小学生の私がローンで家を買った話

子どもの頃、うちの親はちょっと友達の親より変かもしれないと薄々勘づいていたが、大人になって、Twitter(Xとはまだ呼びなれない)で親の話を書いた時にもらう反応を見て、改めて、やはりちょっとばかし変だったよなあと思うので少しずつ子どもの頃にあったことを書いてみようかなと思う。今日は誕生日の話について。

小3だったか、小4だったか、それくらいの年齢の時だったと思う。その日は誕生日プレゼントを買いに行く日で、わくわくしながらデパートに向かった。

最近の子どもは直接お店に行って誕生日プレゼントを買うことも減ったのだろうか。ネットでポチっと買える時代だもんねえ。

私のお目当てはなんとなく決まっていた。シルバニアファミリーの家が欲しかった。うさぎの一家(お父さん、お母さん、男の子、女の子、赤ちゃん×3)とベッドなどの家具は色々持っていたのだが、この子たちの家をまだ持っていなかったのだ。

おもちゃ売り場にたどり着くとそこには大中小の3種類の家が売っていた。
当時の記憶をもとに調べてみると、

3階建の一番大きい家は
「緑の丘のすてきなお家」

2階建ての中ぐらいの家は
「(初代)赤い屋根の大きなお家」
(※現在売ってる同じ名前の家は3階建てにグレードアップしている)

そしてこじんまりとした1階建ての
「きいちご林のお家」

の3つである。

わたしが欲しかったのは一番大きい緑の丘のすてきなお家だった。
これは、ただ単に一番大きいお家が欲しかったのではない。すでに持っている子だくさんのうさぎの家族にふさわしい間取りは緑の丘のすてきなお家だと思ったのだ。最低限寝食分離はしたいし、できれば思春期に差しかかるであろう、うさぎの女の子と男の子は部屋を分けたほうがいいし、今はまだ小さい三つ子の赤ちゃんたちも成長したら自分のスペースが欲しくなるだろうと家族の先を見据えて緑の丘のすてきなお家がいいだろうと思った。
不動産屋の広告で家の間取りを見ながらそこでの生活を妄想するのが好きだった私は3つの家を見比べながらうさぎの家族に最もいい家はどれかを真剣に妄想していた。(間取りで妄想を繰り広げる小学生が大人になって一級建築士の資格を取るまでの話はまた今度したい)

「これがいい!」と誕生日プレゼントを緑の丘のすてきなお家に決めたところで親の様子を伺うと
「えー、こっちにしない?」
と一番小さい、きいちご林のお家を勧めてきた。

いやいやいや、うさぎさんファミリー、何人家族だと思ってるのよ???
きいちご林のお家じゃ、子供部屋を分けるどころか、全員分のベッドも入らないじゃないか。
うさぎさんファミリーのためにも引き下がるわけには行かない。
「こっちがいい!!」
普段あまりわがままを言う子ではなかったが、このときはうさぎさんファミリーの生活がかかっていると思い必死で抵抗した。

親がきいちご林のお家を勧めてきたのは今から思うと、しましま家(私の実家をこう呼ぶことにする)で住んでいる家の大きさの問題だったと思う。都内のささやかなマンションの子供部屋には緑の丘のすてきなお家はデカすぎる。わたしはうさぎさんファミリーの生活は想像できたが、しましま家の生活までは想像できていなかったのだ。

うさぎさんファミリーの生活を守りたい私
VS
しましま家の生活を守りたい親

どちらも必死だった。
いや、誕生日くらい好きなもの買ってくれよ!!

なかなか決着がつかず、父と母が相談をはじめた。
いや、誕生日くらい好きなもの買ってくれよ!!

長い協議の末、こんなことを言われた
 
「えもまちゃんは、このお家を、自分で買うんでも欲しいの?」

お?試されてる??本当に欲しいものをねだっているか試されてるのか??私の覚悟は決まっている!!

「もちろん!!!」

うさぎさんファミリーの生活は俺が守る!!!!

「じゃあ、きいちご林のお家との差額の●円を毎月のお小遣いから●円(金額は忘れた)自分で払うんなら買ってあげる」

この親は何を言っているんだ????????
宇宙猫という言葉は当時なかったが私は宇宙猫になった。

誕生日プレゼントを分割払いで手に入れる?????

今なら、何でもかんでも欲しがるものを無条件にポイポイ買ってあげるのはちょっとネ…という親の意図も汲めるのだが、当時はまじで意味がわからなかった。自分で一生懸命お金を出して手に入れることでものを大切にするという意図も当時はわからなかった。ただただ、ケチすぎない???と思っていた。

さて、うさぎさんファミリーの生活がかかっているマイホーム購入なわけなのだが、私はここで怯んでしまった。
月々の支払いが重すぎる。
当時もらっていたお小遣いは周りと比べると少なかったし、しましま家のお小遣い制度というのは、無条件に毎月お小遣いがもらえるものではなく、満額お小遣いをもらうにはそれなりの苦労が伴った。(しましま家のお小遣い制度の話もそのうちしたい)
苦労して手に入れたささやかなお小遣いから毎月●円も引かれるというのは泣きそうな話だった。

「じゃあ、赤い屋根の大きなお家だったら…?」

大きなお家と名のついた中ぐらいのお家で交渉しよう。うさぎさんファミリーには悪いが、緑の丘のすてきなお家のローンは私には払えそうにない。

「それだったら毎月〇円かな」

よし、いけるぞ、これなら買える!!!
ちょっと狭いかもしれないが工夫して住んでもらおう。部屋は分けられなくても、家具の配置を工夫して、ゾーニングすればなんとかなる。

「これにする…」

緑の丘のすてきなお家を恨めしい目で見ながら、私は誕生日プレゼントに赤い屋根の大きなお家を買ってもらった。買ってもらった??月々支払いがあるのに????

まあとにかく、こうして私は、うさぎさんファミリーのために赤い屋根の大きなお家を手に入れたのだった。ローンとともに。

それから二十数年、結婚して子供を産んで、今なら親の考えてることもちょっとだけわかる。社会勉強させたかったんだろうな。

誕生日なのに???
いや、意味わからんわ!!!!


追記:
実家を出る時、ちゃんと赤い屋根の大きなお家を持って出ました。今も大事に持っています。

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