クリス先生への書簡 ー戦争とボブ・ディランの歌の真の意味


 クリス先生から、彼が不定期的に発行しているEpistle(書簡)をEメールで受け取った。全部英語である。クリス先生は、私はボブ・ディランの歌・歌詞の詩性、文学性についての勉強をしているなかで出会い、師事しているアメリカ人だ。

 彼は自分を「ペシミスト(悲観論者)」と呼ぶ。先生は文学・哲学の研究者・エバンジェリストである。

 彼は今の世界の混沌はアメリカに大きな責任があると主張する。歴史的にはイギリス、スペイン、ポルトガルや当時列強と呼ばれた国々に根本的なものを感じるが、人間が人間を支配することで人類は発展してきたことを考えると非常に複雑な問題である。

 私はメールを読んで、返答をすることにした。もちろん、アメリカ人の先生のために英語を使った。結果は、先生は内容は理解してくれたようだが、文法的、慣用句的に問題があると返事をくれた。だが、内容が内容だけに細かい点を添削しても無意味であるとのことだ。そして非英語話者のわたしがここまで書けたのは立派だとお褒め頂いた。

 私は、自称、物書きなのでこれを公けにしておきたい。
 そういうわけで、まず、英語の私の手紙を示す。次にそれを和訳したものを示す。英語で言葉が足りなかった想いを付け加えた。日本語のみ読んで頂ければ、かつ時間な無駄だったと思われなければ、冥利である。
 もし英文を読んでくれる人がいるなら、英語話者が見ると極めてカタコトであることを頭において欲しい。

1)英語でのクリス先生への返答

Chris sensei, I read this through (I suppose) and although I have no knowledge about the great men you mentioned, I am trying to respond.

I think I'm a pessimist,too, from my word definitions. I was an engineer,
a sort of scientist, and I imagine the future like this;

  • Due to CO2 increation, the ocean height is higher.

  • The higher the ocean height gets, the more people need to move to inner lands.

  • They need water, food and land to live, so there will be conflicts between them and the people who already settled in the land. It's an old story when America came up.

  • The population of mankind is increasing more and more. The majority has no skills and talents.

Thus I have no other idea than that the nations in future stop export of food and want more food from other nations unless they take all the measures to reduce the population on earth. War is coming or great disasters are happening like what you saw already in the world.

I don't care so much for my generation but do for my grandchild. I feel so sorry to her that I could only left such a fuckin' (excuse me) world of nowadays.
If the government would give me a full weapon jacket including a nuke of pocket size and if they'd carry to over Kremlin, I kill them all. But while thinking like this, Israel and Hamas war broke out and also Iran involved. I will need 3 or 4 bodies.

If my pessimism is different from yours, mine includes the anger and the will of 'Vendetta drive'. I know it is not quite worthy to compare with yours.

I found I had not understood some of songs Dylan made earler.
For example, 'Blowin' in the wind'.

I, until recently, thought that it was a good protest song to give us courage. He sang the foolishness and madness of mankind and he wishes we understand someday. Do you agree ?

But now I have a new idea that Dylan sang that man 'never' learn forever.
Because what do you think how many years can a mountain exist 'fore it is washed to the sea? It will not happen while mankind exists in a pessimistic interpretation.
Also he sang the answer is blowin' the wind, i.e. we never reach to the answer.

He says that the answer is to look in the mirror in Philosophy of Modern Song ...
Everyone needs to realize the warning and make an (one) action, but it never happen ...
I or you look in the mirror, what change we can make?
So the Nobel Prize has less meanings to him. It is not the time to be happy getting such prize ... he might say.
He continues to play in live shows ... maybe he think he needs to do that until everyone understands .

I'm not a kind of man of constant sorrow, but swinging between such dismay and pleasure to see my grandchild.

You will think that I am menace and crazy. Like 'the Pretender' of Jackson Browne, he is not a menace as Dylan wrote, but a hollow man.

