【ニューヨーク滞在記】⑤ホッケー文化うらやましいぜ…ハイライン&チェルシーマーケットのオシャレゾーンも満喫
この日も朝起きると、ナオコさんがすでに朝食の準備を始めていた。マフィンにスープなどが並ぶと、おしゃれなカフェで食べる朝食のよう。ありがたい限りである。月曜日のためエリックはインターンに行ってしまい、すでに姿は無かった。
さあ今日は…NHL観戦!!!!
私が観るのは、13時からニュージャージー州プルデンシャルセンターで始まる、ニュージャージー・デビルズ対フロリダ・パンサーズの一戦。ニューヨークにはアイスホッケーのチームが2つあるが、両チームとも都合がつく試合がなかったため、となりのニュージャージーを選んだ。
会場へは、電車で移動しようと思っていたところ、ナオコさんが途中の駅まで運転してくれると言ってくれたので、乗せてもらうことにした。
10時ごろに家を出発。車内では、外国での働き方や、ナオコさんから見た立大アイスホッケー部などのことを話した。各国の人間性について話が及ぶと、ナオコさんは「オランダ人は日本人と対極で、誰に対しても自分の意見を突き付ける国民性がある。それはヨーロッパの中でも一番」と、オランダに住んでいた時のことを話してくれた。アメリカ人の自己主張具合は、オランダと日本の中間ぐらいらしく、今後の人生でオランダ人と出会った時には色々と聞いてみたいと思った。その機会までには、ある程度英語のレベルを上げておきたい。
33rd St 駅で降ろしてもらうと、これまで乗ってきたサブウェイではなく、path railの改札に向かう。ニュージャージー方面に行くためには、path railに乗らなければならない。乗車するには、メトロカードではなく、pathカードという専用のものが必要。そのカードもナオコさんに貸してもらっていた。一人だったら、メトロカードも、pathカードも駆使することなんて絶対にできていない。
ホームで少し迷ったが、明らかにデビルズファンであろう親子連れを見つけたので、後をついていく。彼らの乗った電車に乗ると無事、最寄りの New ark 駅に到着した。この時には、グッズを来たファンの数も増えていた。駅から10分ほど歩くと、プルデンシャルセンターが姿を現した。
デカい。角ばった施設のため、スタジアムと言うよりは演劇ホールに近い印象だ。
この会場はメットライフドームとは異なり、荷物を預ける必要もなく、機械を通るだけで検査を通過できた。昨日の二の舞にはなるまいと、チケットのQRコードも事前に出しておいたため、スムーズな会場入りに成功した。
まずは友人などへのお土産を求め、入口横にあるショップに入店した。自分用のグッズは、初日の夜に行ったNHLショップで入手済み。赤い背番号入りのデビルズシャツは、9番のホールという選手を選んだ。ナオコさんに「この選手が私は上手だと思う」と勧められたからだ。
一通りお土産を選んだが、NHLショップよりも豊富な品ぞろえに、ついつい財布のひもも緩んでしまう。デビルズの黒いトレーナーに一目ぼれしてしまったので、自分用に追加で買った。
準備は万端。コンコースに足を踏み入れると同時に、頭に乗せたデビルズキャップをギュッと被り直す。
大きなロビーでは、真っ赤なホッケーユニフォームを着たファンが、ビールを求めて長蛇の列を作っている。その横では、DJが楽しそうに最新の洋楽を流していた。アイスホッケーがマイナーな日本では見たことのない光景に、思わずスキップしてしまう。
エスカレーターに乗ると、ここでも、「レッツゴーデビルズ」との声が。アメリカ人は、エスカレーターの待ち時間を応援練習の時間だと思っているのだろうか。そんなことを考えていると、3階についた。
着席前に、デビルズのロゴが入ったビールとチキン、ポテトを入手。ここでもNFLよりスムーズで、パスポートを見せるだけで年齢確認は済んだ。
真っ白いリンクは、これまで何度も見てきた。だが、それを囲む全ての景色が、知っているものとはかけ離れていた。頭上にはどでかいスクリーンがあり、何万という座席が3階までぎっしりと敷き詰められている。試合時間が近づくにつれ、これから始まる激闘への期待を抑えることができない表情のデビルズファンが、次々と着席していく。
シュート練習などが終わり、13時になった。すると突然、会場が暗くなり、スタジアムDJの声が響き渡る。
「ニュー!ジャージー!!デビルズ!!!」
スクリーンではチームや各選手の紹介を兼ねた、モチベーションビデオが流れ、リンクにはプロジェクションマッピングが展開されている。約10分間の映像が終わると、耳をつんざくような歓声と共に、世界最高峰のNHLプレイヤーがリンクに滑り出した。
ファンクラブかなにかで選ばれたであろう子供が、スタメンをマイクで呼び上げていた。その後は、アメリカとカナダの国旗を向いて国家斉唱を行った。
盛り上げ上手なスタジアムの演出に乗せられ、すでにテンションはマックス。
ブザーが鳴ると、パックは見たことのないスピードで氷上を動き回り始めた。試合を追いかけることで精いっぱいなぐらいだ。
試合開始直後、デビルズは一点を失うが、2分後、私がシャツを買ったテイラー・ホールのゴールで1点を返す。その後はさらに、2P途中まで3連続得点で4対1と優位に試合を進める。
雰囲気は、デビルズファンのリサイタル状態だ。得点シーンでは、後ろの家族が抱き合って喜び、ピリオドの間には、カメラが座席にズームすると、観客は競うように踊りを披露する。
「そうそう! この雰囲気を味わいに来たんだ!!!」
