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THE MONITOR MISSION

気がつけば年が明けました。お陰様で爬虫類屋として2024年を迎えることができました。このnoteもそれなりに読んでいただけているようなので2024年も頑張っていこうと思っています。スキはあまりつかないですが・・・笑。

爬虫類飼育の世界では”何々の人”と呼ばれる風潮があります。これは”カメの人”であったり”ヘビの人”であったりといったもので、その種を専門に扱っている人や好きな人のことを指しています。これはコミュニティが細分化されてきているということもあると思います。ただ個人的見解では昔から良く聞くのはヘビの人、カメの人なので、恐らくこの2種類の飼育者にはこれにしか興味のない方が多い傾向があったからできた言葉なのではないかと考えています。私の場合は爬虫類全体が好きで、その中で興味があるものとないものがあるというタイプなのであまり当てはまらないのかなと考えています。「私は何にも縛られないのよ!捕まえてごらんなさぁ〜い ♪」ということで、逆に何の人とでもある程度深いお話ができるので、このことは爬虫類屋としての強みでもあります(新年なので自分を上げてみました)。ただ何の人ですか?と聞かれて答えなければならないことも度々あります。実は最近はカメを扱うことが多く、カメの人とお話しすることも多いのですっかりカメの人になりつつあるのですが・・・笑。本当は限定されると他に興味がないと思われたりもするので、面倒臭いからこんな風潮なくならないかなと思っていたり思っていなかったり・・・。そんないまでも何の人ですか?と聞かれればデカいトカゲやデカい肉食のトカゲと答えることが多く、それは以前テグーの記事で書いたことからも分かると思います。

要は分類的に異なる種を一緒に説明するのが面倒臭いからなのですが、私の中でデカいトカゲとはテグーそしてモニターのことを指しています。私はテグー派かモニター派かでいえばテグー派なのですが、モニターにもまた特別な思いがあります。そんなモニターはテグーの記事で対として紹介しましたが、深掘りをしていなかったこと。年末にかけてモニターの話をする機会が多く、個人的に楽しかったこと。いまこそ目覚めよその魂ということで新年1発目はモニターの記事を書きました。テグーの対を意識して目次をつけてしっかり書いた結果、非常に長くなってしまいました・・・笑。年始が暇だったのでダラダラと書いていますが参考になればと思います。

プロローグ

そもそも上記がプロローグ・・・。
前にもやった気がするが・・・笑。
以前の記事で私が店を任された時に看板としてオーブリーフタスッポンを導入したということを書いたが、実はその後にもう一つ看板の役割を担って貰おうと考え導入した個体がいる。それがミズオオトカゲ(Varanus salvator)のサルファである。サルファとは地域個体群のようなもので、昔はV.salvator.spとして紹介されていた。普通のミズオオトカゲの体色がリバースしたような配置と全体的に薄い色が特徴である。もしかしたら遺伝的なものかも知れないが詳しいことは分からない。比較的昔から流通はしているが高価な種類である。そのサルファが在庫を揃える際に導入の話があった。私のはじめて飼育したトカゲがミズオオトカゲであったこともあり、特に探していたわけではなかったが何か縁を感じて導入したのである。

ツーストライプウォーターモニター (V.s.bivittatus)のサルファフェイズ

ということでミズオオトカゲは店のもう一つの隠れた看板なのである。そして爬虫類屋と言ったらモニターだろうということでそれなりの種類を揃えたのであるが、全然売れない・・・笑。もちろん店の知名度と私の商売気のなさが祟ってのことであるが、どうやら新規飼育者が減ってきているようである。そればかりか最近ではメディアでネガティブなニュースが取り上げられることも多くなっている。なので”とりあえずモニター!”という考えは、もしかしたらオーブリー導入より安直だったかもしれないなどと思ったこともなくはないのであるが、そんな現状を憂いていても仕方がない。そもそもが得意分野を掘り下げていくこのnote。いまこそモニターについて本気出して考えてみた。