Best Regards,


2)上の私の英文を自分で和訳したもの。英語で語りきれなかったことを補充している。

クリス先生。先生のこの世界を憂いた書簡を読みました。私は先生の言う「知の巨人」達(ショーペンハウアーなど)に関する知識は皆無と言ってよい者です。
 でも敢えて返信致します。

 私は、先生が自分はペシミストであると仰られることを受けて言いますが、私も、私自信の定義においてペシミストです。私は技術者でした。よって多少の科学者でもあると思います。科学者として私の予想する未来の構図は次のようになります。

 ‐ CO2ガスの上昇により海面が上昇します。

 ‐ 海面が上昇すればするほど、たくさんの海岸沿いに住む人々が内陸に移動せざるを得なくなります。

 ‐ そういう移動した人々は当然ですが、衣食住が必要です。よって彼らは移動した内陸に既に住んでいる人々と軋轢を起こすでしょう。アメリカが成立する時の歴史を見れば容易に想像できます。

 ‐ 人類の人口はますます増加しています。そして大半の人間はスキルや才能を持っているとは言い難いのが事実でしょう。

 こう考えると必然的に次のようなことが起こると思います。
 近い将来、人口増加に対して決定的な対応を取れない国々は食糧難を恐れて他国への食物の輸出を止めるのではないでしょうか。さらに他国から食物を輸入したがるでしょう。その結果、何が起こるか。戦争。環境破壊の罰である地球規模の災害も起こります。既にそれは始まっています。

 私は自分が生きてきた世代の運命はあまり気にしていません。でも、私の孫に関しては違います。私は自分の孫にこんな糞のような(汚い言葉をお許しください)世界を遺してしまったということを後悔しています。
 もしどこかの政府が私に小型の原子爆弾を含むフル武装のジャケットをくれて、クレムリンの上まで運んでくれれば私は躊躇なく彼らを殺すでしょう。しかしこんなことを考えていたら、イスラエルとガザの紛争、イランの関与などが起こりました。私の体は一つでは足りないようですね。

 私の「ペシミズム」が先生のものと違うところは、私のはこのような「復讐」の遂行の意思が含まれていることです。先生の真の怒りと比べると格が落ちるでしょう。

   +++++

 そうそう、ボブ・ディランが作った歌の本当の意味が今、分かったような気がするのです。「風に吹かれて」を例に取りましょうか。

 今まで、この歌はこのような世の中に立ち向かい、我々に力をくれる歌と考えていたのです。どうでしょうか?

 しかしこの頃、異なる意味を考えるようになりました。歌詞に「山が海に洗われて無くなってしまうのにどのくらいの年月がかかるのだろう?」というのがあります。悲観的な翻訳では、裏の意味に「それまで人間が存在するはずはない」となります。

 しかも「答えは風に吹かれている」。人間はその答えに到達することはないということと取れます。

 「ソングの哲学」で彼は、混沌とした世界の全ての責任者を見たいなら「鏡を見ろ」とも言ってます。つます「すべて」の人間が警告を認識してある(一つの)行動を起こさねばならない、ということでしょうか。

 私や先生が鏡を見てなにか変わるのでしょうか?

 そんなわけで彼がノーベル賞を受けたとき、彼にはあまり気にするようなことではなかったのかも知れません。そんなことで浮かれている暇はない・・・彼はそう思ったのかも知れません。

 でも私は常に悲しみに打ちひしがれているような人間でもありません。これまで述べたような「絶望」と孫の成長を見る「悦び」の間を行き来しているのです。

 先生は私のことを危険でおかしい人間と、この手紙を読んで思ったのではないでしょうか?
 ボブ・ディランは著書でジャクソン・ブラウンの「プリテンダー」を「危険な男」と解釈しました。私はプリテンダーが自分のことのように思えます。危険ではなく「虚ろな」人間なのです。

 御機嫌よう。


2024.10.27

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