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映画「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」

 2024年・第81回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したペドロ・アルモドバル監督作品は、死に関わる問題提起と静かな感動の物語である。

 ステージ3の癌で入院しているマーサとかつての親友イングリッドが再会することから、物語は始まる。二人は空白の時間を埋めるかのように、語らい合うが、やがて「死」を覚悟したマーサが「安楽死」を望み、イングリッドに最期まで寄り添って欲しいと願うところから、二人の心の揺れが静かに演じられて、見応えがあった。

 安楽死なのか、尊厳死なのか、自殺なのか。

 立場によって見方、考え方が違うから、改めて難しいと思った。特に信仰が絡んでくると、相互理解は不可能だと思える。

 ラストシーンで僕はほんの少し救われた。あぁ、このためにきっとマーサとイングリッドは再会し、語り合ったのだと心が温まりながらエンドロールを見つめた。

 全編を通じて「雪」が重要な意味を持つ。先週、京都は雪が舞い、時に勢い良く降り、久しぶりに積もった。単なる偶然だが、「雪」のシーンがとても心に残った。

 タイトルの意味は映画を観ると良く理解できる。「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」を口にしたマーサの心情を考えると、やはり尊厳死なのではないかと僕は思う。

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