法人登記とは?起業の基礎知識
法人登記とは、自分の会社の概要を一般に公表し、法人として公的に認めてもらうための制度です。会社を設立する際には必ず必要な情報をそろえて設立の登記を行います。
設立する会社形態によって必要書類が異なるなど、初めて会社を設立する方にとって法人登記は少々複雑に思われるでしょう。なお、法人を設立して速やかに法人登記を行わなかった場合、罰則として過料が発生するのでしっかり手続きしておく必要があります。
ここでは法人登記、法人登記の手順、登記にかかる費用を説明します。
登記とは
まず、「登記」というものが何なのか、というところからが疑問点として挙がります。
登記には不動産登記、商業登記、法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記…と様々存在します。
この○○登記の○○に関して重要な権利や義務などを社会に向けて公示し、それらを保護した上で取引を円滑にするために定められている法制度の一つが「登記」というものです。また、その登記内容を書類として発行したものを「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」や「登記事項証明書」と呼びます。
中でも、よく耳にしやすいのは、不動産登記、商業登記、法人登記といったところでしょう。不動産登記は自分の所有する建物や土地などの不動産に関する登記で、簡単に言うと「この不動産はこの住所にあって、この人のものであり、ここに関する権利や義務は全て持ち主にあります」といった証明になります。
起業する際には「商業登記」と「法人登記」のどちらかが深くかかわってきます。
商業登記とは
会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)等について、その名称や所在地、役員の氏名等を公示するための制度です。
法人登記とは
会社以外の様々な法人(一般社団法人・一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人等)について、その名称や所在地、役員の氏名等を公示するための制度です。
商業登記と法人登記の違い
法務省の定義としては、上記の通り設立する会社の形態次第で名前が変わるようです。しかしながら、一般的に会社と会社以外の様々な法人をまとめて「法人」と呼ばれることが多いため、株式会社設立でも「法人登記」と呼ぶことが多いでしょう。
法人登記の手順
Step1. 会社の概要の決定
まず設立時に必要な基本事項を決めます。
基本事項の主な項目は社名(商号)、事業目的、所在地、資本金、会計年度(事業年度)などです。
Step2. 法人用の実印を作成
社名が決まり次第法人用の実印を作成しましょう。同時に銀行印と角印も作っておくと便利ですね。実印は会社設立後、重要な契約書や官公庁への提出書類などに必要となる場面が多くなります。
銀行印は口座開設時や口座振替依頼書の作成に、角印は請求書や納品書などに押印する際に使用します。
Step3. 定款を作成→認証を受ける
定款(ていかん)は会社を運営するうえでのルールをまとめた、会社の憲法のようなものです。定款にはあらかじめ決めておいた会社の概要の項目をはじめとする、必要事項をまとめて記しておきます。従来は紙媒体での保管が基本となっておりましたが、最近では電子定款も増えてきています。
また、株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証の手続きを行います。(合同会社、合資会社、合名会社の場合は、定款の認証は不要)
Step4. 出資金(資本金)の払込
資本金の振込先は、発起人の個人口座です。
単に自分名義の口座に入金すればいいわけではなく、資本金の払い込みを完了していることを証明する必要があるため、「払込証明書」を作成する必要があります。
「払込証明書」は通帳の表紙・裏表紙、入金が記帳されているページをコピーし、法人実印を押印し作成します。
会社法では資本金の下限がないので1円から申請可能ですが、資本金が極端に少ないと、事務所を借りる際の契約料や備品購入の資金が足りなくなるおそれがあります。最低限の資本金として、初期費用に運転資金3か月分を足した金額程度は、用意しておくとよいでしょう。
Step5. 登記申請書類を作成し、法務局で申請
Step4まで終わったら、法務局に法人登記の申請を行います。法人登記の申請を行った日が、会社の設立日となります。設立日を大安など特定の日にしたい場合は、逆算して準備を進めておきましょう。
なお、法人登記の申請が完了した後は、税金や社会保険関係の手続きを行います。従業員を雇う場合は、労災保険と雇用保険の加入手続きも必要です。
設立登記にかかる費用
登記する際に必要な費用は、定款にかかる費用と合わせて「法定費用」と呼びます。法定費用は設立する会社の形態と定款の種類(紙か電子か)により異なります。
新規で立ち上げる際に多い「株式会社」と「合同会社」の登記費用を比べてみましょう。
株式会社の法定費用
株式会社の法定費用は20~25万円が最低額です。上記にも記載した通り、株式会社は、会社で作成した定款を公証人役場で認証を受ける必要があり、認証手数料がかかります。
■紙の定款の場合
定款にかかる費用
定款印紙代:40,000円
認証手数料:50,000円
定款の謄本:2,000円ほど
設立登記にかかる費用
登録免許税:資本金の金額×0.7%
※150,000円に満たない場合は150,000円
合計 242,000円
■電子定款の場合
定款にかかる費用
定款印紙代:なし
認証手数料:50,000円
定款の謄本:2,000円ほど
設立登記にかかる費用
登録免許税:資本金の金額×0.7%
※150,000円に満たない場合は150,000円
合計 202,000円
合同会社の法定費用
合同会社の法定費用は6~11万円が最低額です。合同会社は定款の認証を受ける必要はありません。
■紙の定款の場合
定款にかかる費用
定款印紙代:40,000円
認証手数料:なし
定款の謄本:2,000円ほど
設立登記にかかる費用
登録免許税:資本金の金額×0.7%
※60,000円に満たない場合は60,000円
合計 102,000円
■電子定款の場合
定款にかかる費用
定款印紙代:なし
認証手数料:なし
定款の謄本:2,000円ほど
設立登記にかかる費用
登録免許税:資本金の金額×0.7%
※60,000円に満たない場合は60,000円
合計 62,000円
まとめ
ざっと見てきましたが、複雑そうに思っていた手続きも、案外できそうではありませんか?
定款の認証がなく、登録免許税が安い合同会社の方が設立費用は安いです。なお、合同会社は出資者と経営者が同じである必要があり、株式会社は出資者と経営者が異なるので、経営者の費用の負担度でいうと株式会社設立の方が軽いことが推測できます。
個人ではなく法人として起業を考えている方には避けては通れない手続きですので抜かりなく、手続きを行いたいですね。
法務局の方で「法人設立ワンストップサービス」というものが用意されており、法人設立関連手続をオンラインで行うことができます。比較的安価に登記の代行をしてくれるサービスもあるので、時間がない、手続きなど事務作業が苦手で申請ミスが怖いといった場合には、そういったサービスを利用しても良いかもしれません。
~補足~ 登記簿と登記簿謄本と登記事項証明書の違い
結論から言うと、このようになります。
・登記簿
→登記記録全般のこと
・登記簿謄本=登記事項証明書
→登記記録の内容を記載した書類で、法務局で誰でも取得できる(法改正により呼び名が変わった)
登記簿謄本の呼び方は、登記情報を紙ではなくコンピュータでデータ管理するようになったため変更になったようです。
紙で管理していた時代は、登記証明書を取得するときには「原本の写し」をもらっていたため、「謄本(とうほん)」と呼ばれていました。
現代ではコンピュータで管理しており「原本の写し」という概念はなくなったので、登記事項証明書と呼ばれるようになりました。
参考・引用
法務省『法務省:登記-商業・法人登記-』
法務省『商業・法人登記申請手続:法務局』