モニターとは

モニターとは英語でMonitor Lizard、オオトカゲ科のトカゲの総称である。オオトカゲでも問題ないが爬虫類飼育の世界では格好つけてモニターと呼ぶ。ただオオトカゲという名前はオオトカゲ科のトカゲを指しているため、テグーやイグアナなどの大きいトカゲはオオトカゲとは言わない。もしかしたらモニターと呼ばれるのはこのことが関係しているのかも知れない。モニターはテグーとは違い種類が多く生息域が広い。東南アジア、中東、アフリカ、オセアニアの旧大陸に84種が分布している。オオトカゲという名からも大きいトカゲであると想像できるが、種類が多いため大型の種類は全長2mを越えるが、小型の種類は20cmほどである。ただ大体の種類は1m以上にはなるため大きくなるトカゲという認識で問題はない。全種を通して身体が柔らかく、ある程度統一性のあるシャープで格好良い容姿をしている。このためモニターの仲間だと同定をすることは容易であると考える。主にといか1グループを除いて完全な肉食性である。

Varanus属

84種類もいるモニターだが、実はオオトカゲ科は1科1属である。つまりモニターは全てオオトカゲ(Varanus)属に分類されている。しかし多種多様なモニターはオオトカゲ属の下に多くの亜属がある。トカゲ大全では「オオトカゲ属を属として残しておく必要がなかったら、これらの亜属は属に格上げされていただろう」(オシー,2021,p.220)とある。なぜオオトカゲ属を残しておかなければならないかは書かれていないが、その理由を書けやボケなどとは言ってはいけない。このように属に格上げされても良いのではと考えられるほど、形態が異なる亜属がいるので紹介していくが、知らない間に分類が細分化されていた。案の定、論文を読んでいないため合っているのかはわからない・・・笑。というか頻繁にマイナーチェンジがあるため一概にこれが正しいとは言い難いのであるが、一応手元の文献で現在と過去のものを照らし合わせながら紹介していくのである程度グループの把握はできるだろうと考えている。

オニオオトカゲ (Varunus)亜属

もし属に格上げされたらここがオオトカゲ属に残る原名亜属。有名なコモドドラゴン(V.komodoensis)が属していることからも分かるとおり陸棲でガッシリした印象のあるグループである。コモドはペットトレードには流通しないため、主に流通する種類は以下の通りである。
・ペレンティーモニター (V.gigas)
・レースモニター (V.varius)
・スペンサーモニター (V.spenceri)
・メルテンスウォーターモニター (V.mertensi)
・グールドモニター (V.panoptes)

一部のグールドを除き原産国がオーストラリアのため、繁殖個体が流通するが滅多にお目にかかれず高価である。特にペレンティー、レース、スペンサーはオーストラリア御三家と呼ばれているか私が勝手に呼んでいるほどのマニア憧れの種である。分かりやすく言うとLUNA SEA、GLAY、L'Arc~en~Cielである。どれが良いかは好みであるが、オーストラリア最大種で独自の雰囲気を持つペレンティー、コモドに雰囲気が近く格好良いレース、アヒル口で可愛らしいスペンサーであると個人的には考えている。このグループで目にする機会が多いのはニューギニアにも分布するグールド(V.p.horni)だけである。

ナイルオオトカゲ (Polydaedalus)亜属

アフリカを中心に分布するグループである。唯一、中東にイエメンモニター(V.yemensis)が分布するが、国内には2度ほどしか輸入されていないため今後目にすることも少ないだろう。他の3種は目にする機会が多い。
・ナイルモニター (V.niloticus)
・アフリカンロックモニター (V.albigularis)
・サバンナモニター (V.exanthematicus)
ナイル、サバンナは安価なベビーが大量に流通するため目にする機会は多い。サバンナは比較的小型でモニター比で不活発な印象である。ナイルはアフロク(アフリカンロックモニターの通称)と同じくらいの全長150cm~200cmほどになるのであるが、アダルト個体をみかける機会は少ない印象である。これは性格がキツいということもあり、安価なため大切にされない傾向にあるということが昔から言われている。ただ大人になると食性が変わるなどとも言われているため飼育が簡単な種類ではないのかも知れない。アフロクは亜種であるV.a.microstictusが流通していたが、主輸出国であったタンザニアが動物の輸出を禁止したため目にする機会が減った。現在は隣国から輸出された個体をみかけるようになったが、一時期は幻であったケープバンデットと呼ばれる基亜種の方が目にする機会が多い印象である。