何から何まで、東伏見のリンクで見るものとは全く異なるものだったが、唯一共通点があった。NHLでも試合中、クイーンなどの洋楽が会場に流れていたのである。関東の大学リーグ戦でも音楽が流れており、いつもノリノリで試合を見ていたので、なんだかうれしくなった。関東大学アイスホッケー連盟の努力も感じたのである。
デビルズはその後2失点し、4-3で2Pを終える。徐々にパンサーズが主導権を取り戻し、試合は白熱していく。
2Pでは、乱闘もあった。ちなみに、後でナオコさんに聞くと、「珍しいことではないんだよね」と言っていた。恐るべし…。
ここでも、3Pのタイミングで会場の散策に出かけた。せっかくならもっと近くで見たいと思い、1階席へ行ってみると、スピード感をより感じることができる。
うろうろしているうちに、デビルズは3P開始直後に同点に追いつかれる。さらに、7分後には逆転されてしまった。残り5分ではさらに1点を失い、その時点でズラズラと帰宅の列ができ始めた。
結局そのまま、4ー6で負けると、帰らずに見ていたファンは大ブーイング。帰り際に、怒りながら何か文句を叫んでいる青年もいた。
大声援と大ブーイング。この極端な感情表現は、日本で感じられることはなかなかない。しかも、それがアイスホッケーなのである。大学でこの競技の面白さに心を奪われて以来、マイナースポーツという立ち位置に疑問を持っていたが、その思いはますます強くなった。
文化が大きく異なり、仕方ないとも言える。しかし、やり方次第ではまだまだ競技の面白さを感じてもらえるのではないだろうか。
試合終了後、座席でしばらく余韻に浸っても、時刻はまだ4時ごろだった。このまま帰るのも早い。そこで、ハイラインというスポットに行くことにした。その近くには、お土産を買えるチェルシーマーケットもある。場所的にも、ニュージャージーから帰るルートにあるので、ちょうどいい。
New ark 駅から再び、pathに乗る。Canal st 駅で下車。スタバでコーヒーを買い、ハドソン川沿いを歩いて、目的地へ向かう。
心地よい風が肌に触れる。川沿いにはお洒落なカフェがあり、ランナーが気持ち良さそうに走っている。川の向こう岸には、ニュージャージーの街並みも見える。なんていい空間なのだろう。
階段を上がると、ハイラインがある。
入ると、すぐにアート作品が見えた。
少し進むと、また作品。
というような感じで、幅2メートルぐらいの道沿いに、アート作品が置かれ、オシャレな空間が漂っていた。途中、道路を見渡せるところで人々がたまっていた。写真スポットなのだろう。
ハイラインは、廃線になった鉄道を利用し、2009年に公園として生まれ変わったところ。確かに鉄道を思わせるものも残っていたりと、オシャレだし、不思議な空間でもあった。
しばらく歩くと、ゴールらしきところに着いた。奇妙な建築があったのでパシャリ。ベンチに腰掛け、日没を見届ける。
辺りが暗くなったところで、チェルシーマーケットに向かう。来た道を戻り、ハイラインを降りる。
外見は倉庫のようだが、中は明るく、店が並んでいる。雰囲気としては、横浜の赤レンガ倉庫に近い印象だ。雑貨屋さん、お菓子屋さん、食品店に、レストランやバーが立ち並んで、歩くだけでも楽しかった。
中は、すっかりハロウィン仕様。ゾンビやらが妙にリアルで、最初に気付いたときはびっくりした。実は、街を歩いているとハロウィンを感じさせるものはなく、それが意外だった。
20時ごろ、お腹が空いたのでご飯探しを始める。チェルシーマーケット内には、オイスターバーなどもあり一瞬心が揺れたが、やはり一人では入りづらい。調べると、近くに美味しいピザがあるとのことで、行くことにした。
目当ての「Artichoke Basille's Pizza」は、外見こそバーのような雰囲気だが、ニューヨークに8店舗もある人気店らしい。入ると、大きな窯が見える。
ピザはマルゲリータとアーティチョーク、あとコーラを頼み、外のテラスで食べることにした。
写真では伝わらないかもしれないが、思わず「でか」とつぶやいてしまうほどボリューム感。まずマルゲリータにかぶりつく。人気店だけあって、確かに美味い。続いて、クリームソース系のアーティチョークをかじると、こちらも想像通りの美味しさだ。コーラを飲みつつ、ニューヨークの夜の街を眺めながら黙々と食べていると、この町の一員になったかのような気がしてしまう。
ただ、私のお腹はやはり日本仕様のようだ。結局アーティチョークの方は食べきることができず、店を後にした。
もう10時頃だったので、満腹のお腹を抱えつつ、帰路につく。ふと店のガラスに視線を向けると、顔がふっくらしたような気もする。
夜の地下鉄ということで少し身構えていたものの、特に怖いこともなく、11時ごろにエリック家の最寄駅に着いた。
このまま帰るだけだったが、道沿いにサーティワン(現地ではバスキンロビンスという)を見つけてしまった。ドンキンドーナツとともに24時間営業だと言うことも分かる。アルバイターとして見逃すことはできまい。
入店し、悩んだ挙句ダブルに決める。サイズはあるかと聞いてみると、「なんだこいつ」みたいな反応をされてしまった。日本とは違い、ダブルのサイズは一つらしい。とりあえずサンライズシャーベットとパンプキン系のフレーバーを指さして注文した。
パンプキン系と書いたのは、日本では見たことがないから。国によってフレーバーを変えているのだろうか。
アイスの盛り方は雑で、タブの中も綺麗ではなかったけど、味は万国共通でうまい。夜のブロンクスは少し怖かったので、アイスを頬張りながら帰った。
着いたときには、エリック家は就寝直前。ごめんなさいと思いながら、すぐさまシャワーを浴びた。
翌日は、ついに、ついに、ヤンキース!!!!
その前には重要なランチもあったので、早めにベッドにもぐりこんだ。