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編集者はプロットで何を見るのか
漫画編集者の主な仕事の一つとして、プロットチェックがあります。
基本的にはプロットの内容で企画がまとめられ、
企画会議に提出することになります。
さて、編集者はプロットで何を見ているのでしょうか?
ポイントを3つに絞って紹介します。(かなり、絞った)
プロットの主なチェックポイント
編集者によって違うと思いますが、私のポイントは下記です。
①感情に変化があるか
②(恋愛漫画ジャンルで)恋愛漫画になっているか
③面白いのか
編集者側のチェックポイントではありますが、
これは書き手側も意識すると、わかりやすいプロットになると思います。
※ちなみに、プロットの前に簡単なネタ案、世界観やキャラ設定案をだしてもらうことが私の場合は多いです。これらも大変重要ですが、今回は「プロット」の話に絞っています。
①感情に変化があるか
例えば、このような話があるとします。
起:主人公が「好きな人に素直になれない」という悩みをもっている
承:つい好きな人に意地悪をしてしまい、ますます自己嫌悪に落ちる
転:好きな人が、別の人と楽しそうに話をしているのをみて嫉妬する
結:本当の気持ちを素直に伝えて両思いになる
これは、「起」の「素直になれない」から、
「結」で「素直になった」という変化が起こっていますよね。
この変化が起こっているか、を確認しています。
この物語は、主人公になにをもたらしたのか?
それを客観的にチェックしています。
いわゆる「日常系」は、変わらない良さがありますが、
基本的には主人公の精神的成長や、変化を物語では描きたいところです。
また、感情の変化が話の内容とあっているか、も同じくチェックします。
「起」から「結」のなかで、全然違う話になってないか?
そのことについてはこちらのnoteで触れています。
②恋愛漫画になっているか
私はしょっちゅうこう言ってます。
「もっとキュンとするシーンをいれましょうよ〜!」
ジャンルにもよりますが、私の場合はTL・少女漫画・BL漫画が多いので、
基本的には恋愛ジャンルの漫画を見ています。
なので「ラブが書けているか」を重視します。
気持ちが高まるシーンがあるか。
好き、という気持ちが伝わるシーンがあるか。
恋に落ちるシーンはあるか。
ただのバディものの物語になっていないか?など。
そのジャンルに必要なシーンが描けているかは、
プロットの段階でチェックしておきましょう。
③面白いかどうか
それをいっちゃあおしまい、なのですが。
いくら①②が完璧でも、「なんか面白くないな」ということはあります。
その場合は、再度打ち合わせして、面白くするために相談します。
ただし、面白いかどうかについてはプロットの前の段階、
キャラ設定やネタ案(プロットの前の草案など)のとき。
あるいは打ち合わせ時の会話でわかってくるので
プロットの段階で「面白くなかったわ…」となることは意外となく、
どちらかというと「面白いはずなのにそれが伝わってこないから修正しよう」という相談の仕方が多いです。
プロットはGoogleMapの示す道順
そもそも、何故プロットは必要なのでしょうか?
私は「話の辻褄があっているかを客観的に確認するため」だと思っています。
漫画は基本的には「プロット」→「ネーム」の順で書きますね。
プロットの書き方は漫画家さんによって様々です。
概要だけの方、小説のように具体的に書く方、脚本のようにト書き式で書く方、「行動」「感情」を分けて書く方など。
全員なにかしらの形でプロットをかいています。
いきなりネームの方は今まで一人もいません。
いえ、プロの方でもいきなりネームの方が存在するのは知っていますが、
私の担当した漫画家さんのなかでは一人もいないくらいレアケースです。
また、プロの方がプロットを書くのは、担当編集に方向性を確認してもらうため、というのも大きいです。
どういうお話が書きたいかをまずはテキストでまとめてもらい、その内容で編集側は企画会議にかけたりします。
どちらにせよ、「客観的に確認してもらう」というためには、ネームではなくてプロットのほうが良いのです。
でも、アマチュアの方にはネームからいきなり書く人、結構、います。
分かるんです、頭のなかに内容があるから、いきなりネームのほうが早そうだと思うことは。
でも、待ってください。
なにを書きたいか、頭のなかで整理したうえで書けてますか?
書きながら途中でなにが言いたいのかわからなくなっていませんか?
途中で話が逸れたとき、ちゃんと本軸に戻せそうですか?
そもそも、話が逸れてるってわかってますか?
私は方向音痴なので、GoogleMapがないともはや生きていけません。
GoogleMapでは「今の自分の位置」と、「目的の場所」を繋いでくれますよね。
その道順を先に示しておくのが「プロット」です。
でも、実際に歩いてみると、工事している場所があったり、ちょっと寄り道したくなったり、遠回りでも気持ちの良さそうな場所があったりして、道が逸れたりしますよね。
そうするとGoogleMapは、新たにそこからの道を示してくれます。
でも、目的地は変わらない。
「実際の歩きかた」はネームです。
目的地が変わらなければ、多少道順が変わっても大丈夫です。
いえ、むしろ新しい道に新たな発見があるように、プロットに囚われすぎずに道順を変えることはむしろどんどんやっていい。
でも、目的地は変えないでください。
プロットがない状態だと、この「目的地」がわからないまま、
ただなんとなく書きたいシーンのまわりをウロウロし続けたりします。
プロの方でもいきなりネームは難しいのです。
初心者の方なら、なおさらプロットを書くべきだと思っています。
プロットは必要だが、正解はない
上記にも書いた通り、プロでもプロットの書き方は十人十色です。
ですので、あまり「こうしなければならない」とは思わず、
まずは簡単に、「起と結」を一言ずつだけでも書いてみてください。
こちらについては、このnoteに詳しく書いています。https://note.com/0501watashi/n/n8965c0a783af
目的地があるだけで、ネームのときに話が逸れたとしても、
戻ってこれて、結果、漫画の内容は伝わりやすくなります。
スマホのメモでも、手書きのメモでも、なんでもいいので
ぜひ書き出してみてくださいね。
では、今回はこのあたりで。