我が初恋よ、永遠に

私の初恋は比較的遅めの、高校二年生の時。相手は名前を西野さんといい、身長は150ちょっとくらいで細身の子でした。黒髪ロングで大変大人しい人。そんなどこにでもいるような普通の女子高生。

ただ、抜群に可愛かったんです

部活にも入っておらず、文化祭などの行事ごとに積極的に参加するわけでもない。コミュ力もなければ、成績もなかなかひどめ。本当に顔以外に取り柄を見つけるのが難しい人でしたが、そこは高校生。顔さえ可愛ければ正義なんです。西野さんは学年で1,2を争うモテっぷりでした。

そんな西野さんに私が惚れたのは、学校外での出来事がきっかけでした。春休みのある日、なんの予定もなかった私はふと思い立ち、自転車で遠出することにしました。ちらほら桜が咲き始めており、鳥のさえずる声に季節を感じ、大変心地よく自転車をこいでいたんですが思ったより遠くまで来ていたらしく疲れを感じた私は、ジュースを買おうとコンビニに入りました。ドリンクコーナーで、「何にしようかな~、アクエリアスかな~」と悩んでいたら、横からふいに名前を呼ばれました。

「山田くん?」

声のした方へ顔を向けると、大変な美少女が立っておりました。そう、それが西野さんだったのです。制服姿しか見たことがなかったものですから、彼女の私服姿は大変新鮮なものでした。加えてそのキャラクターとは似つかわしくない、少々露出度高めな格好だったことも私の胸を強く打ちました。

(あれ西野さんだこんなとこでなにしてるんだろうかわいいなちょっとブラ見えそうだななにしてるんだろう俺に会いに追ってきたのかいやまさかにしても可愛いなブラ見えろ)

もうパニック状態でした。すでに惚れそうでした。ただそこは童貞高校生、全力で平静を装いつつ、

「あ、あ、あ、あれ西野、なにしてるん」

と返事をしました。それからたどたどしくも会話をしていると、どうも暇でサイクリングに出たものの、疲れて休憩に立ち寄ったとのこと。なんたる奇跡。全てが一緒。ここで行動に出ないほど私はコミュ障にでないほど私はコミュ障ではない。(いけ!山田!)と己を奮い立たせ、こう聞きました。

「俺も暇だし、一緒にチャリ漕ごうよ」

西野さんは一言、「行こー」と返事をしました。これだけで天へと向かいそうになる私の気持ちと陰茎を必死に食い止め、西野さんとサイクリングをしました。学校のこと、友人のこと、勉強のこと、そして、恋愛のこと。いろんな話をしながら自転車を漕ぎました。道中道が細くなり西野さんが前に出た時、ふと私のほうへ彼女の髪の毛の香りが届きました。もうね、たまらなかったですよ。計1時間くらいともに自転車を漕いでいましたが、終わりの時を迎えることになりました。最後に私は勇気を振り絞り、彼女にメールアドレスを聞きました。

「携帯貸して」

私が手渡すと、彼女はアドレスを入力してくれました。私は黙って作業が終わるのを待っていました。打ち終えると彼女は言いました。

「ありがと、またね」

彼女らしく無駄がなくそっけない挨拶でしたが、「またね」という言葉は大いに私を喜ばせました。


それからはメールでのやり取りや学校での会話、二人でお出かけと無事ステップアップしていき、私からの告白を持って無事お付き合いすることになりました。

カップルとなった私たちは特に大きな喧嘩もなく、お互いの誕生日を祝ったり、夏には海に行ったり、クリスマスには僕の家でお泊りしたりと大変仲良く過ごしておりました。

そんな私たちに転機が訪れました。1年ほど経ったころからでしょうか。彼女が特に何でもない日にプレゼントをくれるようになりました。マフラーやカーディガンなど、ブランド物には疎い私の目にも高価とわかるような品物をたくさんもらいました。彼女の纏うものもグレードアップされていっていました。ある日、理由を聞いたのですが「ん、別にー」と濁されただけでした。そんな日が二月ほど続き、私はとうとう耐えかねて少し強めに彼女を問い詰めました。家族が宝くじに当選でもしたのかなと呑気に構えていた私に、彼女は衝撃的な一言を浴びせました。

「万引きしてるのー。」

いやー、驚きました。予想だにしていませんでした。大人しい子ですし、成績は悪くても真面目な人だと思っていたからです。最初は近所の個人商店で文房具を万引きしたらしいのですが、段々エスカレートしていき最近ではブランドものとかも盗っているとのこと。普段怒ることのない私もこれにはキレました。「ふざけるな、ただの犯罪者だぞお前」。相当きつく叱ったため、彼女は泣いていました。しかし、どんだけ反省されてももう熱が戻る事はないと感じた私は貰ったもの全てを返し、別れを告げました。彼女はまた泣きましたが、私の心にその涙が訴えかけてくるものはありませんでした。

私の初恋はこのように終わりました。「初恋相手は万引き犯」。なかなかキャッチ―なキーワードですが、私からするとそんなに楽しく話せる過去ではありませんのでこの辺で終わりとします。

皆さん、万引きは駄目ですよ!




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