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「教育は遺伝に勝てるか?」

「教育は遺伝に勝てるか?」安藤寿康

結局「生まれが9割」は否定できない。 でも、遺伝の仕組みを深く理解すれば、「悲観はバカバカしい」と気づくことができる。 遺伝が学力に強く影響することは、もはや周知の事実だが、誤解も多いからだ。 本書は遺伝学の最新知見を平易に紹介し、理想論でも奇麗事でもない「その人にとっての成功」(=自分で稼げる能力を見つけ伸ばす)はいかにして可能かを詳説。 「もって生まれたもの」を最大限活かすための、教育の可能性を探る。

最近、遺伝と教育の関係性に興味があって読んでみた。というのも、私は両親に全然似てないなと思うことが多い。性格も考え方も違うし趣味もあんまり合わない。そもそも遺伝子レベルで違うのか、育て方でこうなったのか。でも私は母方の祖母とはすごく似ていて、もしかして隔世遺伝というものかな?と思ったり。
この本を読んでこれらの疑問が少し解決できたように思う。難しい用語も出てくるけれど、構成や文体がとてもわかりやすく、面白かった。


要するにどこで誰に育てられようと、子どもは「おおむね同じように」育っていくのです。親の育て方なんて、実はたいしたものではないのです。(略)
実際、私自身、それなりに親の言動には翻弄され、ある部分恵まれたといえる部分と、傷つけられた部分があり、もしこの親じゃなければもっと違う人間になれたかもしれない、違う人生を送っていたかもしれないと、定年を迎えるこの歳になっても思います。それでもあえて、いや、だからこそ、親の育て方など、子どもの人生にとってたいした問題ではないと考えるべきだと思うのです。

p219

この本は、ざっくり一言でまとめてしまうと「遺伝は環境に反応して表れる」ということが書かれている。
例として、別々の養父母に育てられた一卵性双生児の話があげられている。2人は病的なまでの几帳面だった。なぜそんなに綺麗好きなのかと聞かれると、1人は「母が家中をきちんと整頓する人で、母のやった通りにしているだけ」と答え、もう1人は「母に対する反動だ。母はまったくだらしのない人だったから」と答えた。
同じ遺伝子をもつ一卵性双生児が、真逆の育て方でも同じように育つ。とても興味深いなと思った。どっちかというと私は後者のほうに近い気がする。反抗しているわけじゃないけど、反動はたしかにあるかもしれない。でも自分と似ている性格の親に育てられたとしたら、反動していただろうか。それはそれで親の真似をしたりしていたかもしれない。どう育てられても私は私になっていた気がする。こう考えると環境ってあんまり成長に関係ないかもしれないと思う。
じゃあ教育はなんなんだ、となりそうだけど、教育はその子の可能性を伸ばしてあげるために必要なんじゃないか。こう育てたからこう育つとは限らない。親や教師にできるのは、機会をたくさん用意してあげることなのではないか。何もしなくても、子どもは自分で選びとっていけるはずだから。

遺伝や教育について知れて、考えることができてよい機会だったと思う。この1冊だけじゃなくて他の本も読んで、理解を深めていきたい。

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