#古い思い出
#返品