ヒメオオトカゲ (Odatria)亜属

名前からもわかるとおり一番小型のグループである。最小種で全長20cmほどであるが、具体的にどの種が最小種であるかがイマイチ特定できない。多くの原産国がオーストラリアであるが、スカラリスモニター (V.scalaris)チモールモニター (V.timorensis)はニューギニアやインドネシアに分布する。ピーコックやシミリスとして流通するのがそれであるが分類がややこしい。オーストラリア産で繁殖個体が流通する主な種は以下の通りである。
・リッジテールモニター (V.acanthurus)
・ショートテールモニター (V.brevicauda)
・キンバリーロックモニター (V.glauerti)
・トリスティスモニター (V.tristis)
・ピルバラロックモニター (V.pilbarensis)

キイロオオトカゲ (Empagusia)亜属

このグループはイエローモニター (V.flavescens)ベンガルモニター (V.bengalensis)がサイテスⅠ類のため、流通するのはデュメリルモニター (V.dumerilii)のみである。かなり私観的であるが、このグループが一番容姿の統一性がない気がする。

テングオオトカゲ (Dandrovaranus)亜属

ラフネックモニター (V.rudicollis)1種のみで構成される亜属である。しかし現在ではキイロオオトカゲ亜属に含まれるようであるが、カラスの化け物やパワードテレスドンのような様子は唯一無二であり、テングオオトカゲというネーミングが気に入っていることから私が独断と偏見で復活させた。どちらにせよ統一性のない容姿である。

吻が長いためか正面が見えていない印象である。

サバクオオトカゲ (Psammosaurus)亜属

デザートモニター (V.griseus)1種のみで構成される亜属で、本種もサイテスⅠ類である。アフリカから中東、インドにかけて広く分布するがなぜかサイテスⅠである。容姿はいかにも乾燥系の皮膚の質感をしており、凛々しく美しい。

フィリピンオオトカゲ (Philippinosaurus)亜属

グレイモニター (V.olivaceus)が有名であるが、近年2種が追加されたようである。本亜属が植物を常食するグループである。ダラス動物園の突然死の件が有名で、長期に渡るタンパク質の過剰摂取が原因であるというものである。これが野菜ジュースや植物性油を餌に注入することで解消されたことが、同じような食性のテグーの飼育に応用されるが、もしかしたらテグーより植物質が必要かも知れない。実際に一度肉の味を覚えてしまうと、植物を摂取しなくなるようである。過去にそれなりの数が入荷したようであるが、現在ほとんど見かけないことからも、それらの理由から長期飼育が困難なことが窺える。

ソロモンオオトカゲ (Solomonsaurus)亜属

イザベルモニター (V.spinulosus)のみが属する。モニター界のオカピ(Okapia Johnstoni)とは勝手に思っていることだが、他のモニターの特徴を合わせたような容姿をしている。名前の通りソロモンに生息しているが、ビブロンボアであったりオマキトカゲ(Corucia zebrata)であったりソロモンに生息している爬虫類は少し変わったものが多い。

パプアオオトカゲ (Papusaurus)亜属

世界最長のハナブトオオトカゲ (V.salvadorii)のみが属する亜属である。英名はクロコダイルモニターであるが、ハナブトが通名である。本種とコモドドラゴンは特定動物のため現在では新規の飼育は難しい。ちなみにコモドはサイテスⅠ類のため、実質的なトカゲの特定動物は有毒のドクトカゲ科と本種のみである。その理由は最大全長475cmの巨体と神経質で攻撃的な性質からだであると考える。私は超大型個体をみたことはなく、大人しいとして紹介されている個体も多いことから(一度海外で2mほどの個体が怒り狂っている動画をみた事はある)あまり危険な印象はない。しかし流通量も多くはなく比較的高価でマニアックな本種が比較的早い段階から特定動物のリストに入っていたことから本当に危ないんだろうなと考えている。

マングローブオオトカゲ (Euprepiosaurus)亜属

おそらく一番目にする機会が多いグループの一つである。どの種も比較的スリムな印象で半樹上生活に適した形態をしているが、個性的であるため主に流通する種を個別に紹介していく。
マングローブモニター (V.indicus)
ニューギニアやインドネシア、オーストラリアまで各島々に分布する。そのため産地によって模様や形態に差異がある。個人的な印象であるが、本亜属と同定されたがよくわからない個体はとりあえず本種といっておけば良いというのは個人の意見である。実際に本種から独立種となるケースも多い。
・イエローヘッドモニター (V.melinus)
 上品な印象を受けるモニターである。名前からも分かるように、頭から全身にかけてレモンイエローやちょっと高い鶏卵の卵黄のようなオレンジが入る。最大でも全長120cmほどで性格も上品な個体が多いことからも人気である。
・ブルーテールモニター (V.doreanus)
 他種よりひと回りほど大型の種である。スリムではあるが、頭部が大きく吻が鼻太である。名前の通り後脚付近から尻尾まで綺麗な青が入るが、模様や青の入り方などが産地によって異なる印象である。

