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『えーえんとくちから』笹井宏之(ちくま文庫)を読んでいます

 『鬱の本』(点滅社)で池田彩乃さんが「形を持った灯りを撫でる」というエッセイを書かれており、不思議と心に残っている。池田さんが大切な存在として取り上げられているのが『えーえんとくちから』で、『BRUTUS』1008号「一行だけで」の短歌コーナーでも寺井奈緒美さんが笹井宏之の短歌を選んでいる。

 よかったら絶望をしてくださいね きちんとあとを追いますからね

 こちらも『えーえんとくちから』とのこと。
 池田彩乃さんも寺井奈緒美さんも存じ上げないのだが、お二人を通じて笹井宏之が無茶苦茶気になり、昼休みに書店で『えーえんとくちから』を手にした。

 短歌は普段読まないので、笹井宏之という歌人も知らない。知らないだらけだけれど、不思議な強い縁を関じながら読み始めたのだが、短歌という表現は詩や小説に比べると、分かるような分からないようなジャンルだなぁ、というのが正直な印象だった。ところが、読み進めるといくつか「分かる」というか「刺さる」短歌が現れて、理解するのではなく、だんだんと感じることができるようになった気がする。そしたら、楽しくなった。

 食パンの耳をまんべんなくかじる 祈りとはそういうものだろう

 ものすごく、ストンと肚落ちした。理解ではなく共感だと思う。
 タイトルの『えーえんとくちから』の意味を知った時も、この人は凄いなぁ、と感心した。
 笹井宏之のことを何も知らずに読み進めて、笹井宏之のことを徐々に知ることにつれ、作風の変化を感じ、笹井宏之の人生を見つめた。

 あっという間に付箋だらけになった。もう何度も読み返している。 

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