心の色 色見本帖
CM中。
『あなたの心は今何色ですか』
可愛い女の子が僕に問うてきた。
「しいて言うなら、黒に近い灰色です」
僕は思わずそう応えた。
『白と黒、灰色は色ではないですよ。これは明るさですから』
「あ、前に学校で習った気がします」
『それでは、もう一度お尋ねします。あなたの心の色は今何色ですか』
「あなたとお話しているので、今はバラ色です」
『嬉しいです。私は今、最近好評を頂いております新製品の【スーパースパークル】のご案内をさせて頂いております。一度お試しになりませんか』
その時後ろを振り返るとじいちゃんが立っていた。じいちゃんの口は大きく開いている。
じいちゃんは今も昭和の時代に生きている。毎日トンチンカンなことを言ったりしたりするけれど、僕たちはじいちゃんが大好きだ。
「翔太、テレビと話していたが、お前大丈夫か」
「大丈夫だよ、じいちゃんも、彼女と話せるよ」
じいちゃんはテレビの前で正座をした。
『こんにちは。ただいま新製品の【スーパースパークル】のCM中です』
じいちゃんは大きく目を見開いた。
「翔太、テレビがじいちゃんに話しかけたぞ、どうなっとるんだ」
毎日のセレモニーだ。じいちゃんは、最近の事は忘れるので毎日が新鮮なんだ。昔の事はよく覚えているんだけれど。
『おじいさま、あなたの心は今何色ですか』
可愛い女の子はじいちゃんにも聞いた。
「嬢ちゃん、ワシの心の色はワシの色だよ。ジョウチャンはジョウチャンの色。翔太は翔太の色だよ。一人一人みんな違う。同じ色は無い。たった一つの色をみんな持っているんだよ。大切にしような」
なんか、じいちゃんカッコ良い!
カッコ良い色って、何色だろう。
了 681文字
三羽 烏さんの企画『色見本帖』に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
少し未来のCMはこんな風になるでしょう。か? めい