和名がオルリオオトカゲなのかルリオオオトカゲなのかいまいちわからない。


・カールシュミットモニター (V.jobiensis)
 ピーチスロートモニターと呼ばれこちらの呼び方の方が通である。喉元が赤やピンク色に、尻尾が青やグレーになるが個体差が激しい印象である。

ホソオオトカゲ (Hapturosaurus)亜属

いままではマングローブモニター亜属であったが、新設されたようである。新設される前からツリーモニターとして括られ、より細身であり尾が長く樹上生活に特化したグループである。主に流通するのは以下の通り。黒、緑、青、黄色と色彩のバリエーションも多彩である。
・ブラックツリーモニター (V.beccarii)
・エメラルドツリーモニター (V.prasinus)
・コバルトツリーモニター (V.macraei)
・イエロースペックルモニター (V.boehmei)

エメラルドツリーモニター

ミズオオトカゲ (Soterosaurus)亜属

ミズオオトカゲ (V.s.macromaculatus)の幼体

この亜属は冒頭にも登場したミズオオトカゲ (V.salvator)の多くの亜種達で構成されていたが、いくつか独立種になった。最大全長250cmの大型種である。英名はウォーターモニターであるが、学名からのサルバトールモニターの通名が使用される傾向にあるが私は使用しない。それは”サルバトール”は基亜種を指すものであると考えているからである。例えるならミツユビハコガメ (Terrapene carolina triunguis)をカロリナハコガメと呼んでいるようなものである。そのため基亜種以外には和名の”ミズオオトカゲ”や英名の”〜ウォーターモニター”を使っている。これによりサルバトールモニターと称した場合の「基亜種じゃないじゃないですか」という難癖に対応することができる。ただカロリナと違い意味が伝わることや決して間違っているわけではないため否定はしない。ちなみに基亜種はスリランカの個体群のみになったようなので、目にする機会はないがみてもわからない気もする・・・笑。それくらい1種であるのに分類がややこしく、明らかに区別ができるものがやっと独立種になったというようなグループである。これは東南アジアの大陸や島々に広く分布していることからも分かる。陸上生活はもちろん名前の通り水への依存度も高く立体活動も行えるため、”陸・海・空”全てを司る存在であるとまでは言わないが他種のモニターと共通点があるようなないようなグループである。

カミングスウォーターモニター (V.cumingi)

オオトカゲ下目

この項目は特定する事実が書かれている文献が手元にないものがあるため、いままでにも増して独断と偏見と少しのファンタジー色が強くなってしまった。くれぐれも一意見として受け取っていただきたい。
ここまでモニターに様々な種類がいることを述べてきたが、ドクトカゲ科とは近縁であり同一に語られることも多い。テグーとカナヘビの関係よろしく、以前はオオトカゲ上科としてもう少しわかりやすい関係であったが、現在はオオトカゲ下目となりもう少し大きなグループで括られているようである。
以前は有毒のトカゲはドクトカゲ科のアメリカドクトカゲ (Heloderma suspectum)とメキシコドクトカゲ (Heloderma horridum)のみであると言われていた。その後コモドドラゴンの口内細菌であると考えられていたものが毒であると発表され、コモドドラゴンは有毒であるという認識になった。ドクトカゲは下顎の奥に毒牙があり、毒を垂れ流しながら注入する。死亡例がなくはないのであるが、どうやら不健康な方であったようである。これらのことから殺傷能力は低いと言われている。

