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ハロウィン間近 シロクマ文芸部
爽やかな風が吹き抜けた気がした。彼とすれ違った時。そして彼が全身黒コーデであることに何かしらの違和感も同時に感じた。
振り向けば、彼の黒い尻尾が揺れているのではないかと思ったが、果たして作り物のそれはあった。
なんだ、そうか。ハロウィンが間近だ。そういう事だと納得する。
今の彼、どこかで見たような気がする。まさかね。
再び振り向いたけれど、彼の姿は既に無い。
私がまだ15の頃、初恋に目覚めていた。淡い恋心を秘めたままで終止符を打っただけだったけれど、それだからこその初恋。だからこその美しい思い出。
彼は今すれ違った彼に似ていなかったか。
年齢的に同一人物ではあり得ないけれど、そんな気がする。そうであって欲しいとも思う。
それにしても今夜はなんと気ままで怪しい夜だろう。
魔物たちのハロウィンの幕開けのセレモニーを予感させるような。
あ、来週のハロウィンの仮装パ―ティ、私は何に仮装しようかしら。
今年のハロウィンパーティーは、私にとって300回目のバースデイパーティーでもあるの。
人間に仮装するネタも尽きてきたから、昨年はマリー・アントワネットの愛犬のパピヨンに仮装したんだっけ。
ねえ、何かいいアイデアないかしらね。皆をアッと言わせたいの。
あゝ、それにしても今宵の月はなんと背徳的に美しいのだろう。いまにも黒装束の者たちが卑猥な悪魔のダンスを踊りだしそうだ。ワクワクするよ。
本番のハロウィン、あんたたちも楽しむが良いさ。
くれぐれも、我々の邪魔はしないでおくれよ。
了 624文字
今回も参加させて頂きました。よろしくお願いいたします。