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慣れ〈第22話〉

昼の自動車部品の仕事は、月〜金の帯仕事
当初、ここの現場の人たちは
気難しいと聞いていて、気をつけてはいたが
毎日、顔を合わせているうちに、
挨拶から雑談もできるような関係になっていた

部品の積み込みは、現場のフォークリフトを使って
大型トラックに積み込む

積み込みにかかる時間は、およそ30分

その日は、いつも通りに積み込みを始めたが
荷量の積み込み半分を過ぎた時、事件は起きた

荷物の載ったパレットにフォークリフトのフォーク部分を
奥まで刺して、持ち上げて運ぶのだが、
考え事をしてたのか、パレットにフォークを半分刺した状態で
持ち上げてしまった。

どうなるか?

段積みされているだけの部品が、雪崩れを起こし
ガシャーーーーーンと
工場一帯に響き渡り地面に散らばったのだ

あっけに取られた、僕は何が起こったのか分からず数秒フリーズしていた
音に反応して、工場内の工員がワラワラ出てきて
ハッと我にかえり

いつも伝票をもらう事務所へすっ飛んでった。

『すいません!荷物倒しちゃいました』

伝票を渡してくれる、いつものおばちゃんが、
驚いた顔して、『あの音お兄ちゃんの荷物だったの!?』

おばちゃんは、出荷の取りまとめもしている人なので、
僕にダメな荷物とOKな荷物分けてと、言った後
工場内の品質担当を呼んで、荷物チェック
おばちゃん自らは、先方へ電話を掛けにいった

ダメな部品だけは残して積込みし大体30分位で処理は終わり
出ようとした時、おばちゃんが部品のことは心配しないで
『気をつけて行ってね』と

会社には、すぐ電話も入れて営業さんがくる手筈に

僕は、いつもより30分遅れ客先に着き、荷台のウィングを開けようとした時
客先の事務の若い女性が飛んできて
『ウチの工場止まっちゃいます!』と言われたものの
平謝りするしかなかった

そして、帰り荷を積み戻ってくると
まだ、破損させてしまった部品は残っていたが、
代わりの部品は、赤帽(軽自動車で運ぶ運送業)で運んだとのこと

さて、会社に戻りお説教はがっつり受けたのだが、
驚いたことに、その赤帽代が
給料から天引きされていた。

初めての事だったので、先輩ドライバーに相談すると、
無事故手当半年とか引かれる人もいるから、
今月だけですよね?って言った方がいいと。

すぐ事務所へ行き、経理の大奥様に念押し
今月だけ、無事故手当が飛ぶという言質をとり
冷汗かかずにすみました

最も、事故を起こさなければいいんだけど。
この件も、ほんと人に助けられました。





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