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歪んだ百合が好きなキミ、灼熱の卓球娘を読まないか・・・?


 この記事を読んでくれている貴方に質問します。


 歪んだ女の子は好きですか?


 自分は歪んだ女の子が大好きです、はい。百合漫画読んでて、やべー女の子が出てくるとガッツポーズします。


 (百合漫画において) 歪んだ女の子とはなにか。ひとくちに言っても色んなパターンがあるでしょう。


 愛情が行き過ぎた結果、相手に執着しすぎちゃう女の子。


 力関係を利用して、我が儘を押し通そうとする女の子。


 相手の善意や信頼を利用してしまう女の子。


 挙げればキリがないのでしょうけれど。特定の相手に対する過度な愛や興味のせいで心を歪ませていく女の子、およびそんな女の子たちが繰り広げる百合が大好物です。みんな歪んでて、みんないい。


 歪んだ行為でしか愛情を示せない。そんな女の子たちを描いた百合作品は(多分)たくさん存在します。そんな中で、敢えて百合の百合の代表例を挙げるとするならば、この作品を強く推します。



 きたない君がいちばんかわいい。


 愛吏とひなこによって織りなされる、屈折した愛情の物語。虐める側の愛吏のエゴイズムと、きたない愛吏に献身的に身を捧げるひなこ。誰にもバレなかったはずの秘め事が、ふとしたことがきっかけでクラスメイトの知るところになる。カースト上位の仮面で取り繕っていた愛吏の化けの皮が剥がれて、「ひなのせいで……」と逆ギレする愛吏を、ひなこがそのどす黒い愛情で呑み込んでいく……。


 いよいよ最終章を迎えた二人の秘め物語りは、どのような結末を迎えるのか。いびつな愛に溺れていくあいひなの行く末を、あなたも見守ってみませんか?


 ……と、「きたかわ」の推薦記事でもないのに熱く語ってしまいました。興奮するとすぐ関係の無い話を持ち出して脱線してしまいます。


 では、気を取り直して。


 「灼熱の卓球娘」というアニメ(漫画)をご存じでしょうか?


https://www.amazon.co.jp/dp/B00UV6SJII/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1


 ああ、あれね。女の子たちが卓球するやつね。わりと百合百合してたよね。


 はい、そうです。上昇志向が強く部のエースを自称する柊かがみ似の女の子、上矢あがり。普段はドジっ子で憶病だけど、卓球になると別人のようになる女の子、旋風こより。少女たちがラケットを握り、目にも留まらぬ熱い勝負を繰り広げていく、ハイテンションラバーもビックリなハイテンション系スポーツ作品です。手汗握る試合展開はさることながら、主人公を初めとしてどのキャラクターも魅力的なんですよ……!


 今回はそんなカッコかわいいキャラクターの中のひとり。カットマンとドライブマンの両刀、守備と攻撃を兼ね備えたプレイヤーである月ノ輪紅真深について紹介しようと思います。


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 写真はアニメ「灼熱の卓球娘」11話、合宿に向かう雀が原のみんなに挨拶をする紅真深。


 この月ノ輪紅真深(CV 上田麗奈) という女の子、なかなかに歪んでいます。ドロドロと煮詰まった愛情を抱いています。自分好みの歪み具合です。普段の紅真深はおしとやかな少女なんですけれど、内に秘められた凶暴な本性が現れ始めたところからドキドキが止まらなくなりました。


 先に申し上げておきますと、「灼熱の卓球娘」は冒頭のタイトルが似つかわしくないぐらいマジで熱い卓球物語です。紅真深も卓球に対してめちゃくちゃ真摯に向き合っています。この記事書いてる間に、百合漫画として卓球娘をすすめてもいいのか何度も迷いましたし。


 しかし筆者は哀れなことに、百合に脳みそを溶かされていて、百合という視点からしか語れないので、今回はこの灼熱の卓球娘を、百合作品として語らせていただく所存です。まあ作中の試合解説は他の方がブログで書いてくださっているだろうし。しばしの間、百合脳の私の独り言にお付き合いいただけたら嬉しいです。


 全7巻発売されている灼熱の卓球娘。そのうちの5,6巻をメインに、「私的この女が歪んでいる2021」にランクインしました月ノ輪紅真深という女の子について、物語に沿って語っていこうと思います。


 では、ラブオール!


