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長編小説を書けるようになりたい!
物語を描くことは変化を描くことである――
上の言葉は、この記事を書こうと思ったきっかけとなった言葉です。
どの方の言葉だったか、どこで出会った言葉だったのかすらも忘れてしまったのですが、物語を描くことはどういうことかという問いに対する端的な回答だと思います。
私は長編小説の執筆・連載に対して苦手意識を抱いています。物語における主人公(カップリング)の変化を描くことや、変化までの経緯を考えることを億劫に感じてしまうからです。
同人誌は個人誌で20冊、合同誌に寄稿させていただいたものを含めると30冊は超えますが、いずれも1話あたりが最大でも20,000字程度の短編(中編)小説です。長編小説の連載や同人誌作成の経験がある友人・フォロワーさんの描かれる物語のボリュームには遠く及びません。
自分の書きたいものが短編小説であれば無理に書く必要はありません。今まで長編小説には憧れはあったものの、書きたいという強いモチベーションもなかったので、ちまちま短編小説(時々中編小説)を書いて満足していました。
しかし,先日参加した即売会で短編集を詰め込んだ226pの推しカプ同人誌を出したところ、手に取ってくださった方から「分厚いですね」「熱量がすごい」というコメントを頂戴しました(以下、イベントに参加した時のこと)。
上記の同人誌はpixivに書きためていた10,000~20,000字程度の小説を再録したものでしたが、本が分厚いとそれだけでインパクトがあるなぁと改めて思いました。製本されたものが届いた時は、ふっくらとした食パンのような背表紙の厚みと、手にずっしりとくる重量感に驚きましたし。
この体験によって、私の長編小説執筆に対するモチベーションが高まり、少しずつ長編小説を書くための準備をしていきたいと思った次第です。
本記事ではまず、現状の自分の物語の書き方と、自己分析・他己分析で得た強みを言語化します。就活みたいであまり気乗りはしませんが、現状ベースで方針を固めることは大事だと思うので。
その後で私の長編小説を書くにあたり課題になりそうなことをまとめていく構成です。
今までの物語の書き方
私が二次創作を書くときの出発点になるのは、キャラまたは推しカプの脳内イラストであることが多いです。これは、自分が漫画やイラストなどの視覚的イメージによるインプットを行うことが多いからだと思います。
そして、頭の中に突如舞い降りたインスピレーションを手がかりに、脳内画像に辿り着くまでのストーリーや、それが起こった後のストーリーを考えるというのが私流のストーリーの書き方です。いわゆる、序破急に近いストーリー構成をとっています。
私の物語は、性癖や妄想、理想のシチュエーションによって生み出されたイベントスチルをどのように引き立てるか、というところが出発点になります。
ソシャゲをやられている方はわかるかもしれませんが、イラスト付きのサポカなどに付属しているストーリーテキストを拡張させて物語っぽく仕立てるイメージといえば伝わるでしょうか。
このストーリーメイキングの仕方の是非はさておいて、メインとなるシーンをあらかじめ据えておくことで、物語にもメリハリがつくと考えられます。具体的には物語が最高潮を迎えるシーン、つまり起承転結における転の後半から結の部分の主張が強くなり、読者がカタルシスを感じやすくなるんじゃないかと私は考えています。
長編小説においてもクライマックスをどうドラマティックに書くかは重要だなので、これからも生かせそうなやり方です。
自分の武器
その1:瞬発力・執筆速度
これはよくフォロワーさんに言われることですね。自分で言うのもなんですが、筆は速い方かもしれません。
過去に私はある二次創作のワンライ(設けられたお題で1時間以内に作品を投稿する企画)に参加していたこともあり、物語の軸が完成してから執筆・初稿の完成までは比較的速いです。先述のワンシーンを軸としたストーリーメイキングをするようになったのも、ワンライの影響が大きいかもしれません。
また最近は執筆の習慣化を試みています。具体的には、1日何も書かない日を減らす・歯磨きや食事と同レベルの水準にまで日常生活に浸透させるといったことです。これに関しては参考にさせていただいた記事があるので、布教もかねて共有します。
このように私はどちらかというと、創作においては短距離向きといえるかもしれません。持久力・忍耐を重視する長編小説には生かしにくいかもしれませんが、これまで高めてきた執筆速度は特に同人誌として出す場合など〆切がある場合に有効にはたらくと考えられます。
その2:感情表現
これは他の人から言われて気がついたのですが、私の小説は繊細な感情描写が多く、文章も耽美な印象だそうです。
