現代詩の世界2023/6/22 『 カトレア 』
カトレア、またシンガポールの落日
区別された体操選手、混濁された意識の落日
消化器官のアルコール漬け、ヒンズーの祝祭日
頂点からさまざまに気高く、そりかえる招魂碑
たくましく、そして若気の至りとして
ソーシャルにひんむかれたともしびである
路上の藍色の昆虫たちが
無理をしてでも、大量の胞子を飛ばして増殖する
ルオーの絵画の裏側から、光を当てて
たくましい、大江戸の排水計画と言うものが
赤土の泥とともに小便小僧を大地に建てる
かがやかしい船酔いの頃あいである
ムジナが石垣からはいあがり
別の穴へと侵入していく
東山道、やがてはみちのくの奥入瀬の流れとなり
榛名山、または利根川の河口付近では
恋人たちが火星へと打ち上げられるのだろう
星の内部の愛らしさと言うものが
今ではわたしを苦しめているのだ
快活におしゃべりをしている間に
ペリカンの指はふやけてしまっていた
近郊の家々ではもうすぐ機械的にシグナルが誕生する
そしてわたしたちの唇は抵抗する
タイガーとジャガーと消石灰が森の中に
ひとつの道を案内すると言うのだ
カトレア、もしくはアイドルのように。