愛する人が、紅真深の心を歪ませた。


 月ノ輪紅真深 (CV 上田麗奈) 。彼女のどこらへんが歪んでいるのかひとことで言いますと、「上矢あがりに対して、異常なまでの愛情を抱いている」ところです。紅真深のあがりに抱く重い愛が、奥底にあったどす黒い感情を呼び起こすことになり、彼女の歯車を狂わせていくことになります。


 あがりが紅真深にとってのすべてになったきっかけは、卓球の試合であがりに初めての敗北を教えられたことでした。


 (原作の描写を見るに) 育ちのいい紅真深は、"娘に習い事をさせるのが趣味の"母親によってほぼ毎日習い事を入れられていました。しかもこの母親、笑顔で娘に習い事を押し付けてくるから、なかなかタチが悪い。紅真深が心を歪ませたのは、毒親の言うことを聞き、自分を抑圧していたというところも大きいと思います。


 紅真深も紅真深で要領がよかったので、少し練習をこなせば大抵のことは出来るようになっていきました。大して努力しなくても、あっという間に上達してしまう。自分で決めた習い事でもなかったので、周りからチヤホヤされても彼女の心は冷めきったままでした。


 そんな感じで紅真深は母親から卓球教室をすすめられ、そこでもメキメキと実力を伸ばしていったところで、紅真深は初めての卓球大会で大敗北を喫する。紅真深が打ち負かされた相手こそが、上矢あがりだったのです。


 ボコボコにされ、初めて悔しいという感情を覚えた紅真深は、あがりを脳裏に焼き付けて日々の練習に励むようになりました。あがりを思いすぎるあまりに「あーちゃん」と勝手に呼んではキャッキャ照れてたり、日々の日記は「あーちゃん」だけで埋め尽くすようになったり。あがりとの再戦を胸に、紅真深は他のお稽古もやめて卓球にのめり込むようになりました。


 そして中学 (雀が原中学) に進学。そこで運命の人 (あがり) と再会。「紅真深はずっと、あなたの事を想っていました」。紅真深があがりとの再戦を前に心の中で語っていた言葉です。


 そして、部内戦であがりと再び対峙する紅真深。しかし、おびただしい練習を重ね、センスもよかった紅真深は、あがりに圧勝してしまいました。


 大敗北を受け入れられず、部室を去って行くあがり。元々卓球が好きだったわけでなく、ただあーちゃんに勝つために卓球を続けてきた紅真深。あっけない幕切れに彼女の心が急速に冷めきっていくなか、紅真深は部室の外で泣きじゃくるあがりを見つけました。


 大好きだった人が、涙で顔をくしゃくしゃにする姿。紅真深は心拍数が上昇し、熱いものがこみ上げてくるの感じながら呟きました。


「ドキドキが、止まらない――」


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 写真は灼熱の卓球娘 (集英社) 5巻41p、あがりの泣き顔を見て悦に浸る紅真深です。電子書籍がなかったので本のページを写真で撮りました。


 あくまでも王道を駆け抜けるスポーツ漫画。そのウラの顔が表れた瞬間でした。


 自信ありげな顔をしていたあがりが、負けてしまえば体育座りで身を縮こまらせて子どものように泣いている。憧れだった頃とは程遠いあがりの姿を見た紅真深は己の中に第二の人格 (裏の紅真深と呼ばれるようになる) を宿すようになり、好きな人をぐちゃぐちゃにしたいという破壊衝動に蝕まれていきます。


歪みの加速。良心の呵責。


 その後も紅真深はあがりに連戦連勝。あがりは紅真深に負けると飛び出し、みんなに隠れて泣いている。そして紅真深は、あがりの泣き顔を見るためにわざわざ後をついていき、惨めな姿を見物する。そして、一人すすり泣くあがりの声を聞いて、悦に浸っていました。


 あーちゃんの「最高の顔」を見るために。紅真深の卓球に対する屈折した信念は、彼女の心に巣くう歪みを加速させ、歪んだ心の片鱗を見せ始めていくのです。


 その後も、何度も何度も、圧倒的な実力差であがりを倒す紅真深。


 だけどあがりは負けず嫌いなので、紅真深に挑むのを諦めません。


 泣いて、笑って、怒って。感情を押し殺して母親の言いなりになってきた自分と違い、コロコロと表情を変えて卓球にもまっすぐ取り組むあがりと交流していくうちに、紅真深は惹かれていくようになりました。


 そして、自分勝手な母親とは違い、本当の自分を見てくれるあがりを (打ちまかして) 泣かせようとしていることに葛藤していくことになります。


 普通に闘えば勝ってしまうから。紅真深は自分の実力をセーブして戦うようになっていきました。そして、ついに紅真深に初めて勝ち星を挙げたあがりは、紅真深に手加減されていたことを知らず満面の笑みで喜んでいました。


