「あいつら全員同窓会」を妄想解説します
みなさんはご存知だろうか。
「ずっと真夜中でいいのに。」の「あいつら全員同窓会」。
どっちがアーティスト名でどっちが曲名なのか分からない。
真夜中に同窓会はYOASOBIじゃないのか?とか言い出したら余計ややこしくなるので止めておく。
頭おかしくなるくらい最近何度も流れているSpotifyのCMの曲だ。CMでしか聞いたことがないがキャッチーで良い曲な気がする。
だが「〜〜〜〜〜♪ あいつら全員同窓会〜〜〜〜〜♪」と言った具合に「あいつら全員同窓会」以外何も聞き取れない。最近の曲は歌詞の文字数が多すぎる(ジジイ)。ネットで歌詞検索すれば万事解決するのだが「あいつら全員同窓会」というキラーワードを見てしまった手前、このままやすやすと正解を見てしまっていいのかという心持ちになった。
ということで「あいつら全員同窓会」というタイトルのみをヒントにして、歌詞のストーリーを当ててみせようと思う。本気だ。
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夏の暑さがピークを過ぎた9月下旬、僕は自宅マンションの一室で大の字に寝そべっていた。社会人6年目。大きな仕事を任されるポジションになり、それなりに良い家にも住めるようになった。
今日は久しぶりの休日。仕事が立て込んでいたこともあり、何もやる気が起きない。今にも重力で身体がフローリングにめり込んでいきそうだ。
ふいに寝返りを打つと、床の上に放り出していたスマホが目に入った。LINEのメッセージ受信を知らせる通知だ。
「今度合コンがあるんだけど来ない?」
俺の同僚。相変わらず軽いヤツだ。これまでも合コンの誘いは来ていたが、なんとなく気乗りしなかったのでいつも断っていた。今回も断ろうか、、いや、たまには外に出た方がいいかも。うーん、、冷やかしくらいのつもりで行ってみるか、、
「たまには行こうかな」
そうLINEを返して再び寝返りを打った。
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10月に入るとさすがに肌寒い。待ち合わせの居酒屋に入ると若い女性の店員が近づいてきた。
「ご予約してない顔ですね」
「失礼だな。連れが来てると思うんですけど」
事前に同僚から聞いていた予約名を伝え、座敷に通してもらう。どうやら俺が一番遅く到着したようだった。
自己紹介もそこそこに会が始まった。男性陣は俺、同僚、同僚の幼なじみの3人。女性陣も同じく3人だったが、同僚が飲み屋で出会った子たちらしく、それぞれは面識がないようだった。
話をしていくうちに、俺以外の全員が北関東の出身であることが分かった。「茨城は〜」「埼玉は〜」「群馬は〜」と様式美ともいえる小競り合いを展開し、卓上ケンミンショーをひと通り楽しんでいた。
俺は東北の出身だったが、いまいち会話に入れずもどかしい時間が流れた。
俺から向かって左端に座っていた派手めな女が話し始めた。
「高校のときにね、上はワイシャツとネクタイ、下はジャージを履いてる先生がいたんだよね」
「ワイシャツとジャージの組み合わせも変なんだけどさ、いつもネクタイの先をジャージの中にしまってたんだよね。友達とは陰で「先っぽだけオジサン」て呼んでたんだよね〜」
先生の奇天烈な服装はともかくネーミングセンスが最悪だ。先生もまさか青少年条例に引っかかりそうなあだ名で呼ばれているとは想像していなかっただろう。
すると俺の隣にいた同僚とその幼なじみがハッとした顔で言った。
「えっ!その先生ウチの学校にもいたんだけど!学校ってもしかして〇〇高校?」
「そうだよ!2人も〇〇高なの?!偶然!」
なんと3人はクラスは違ったが同級生だったらしい。さらに話を聞いていくと、3人と俺を除いた女性2人もお互い同級生だということが発覚した。そんなことある?ポーカーならフルハウスだ。
各々のジモトークがめちゃめちゃ盛り上がる。
俺はハイボールがめちゃめちゃ進む。
話すことがない、、
この空気に一矢報いたい俺は、通っていた高校の先生の話をねじ込んだ。
「俺の高校の先生も変でさ。語尾に絶対『〜なんだぜぇ』って付けるのよ。『スギちゃんかよ古りぃよ』っつって友達と笑っててさ」
「へえ〜」「それはスギちゃんだ」「不思議な先生だね」
「……でさ〜!先っぽだけオジサンがさ〜〜!!」
一矢報いるどころか、放った矢を簡単に折られてしまった。激烈にもろい矢だったことは認めるが、そんなにバッキバキに折る必要ないじゃない。もうちょっとこう歩み寄ってくれてもいいじゃない。折れたのは矢じゃなく俺の心だったかもしれない。
「先っぽだけオジサンに聞いてみたの。『先生はなんでネクタイをズボンにしまってるんですか』って」
「ええ!聞いたの?すごいすごい!」
異様に盛り上がっている。内輪ネタは人間の脳をやたら興奮させるらしい。
「そしたら先生がね『昔トイレの水を流すときに、ブラブラしてたネクタイがトイレに巻き込まれて頭から便器に突っ込んだんだ』ってwww それからネクタイをズボンにインするようになったらしいwww」
「マジかwww」「ヤバいwww」「オモロすぎるwww」
なんだそのウソは!ウソすぎるだろ!オモロいのかそれは?お前らはそれでいいのか?
いたたまれなくなった俺は同僚を店の外に呼び出した。
「なあ?!今日俺ら合コンで集まったんだよな?!」
「そうだよ。それがどうしたんだよ」
「あいつら全員同窓会じゃねぇか!」
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「あいつら全員同窓会」のシチュエーションは "コレ" 以外ありえない。完全に "コレ" である。本気だ。
答え合わせをするため「あいつら全員同窓会」を聴いてみる。
♪♪♪
ええ曲やね。一番のサビの歌詞を載せておく。
どうでもいいから置いてった
あいつら全員同窓会
ステンバイミー 自然体に
シャイな空騒ぎ
ねばった戦績 飛んでった
なりたい自分に絡まる電柱
ぼーっとして 没頭して
身勝手な僕でいい
独特の言い回しではあるが、自分なりに読み解いてみると
・曲中の「同窓会」は「ステレオタイプな尺度・価値観で他人を決めつける場」の象徴として描かれている
・主人公にとってそんな「同窓会」はどうでもいいし、自分は自分の尺度・価値観で生きていきたい
といった感じだろうか。めっちゃパンクでかっこいいやん。
特に「同窓会」の描き方が、教室の隅でジメジメした思春期を送っていた僕にストライク!最高!
うん。ん?
全然先っぽだけオジサン出てこんやん。全然やん。