人生初のキャンプとカヤックで学んだこと
2022年6月11日(土)~6月12日(日)の二日間、自然環境リテラシー学の活動の一環として、津市のマリーナ河芸でシーカヤックとキャンプの実習に参加させていただきました。
はじめに 自然環境リテラシー学とは?
自然環境リテラシー学とは、自然の中での様々な活動を通して、自然環境を総合的に理解し、そこで得た知識・技能を正しくわかりやすく伝達・発信することが目的の専門科目です。この活動で重要とされる能力は、主に三つあります。まず、様々な危険が潜む自然の中で、自分の身を守るための危機管理能力は欠かせません。また、実習を通して学べることを多くの人に広めるために、自分が感じたことを人に伝える能力も必要です。そして、自然との関わりの中で、自然の不思議さや美しさを感じとるための感性、すなわちセンスオブワンダーがとても重要になります。センスオブワンダーは、自分が疑問に思ったことを主体的に学び、それを周りに伝える能力にもつながっています。おそらく誰もが子供の頃に感じていた「不思議だな」「何だろう」といったワクワクや感動は、大人になってからも大切にして損は無いということですね!
さて、ここからは、2日間で学んだことや感じたことを、日記形式で書いていこうと思います。
1日目
当日2日間は数日前から天気予報で天候が荒れると言われていたので、そもそも実施できるかが心配でしたが、幸い少雨だったので決行できました。しかしやはり風が強く、この後のテントの設置では苦労することになりました。
現地に着くと、他の参加者の人や先生、インストラクターの方などがどこにいるのか見つからず、慌てて同じく参加者の友達に電話を掛けたところ、すぐそばにある「海の学舎」から手を振ってくれていました。正直のところ、キャンプと聞いてもっと自然らしい場所を想像していたのですが、がっつりリゾート施設で意外でした。背の高いヤシの木が沢山生えており、まるで三重から急に外国に来たみたいでした。ヤシの木はこんな強風にあおられても幹が曲がらないどころか葉の一つも落ちないなんて強いなぁ、と思いました。温帯の風がよく吹く地域で生育できるように進化したのでしょうか。植物に詳しくなりたいです。
参加者の自己紹介やインストラクターの方による事前説明を終え、いよいよ活動開始。まずはテントの設置からです。
自分はテントを立てるのは生まれて初めてで、固定する方法さえも知りませんでした。先輩方に手伝っていただいてなんとか立てたテントは、いくら強風が吹いても飛ばされませんでした。動画サイトなどで、海辺でテントが次々と風に飛ばされる映像を目にしますが、あれは正しい方法で固定されていないんだなと思いました。一人用の小さなテントでしたが、中は想像以上に快適で、この日は日射が弱かったため暑くも寒くもありませんでした。
お昼のサンドイッチを食べ終えると、どうやら疲れていたようで、そんな快適なテントの中でひと眠りしてしまいました。目が覚めるとすぐにシーカヤックの講習が始まりました。カヤックのハッチ(荷物を入れるところ)の蓋をしっかりと閉じ、PFD(救命胴衣)や、カヤックのコックピット(乗る場所)に水が入らないようにするためのスプレースカートを身につけ、準備万端です。
港の波が弱い場所にカヤックを運び出し、練習を開始しました。慣れない姿勢でカヤックに乗り、足を置いて踏ん張るためのペダルを調節し、やはり少し不安を隠せずに自分が出発する番を待っていたときでした。「あっ」と先輩の方が叫ぶ声が海の方から聞こえたので、そちらの方を見てみると、先に出発した友達の一人の姿が見当たりません。カヤックが転覆してしまったのです。幸いすぐに救助され、命に別状はありませんでした。しかし、さっきまでそこにいた人が、少し目を離すと突然いなくなっている、ということが私にとって非常にショックでした。もし仮にこれで助かっていなかったとしたら、命というものは本当に何の前触れもなく忽然と消えてしまうものなのだな、と強く感じました。
それがとても怖くなってしまい、自分の番になるとパニックになってしまいました。するとインストラクターさんがとても優しく指導してくださり、なんとか落ち着いてカヤックを漕ぐ練習ができました。本当に先輩方やインストラクターさんには大変迷惑をかけたなと猛省しています。
一本のパドルで左右交互に水を掻きながら進み、止まるときには水を前方に押し出し、曲がるときには片方だけを漕ぐ…と、カヤックを漕ぐ原理自体は単純です。しかし実際にやってみると、地面を足で歩くのに慣れている人間にとって、腕でパドルを動かし水を思い通りに搔きわけるのにはコツが必要です。慣れてくると、自転車くらいのスピード感で凹凸のない水の上を滑っていく感覚の心地よさの方が不安に勝るようになりました。
海から上がり、諸々の使ったものを真水で洗って片づけたあとは、一人一人がその日の学んだことや反省を一分間でまとめるという一日の反省会を終え、夕食です。大自然の中とは程遠い商業施設の駐車場付近で、ガスバーナーでレトルトのご飯とカレーを温めるのは、何だか変な感じです。それでも、この日一日の疲れを癒すには十分な食事でした。辛いものが大好きなので普段あまり甘口のカレーは食べないため、特別な思い出の味になることでしょう。
自分で持ってきたマシュマロやパンを、他の参加者の人達にも分けました。自分は人と話すのは苦手な方なのですが、こういうイベントがある特別な日だと沢山話したくなってしまうので不思議です。マシュマロをどれだけ上手く焼けるか対決などもやったりして、楽しい時間を過ごせました。
