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【英文法】Kendrick LamarとSZAで学ぶ仮定法

ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の最新アルバム『GNX』に続き、SZAが12/20にリリースした『SOS Deluxe: LANA』においても、ケンドリックとSZAのコラボレーションを堪能する機会に恵まれました。

そんな二人の直近のコラボ楽曲において、仮定法を用いたリリックが立て続けに登場していることにお気づきでしょうか? 仮定法については #HIPHOPで学ぶ英語 の文法の回でももちろん扱いましたが、そこで触れきれなかった表現が出てきますので、本記事ではそれについて解説したいと思います。

<If this world were mine>

Kendrick Lamar - luther

現在の事実に反することを仮定する〈仮定法過去〉において、if節の形がif + S + V過去形 …だというのは動画「【英文法】#56 Kendrick Lamar - "LOVE." ft. Zacariで学ぶ仮定法過去」でも触れたとおりですが、if節の中の動詞がbe動詞の場合について触れていませんでした。be動詞の場合、Sが何であれwereになりえます。意味は一般動詞の場合と同じです。「この世界(this world)が私のもの(mine)である」というのは、現在の事実に反することだから、仮定法を用いて過去形で表しているわけですね。

「なりえます」というのは、特に口語の場合、必ずしもwereになるとは限らないから。上の一節はルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)が客演しているシェリル・リン(Cheryl Lynn)の「If This World Were Mine」からのサンプリング部分で、ここでは三人称の主語this worldに対しwereが使われていますが、"if this world was mine"でも成り立ちます。他のアーティストでいえば、たとえばビヨンセ(Beyoncé)の曲には「If I Were A Boy」がありますが、プリンス(Prince)の場合は「If I Was Your Girlfriend」ですね。wereを用いるほうがより正式な英語とされているので、試験やビジネスで使う予定のある方は覚えておきましょう。

<If it was up to me>
I wouldn't give these nobodies no sympathy
I'd take away the pain, I'd give you everything

Kendrick Lamar - luther

ほら、さっそくここでもwereでなくwasが使われてる。その後の主節では助動詞wouldが使われていますね。婉曲のニュアンスを含むwouldやcouldといった助動詞が主節で使われるというのも、上掲の英文法#56で触れたとおりです。

I swear [I'd be at peace <if it weren't for you>]

SZA - 30 For 30 feat. Kendrick Lamar

これは英文法の仮定法の回でまったく触れられなかった表現です。

◆ if it were not for …: もし…が無ければ/いなければ

これはもうこういうものとして丸暗記してしまうのが早いかと思いますが、上掲のラインに対して無理矢理、仮定法でない対になる文を考えるのであれば、こうなるでしょうか。

I swear [it is for you that I'm not at peace]

私は誓って言えるよ(I swear)、あなたのせい(for you)だと、私が平穏でない(I'm not at peace)のは。つまり、私が平穏でないのは絶対あなたのせいだよ、という意味の強調構文ですね。実際には好むと好まざるとにかかわらず「あなた」は存在するわけなので、そんな事実に反すること(あなたがいなければ)を仮定しているのが元のリリックのif節"if it weren't for you"です。当然、主節でも助動詞wouldが使われています。ただ、それすらもthat節の中の話で、文全体の主語はI、動詞はswear、その目的語がI'd以下(thatが省略されたthat節)です。名詞節を[]、副詞節を<>で囲んでいるので参考にしてみてください。

ちなみに、「【英文法】#59 The Isley Brothers - "At Your Best (You Are Love)"で学ぶ仮定法未来と倒置」では倒置によりifを用いない仮定法を扱いましたが、if it were not for …でも同じことは起こりえて、その場合were it not for …になります。さらに、if it were not for …には〈仮定法過去完了〉パターンも存在し、次の形と意味になります。

◆ if it had not been for …: もし…が無かったら/いなければ

これも倒置が起きてhad it not been for …になりえます。これらの表現がリリックに使われている曲を探して聴いてみるのも楽しいかもしれませんね。

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