小説を書くとき、特に筆が進んでいるときだとキャラに憑依しながら書いているので、感情表現で訴えかけるものがあるのかもしれません。また、私が小説を読んでいて感動するのも、文章の中に散りばめられた繊細で、けれど迫力のある感情描写であることが多いです。
昔からわりと細かいことや些細なことに目が向きやすかったこともあり、小説に関してもこれまではミクロな視点で書いたり読んだりすることが多かったように思います。感情描写は読者の共感・没入を促す、物語の中でも重要な要素なので、長編小説の構成と組み合わせることで自分の長所がより輝くかもしれません。
これから必要なもの
その1:持久力
かの有名な小説家である村上春樹が言っていました。小説は肉体的な作業であると。
専業作家になると決めたと同時にフィジカルの方も鍛え始めたという彼のエッセイを読んでいるとたびたび、長編小説の執筆が体力を要する作業だと言うことが指摘されています。
一応持久力に関しては、1カ月に100,000字を目標にこれまで執筆をしてきました。私は毎日執筆量を記録しているのですが、今年は半分以上の月で合計100000文字を書いています(Fuji名義以外で書いているものが大半ですが)。
しかし、それは短編小説をハイペースで仕上げるための体力が鍛えられているだけであり、一本の作品を根気よく書き続けられる体力とは性質が異なるものかもしれません。実際、同人誌など一つの作品に着手しなければいけない期間が長く続くと大変ストレスを感じてしまいます。
したがって、長編小説に特化した体力(忍耐力)も鍛える必要がありそうです。とはいっても、現状具体策は思いついておらず、まずは後述の物語の組み立て方から少しずつ変えていこうと考えています。
あとはそうですね、運動も始めるべきでしょうか。デスクワークが多いので、ウォーキングから始めてみましょうかね。
その2:物語の組み立て方
先ほどの体力云々の話よりも、こちらの方が重要かもしれません。
私は、ミクロな視点で物語を書いたり読んだりする傾向があります。その一方で、マクロな視点で物語に関わる、具体的には物語の全体像や構成を俯瞰することが非常に苦手です。
少し話が逸れますが、私は人に物語のあらすじを説明するのがとても苦手です。好きだった表現の方ばかり先に出てきてしまい、話の流れを説明しようとしても言葉が詰まってしまいます。
同人誌の通販ページや裏表紙に載せるあらすじを書くのにもいつも頭を悩ませています。書いているのは自分なのに、結局どんな話だったっけと頭の中で整理をし始めてしまう始末。
こうした体験から長編小説の執筆を阻む大きな障害が、物語の構造・変化への意識の低さということが最近になって分かりました。
振り返ると自分の作品で出来が良かったのは、〇〇が△△して、(その結果)〜〜になる(〜〜をする)お話というフレームワークがしっかりと固まっている作品だったと思います。
拙作で恐縮ですが、作品の例として「私に天使が舞い降りた!(以下、わたてん)」の二次創作である「依りどころのない未来」を取り上げます。
この作品を書いたのは3年前以上ですが、どんな話しかわたてんを知らない人に尋ねられたら、「進路に迷う夏音ちゃんという女の子が、恋心を抱いている幼馴染の小依ちゃんという女の子に助けを求めようとするも、私に頼ってないで独り立ちしなさいと否定されてしまうお話」というように説明するでしょう。小依ちゃんが夏音ちゃんを否定するまでには、それまで彼女たちが築き上げてきた人間関係などが関わってくるのですが、一応端的に説明することは可能です。
冒頭で物語を描くことは変化を描くことという言葉を出しました。これは、長編小説を書くことにおいてとても重要だと考えています。
例えばポケモンのアニメでは、マサラタウンのサトシが相棒のピカチュウと旅に出て、紆余曲折を経ながら最終的に夢であったポケモンマスターになるという変化(成長)が描かれています(サトシが永遠の10歳だということについてはここではふれません)。
まだうまく言語化できておらずとっ散らかってしまいましたが、要は今までのワンシーンを軸にする書き方を修正し、時系列で変化していくようなプロット作成をしていくことが、長編小説を書くのにいちばん重要なステップではないかということです。
ただしばらくは、先ほど説明したような、〇〇が△△して、〜〜になる話というテンプレートに当てはめつつ、今までの短編の書き方に変化をつけるというやり方で少しずつ慣れていきたいと思います。
以上、長編小説を書いてみたいなぁと思うしがない同人作家の戯言でした。言語化してしまったことで逆に重要な情報を削ぎ落としてしまったのではないかと不安ですが、来年はこうなりたいなというある種の抱負といたしましょうか。今構想中の物語も、物語の構造を意識したようなお話作りをしてみたいなと思います。ではまた――