「拳児」を読んだ。
拳児を全巻読んだ。21巻だったかな。
表紙見てなんとなく好きそうな絵柄だった。
男の子?女の子?わからないけど恐らくこの子が色々戦って成長していく、笑いあり涙ありの王道少年バトル漫画かなーと予想し読み進める。
主人公である「剛 拳児」が、祖父から受け継いだ技や戦闘スタイルを活かして学校内で不良と戦ったり街のチンピラとバチバチにやりあったりするという王道展開から始まる。祖父は凄腕格闘家、母は真逆で、拳児が喧嘩をするのには反対で平凡な毎日を過ごしてほしいと願う少々ヒステリック気味な性格。父は間に挟まれている立ち位置。バトル漫画だとお決まりの展開かも。
読み進めていくうちに、普通のバトル漫画ではない雰囲気を醸し出してきた。
戦闘シーンの描写が的確。今のバトル漫画の様なダイナミックな構図や周りの構造物などの損傷を描いてパワーをより強大に見せる技法とは違う、理論に基づいた動きや技を絵に載せて物語が進むので、読んでてトンデモな威力や頓珍漢な技が出てこない。その為、戦闘シーンにおいては何の疑問も生じずスルスルと読み進めることが出来た。
当然学校内でのイベントが終わればそこから学校外へのイベントへ発展していくわけで、ヤクザのお嬢さんと仲良くなったり暴走族と一悶着あったりでとりあえず悪運が強い主人公。こういうシーンって大体一回目は主人公が負けたりすることが多いんだけど、幼い時から祖父に鍛えられているせいで、苦戦はするものの大体初見で勝利することが多い。大っぴらに記載されているわけではないが、エリート学校のエリートだから物覚えも良く、武術においても飲み込みが相当早そう。[喧嘩商売]主人公の佐藤十兵衛を性格よくした感じ。喧嘩のせいで高校はヤンキー高校へ行く羽目になったのは仕方ない。ちなみに、ここまでのタイミングで恩師である祖父は中国へ旅立っており音沙汰がない状況。
個人的にこの「晶」っていう子がすごく好き。ヤクザの娘だからこそ気性が荒いものの、自分がカタギの人間でないからこそ、拳児に深く関われないと自制しているしっかりしてる面もあって良い。バトル漫画に出てくる「強い女」って良いよね。ここでの強いはバトル面のことでないです。
個人的には晶と拳児の青春絡みをもう少しやってほしかったなあと思ってしまった。バトル漫画なんだから、助言だったり情報収集だったりで色々役回りはあったのに、あまり積極的に使わなかったのは何か理由があったのかな。ちなみに、この後も何人かヒロインになりそうな女の子もちらほら出てくる。晶ほどではないけど。
そしてここから話は一転。
ヤンキー高校に入ってほどなくして、拳児は祖父の後を追う為に中国へ向かうことに。
正直、中国編は比較的すぐに終わってまた日本にすぐに帰ってくるもんだと思ってたけど、まさかのここから最終章まで日本に戻らず。北斗の拳とかでいう修羅の国くらいかなって予想してたけど、ずっと長かった。日本で決着ついてないライバルとかいたけど、結局そのライバルも拳児を追って中国来たし。どんだけ執念深いんだ。
そして、中国編に入ってから異様に登場人物が増えてわかりにくくなった。武術や拳法に関しては点で素人である為全てにおいて断言はできないが、この「拳児」という漫画は史実を元にして作られているので、中国編に入ってからめちゃくちゃ一人一人の人間の関係図が複雑になり似た様な名前の人が増えた。全員中国人なので当たり前か。日本にいた際に身につけていた憲法が八極拳だったのでそれに乗じて様々な中国拳法を会得していくが、拳法の種類が多すぎて混乱する。
でも、前述した様に元々主人公拳児にはチートスペックが備わっている為、言われたことは大体一度で会得できるし、記憶力も凄まじい為、物語はトントン拍子で進んでくれる。
いちいち暗記しなくても、流れで楽しめるのがこの漫画のいいところ。
恐らく史実を頭に入れた上で人物の相関関係を把握しながら読み進めていくことによって100%この漫画を楽しめるんだろうけど、フンフンと進めていっても80%くらい楽しめる。
中国編に入ってからは各々の拳法の所作や理念などをこと細やかに説明してくれるので、能力バトル系やSFバトルとは違って、日常に取り入れたくなるような豆知識などもチラホラ散見された。
中国拳法は技以外にも思想や人生を通して拳法を会得する、常住坐臥拳法に接するものであるので物事の考え方や捉え方が独特で、そういった面でも気づきの多い漫画だった。
一言で言えば中国編は面白いんだけど、最後がやけにあったり終わった気がする。日本に帰ってから晶とのアフターストーリーや、中国で学んだことを活かして他格闘技とのファイトも見たかった感はある。
ちなみに続編として「拳児2」があるらしいが、話を聞くところによると晶と拳児がくっついていない為見ていない。