 これでよかったんだ——


 しかし、本気を出せない紅真深はフラストレーションを貯めていくことになりました。


 ここから、昼ドラのごとくドロドロとした展開に突き進んでいきます。


狐姫との出会い・離反


 あがりとの試合に満足できなくなった紅真深は、内緒で隣町の卓球教室に足を運ぶようになりました。


 鬱憤を晴らすように。卓球教室の猛者たちを蹴散らしていく紅真深の前に、金髪の美少女——狐姫が現れました。その実力は、紅真深と互角、あるいはそれ以上。


 ようやく出会えた全てをぶつけられるプレイヤー。紅真深は部活をサボり、狐姫との練習にのめり込んでいくようになりました。


 あーちゃんといる時はドキドキするのに、あーちゃんとの卓球はドキドキしない。


 狐姫さんといるときはドキドキしないけど、卓球してるときはドキドキする。


 相対する二つの思いを心に宿し始めた紅真深に、狐姫は「私の率いる卓球部(燕女学院)に来ないか」とスカウトしました。


 どちらの選択を取ろうか悩む紅真深に、あがりが久しぶりに勝負を持ちかけてきました。


 狐姫とのハイレベルな卓球を味わってしまった紅真深は、あがりとの試合に満足できなくなっていました。


 あがりとの卓球に胸高鳴る瞬間。それは、あがりが泣き顔を見せてくれたとき。でも、あがりが顔を歪ませる姿は見たくない。


 感情の板挟みになる紅真深に、裏の紅真深が語りかけてきました。


「愛おしいからこそ、ぶっ壊す」


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写真は、灼熱の卓球娘 (集英社) 5巻104p、あがりに本性を見せた紅真深。


 今まで溜め込んでいたドス黒い思いを鋭いドライブに乗せて渾身の一撃を放ち。紅真深はあがりを置いて雀が原を去っていきました。


 そして雨の中、いつもの卓球教室でうずくまる紅真深を拾った狐姫は彼女をそっと抱くと、黒い笑みを浮かべました。


 ……三角関係だ。作中だとそこまで目立ってないんですけど、狐姫もなかなか悪い女です (個人的感想) 。作中でも彼女は「自分のお気に入りが側にいないと気がすまない」と公言するぐらい、強烈な独占欲の持ち主です。


 そして地区予選。戦いの中で本性を露わにした紅真深と成長したあがりは、再び台を挟んで戦うことになる——


試合シーンがゾッとするぐらい迫力満点


 6巻では裏の紅真深が容赦なくあがりの心をへし折りにかかります。


 それまでも試合シーンの作画はダイナミックでしたが、その中でも6巻は劇画タッチもふんだんに使われていて、紅真深の鬼気迫る雰囲気がビリビリと伝わってきます。


 そして、紅真深の表情や言動、あがりへの執念もこれまで以上にヒートアップしていきます。


 紅真深がリミッターを解除した第三セット。ラブゲーム(11-0で勝つこと)を宣言して「あーちゃんのはじめての人になれるんだね」と恍惚のヤンデレポーズをしたり、ラブゲーム目前であがりの泣き顔を想像してエ◯漫画の絶◯シーンみたいに吠えたり。大好きな人を殺しにかかる様は、獣の捕食行動のようで、紅真深のチームメイトも若干引き気味でした。


 大きな愛情が巣食うと、その重さが心にひずみをもたらし始める。


 笑顔を優先する想いと、ぶち壊したくなる衝動に翻弄され続けた紅真深はどこか哀れで、でも歪んでいるなあと感じずにはいられません。


歪んだ百合が好きなら、灼熱の卓球娘を読もう!


  「Fujiさんって紅真深のssを書いてるとき、めちゃくちゃ楽しそうですよね」と以前言われたことがあったような無かったような。


 いや紅真深書くのめちゃくちゃ楽しいんですよ! この子の心情を解析してるだけでドキドキが止まらないし、あがりと狐姫どっち合わせてもうまく噛み合うし……。ドス黒感情マシマシにしてもキャラが崩壊しないのは、それだけ紅真深の落としている影が濃いからなんですよね……。


 今回は彼女の負の側面だけを取り出して紹介したんですけれど、試合を通じて紅真深が自分の心と向き合って自分像を再構築していく過程も素晴らしいんです! てか紅真深vsあがりだけじゃなくて、どの試合も胸熱な展開が多くて、スポ根好きなら絶対楽しめます! 歪んだ百合が好きな人も楽しめます! どっちも好きな自分は、2倍楽しめました!


 アニメも原作とは異なる展開が素晴らしいんですけど、2巻までしかやってくれないので漫画を読むことを個人的にはオススメします。紅真深もほとんど出てこないしね (でもうえしゃまのヤンデレボイスが聞けるのでやっぱりありか……?)。


 最後はキャラ語りなのか作品語りなのか分からなくなってきたんですけれど、「灼熱の卓球娘」、漫画も全7巻と比較的揃えやすいのでぜひ買って読んでみてください! 歪んだ百合が好きなら、私と同じように紅真深というキャラクターに惹かれるはずです……。



 おやおや……? こんなところに卓球娘が二巻まで無料で読めるキャンペーンが……。8/6までみたいなので読んでみたい方はぜひ! 7話で紅真深も出てきます!








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