夕食の後は、この日の天気、風向き、波の予報と実際の記録をしました。どこで聞いた話かは忘れましたが、三重県のような温暖湿潤気候の地域では天気の予測が比較的難しいそうです。確かにその通りで、予報とは風の向きも強さも大きく異なっていました。記録を付け終え、いつもより早く(22時前)には眠ってしまいました。
2日目
朝目が覚め、朝食を終え、前日の連絡で指定されたとおり8時半に集合したところ、「事前に決められていた集合時間より1時間ほど遅れている」と、先生が全員に向けておっしゃいました。えっ?昨日8時半って言われたのに?と思いよく考えてみると、実習前に配られた予定表では7時半となっていました。自分が予定をきちんと確認しなかったのが悪かったな、と気づきました。今後は気を付けていこうと心に留めました。
また、先生は「風や波の強さや天気はとても変わりやすいから、自然の中ではあまり遅くに行動を開始すると予定通りに行かなくなってしまうかもしれない」とも教えてくださいました。その日の天候ひとつでできる行動ががらりと変わってしまうこともある自然の中で、甘えは禁物だということを、身をもって学びました。
この日は青空が見えるほど天候が回復したものの、やはり風はとても強いままでした。なので、本来であれば浜辺までカヤックを移動して実習を行う予定でしたが、前日に引き続き風のあまり来ない港で実習を行いました。
この日のシーカヤックの実習は、グループレスキューについて。前日のようなことが起こっても落ち着いて対処するための練習です。
まず、カヤックが転覆したときすぐに動こうとすると、スプレースカートで体がカヤックに固定されているので動けません。ですが、スプレースカートは伸縮性の高いタッパーウェアの蓋のようなものなので、先端を持って前方にグッと押すようにすると、簡単にカヤックから取り外せるので安心です。ここで水から顔を出した際、自分のカヤックから手を離さず、助けを待つことが大切です。そうしないと、波風が強いときならカヤックがあっという間に遠くまで流されてしまいます。助け舟(文字通りの)が来たら、二人で協力してカヤックを元に戻し、ポンプやスポンジを使って、溜まった水を外に出します。例え自分が転覆したとしても決して他人には甘えない、そんな自然の中で活動することの厳しさを思い知りました。
もちろんこれは練習なので、まず参加者は自分からカヤックを横転させなければなりません。昨日のこともありまだ生死の不安が付きまとう自分でしたが、昨日転覆していた友達がいとも簡単にレスキューに成功していたので、自分も安心しました。なんとか自分で横転し、すぐにスプレースカートを外せました。問題はこの後で、離すなと言われていたにもかかわらず何度もカヤックから手を離してしまいました。滑り止め付きの軍手をしているとはいえ、水中だと下半身が浮いているため腕に力が入りにくく、すぐに手が滑り落ちてしまいます。水中でも自在に動ける人は、ある意味人間をやめているのでは、と思いました。
お昼ご飯はサッポロ一番塩ラーメンでした。あれは「塩ラーメン」と一言では形容しがたい、「サッポロ一番塩ラーメン」という唯一無二のおいしさがありますよね。お湯をちゃんと沸かす時間がなかったので固めの麺になりましたが、そうするといつもよりおいしかったので今後はこうやって食べようと決めました。
午後はほとんど片付けの時間になるかと思いきや、別の団体の方にヨット体験にご招待いただきました。ちょうど風が強かったので、かなり速く舟が進んでいきました。帆の角度が少しずれるだけでヨットが思い通りの方向に進んでいくので驚きでした。小学生並の感想ですが、ヨットを発明した大昔の人はまさしく天才ですね。
一通り片づけを終えると、早いものでもう16時。前日と同じくこの日の天候を記録し、一日の反省会です。このとき私は朝の集合時間のことでやはり落ち込んでしまい、友達の温かい励ましもむなしく、大勢の前で「私が悪かったです、ごめんなさい」と泣いてしまいました(本当に恥ずかしいし申し訳ない)。全員が話し終えると、先生は全員に向けて「○○(私)さんだけのせいじゃない、皆さんの責任です」とおっしゃいました。危険が伴う自然の中で行動するときこそ、連帯感を持つことが重要だと学ぶことができました。
まとめ
今回の実習では、自然の中で行動する際の心得や技術について学んできました。自分にとって最も大きかったのは、人との関わり合い、連帯責任の大切さを身をもって学べたことです。元々人と話すことや責任を負うことは苦手なので、今後の日常生活にも関わる成長につながったと思います(と言ってもこの記事も締め切りに遅れてしまっているので十分反省できていないようです…精進いたします。)。それから、天候や波など自然環境の変わりやすさも強く印象に残りました。私の出身地は田んぼの一つもない都会で、一日を通してほとんど姿かたちを変えない街並みに囲まれて暮らしてきたので、風向きや気温だけで大きく行動の予定が変わってしまうような海の環境で過ごすのは、とても新鮮な体験でした。このような貴重な体験をさせてくださった先生方、先輩方、インストラクターさん方、そして他の参加者の人達には本当に感謝しかありません。
長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。最近とても暑いので、くれぐれも熱中症などにはお気を付けください…!