ドクトカゲの毒牙の位置

これに対してコモドの毒は注入方法なども異なり、殺傷能力は高いと言われている。わかった当時は独自の生態系で独自の進化を遂げてきたのだろうなどと考えられていたが、どうやら他のモニターも有毒であるといことが現在の認識である。毒の成分や注入方法などは不明であるが、実はこのことが判明する以前から、モニターに噛まれたことによって体調不良になる事例を耳にしていた。私が聞いた中では、カールシュミット、ブルーテール、イエローヘッドやツリーモニターなどマングローブ系が多い。そのため個人的にこのあたりは有毒ではないかと考えている。ただし噛まれても症状が出ない場合も多いため、必ずしも危険なものであるということではない。このように噛まれた種類や人、またはそれらの組み合わせによって症状が異なるため、今後の研究に期待したい。ただ毒の解析は結構大変なため、やる必要がないと考えられているかもしれない。もし私がお金に困ったら”色々なモニターに噛まれてみた!”などと題して、検証をおこなってバズらせるかもしれないがいまのところその予定はない。などと言っているが動物に噛まれて良いことはないため、毒の有無にかかわらず噛まれないようにすることが賢明である。一応断っておくと動物に噛まれるのはいつでも飼育者が悪いと私は考えている。
またモニターはヘビ類とも近縁であると言われている。トカゲとヘビは有鱗目に属している。それぞれトカゲ亜目、ヘビ亜目に分かれていて独立した目ではないのである。このことからもトカゲとヘビが近縁であることがわかるが、ヘビはオオトカゲ下目から分岐したと言われている。実際に外見的特徴としてモニターは他のトカゲに比べ身体が柔らかく、舌の形状もヘビ寄りであると考える。有毒種がいるという共通点も考えられるが、俗にいう毒蛇のコブラ科とクサリヘビ科は新しいグループであるため、二次的に獲得したものではないかと考える。
これらのことからモニターが特異な爬虫類であることがわかる。このほかにもコモドやミズオオトカゲでは単為生殖が確認されている。実際に飼ってみてもテグーと違って頭が良く、過酷な環境でいかにして陣地を広げていくかを考えて生きてきた片鱗が窺える。その結果が毒の獲得であったり、ヘビになったりと言ったことではないかと考える。私は決してモニターが危険であると言いたいわけではない。爬虫類のミッシングピースとなりどのような環境にも適応してきたモニターには無限の可能性がある。そのことがモニターと付き合ってみると感じることができると考えている。訳のわからない話になったが、要はモニター飼育は楽しいのである。

モニターの飼育

モニターの飼育は敷居の高いものではない。種類や購入時の状態にもよるが基本的に丈夫である。テグーの記事で飼育方法は書かないと言っていたのであるが、次項にも繋がるので簡単に説明したい。ヒメオオトカゲ亜属は少し勝手が違うと考えるため、ここで記すものは全長1m以上になる種類で考えていただきたい。
まず初めに個体選びである。前項にも書いたが、モニターは頭の良い動物である。大型になるほどこの傾向にあるのではないかと考える。性格はみつめただけで喉元を膨らませて口を半開きにしながらこっちを睨んでいるような個体は論外であるが、臆病なことが多い傾向にあるため環境に適応すれば少なくとも扱われるのに慣れるというところまではいけるはずである。そのため初めて飼うのであれば扱い易いベビーサイズから飼うのが良いかと考える。モニターも人も成長と共に扱いに慣れていきやすいと考えるからである。この際、大人しいと思われる個体は調子が上がっていないか怖くて動けないだけの場合があるので注意したい。逆に図太い個体は触る際にエサだと思って手に飛んでくる場合があるので注意したい。爬虫類は攻撃ではなくエサと間違えて噛まれることの方が圧倒的に多い。ただやはり頭が良いのでテグーと違って成熟するとこの事態は減少する。
次にケージであるが身体能力が高いため必ず蓋のついたもので、ベビー時は特に保温性の高いものの方が良いと考える。市販されている爬虫類ケージの60cmx45cmx45cm規格で問題ないが、観音開き式よりスライド式の方が良い。このサイズから成長に伴いケージもサイズアップしていくわけである。最終的には特注や自作になるのであるが、モニターは身体が柔らかいので多少の融通は効く・・・。と言われているが、ここに次項に関係する問題点がある。ただそこをしっかり解消すれば、恐らくではあるがケージより極端に大きくなることはないため、ある程度の飼育者のニーズにあわせた飼育ができる。

ネコケージをモディファイした自作ケージの例

その他の器具はバスキングスポットと全身が浸かれる水場は必須であるが保温がしっかりできればそこまで凝ったレイアウトは必要ないと考える。逆に成長に伴い力も強くなりレイアウトは破壊されるのでケージ内はシンプルな方が良い。そのためライト類も必ずケージの外に設置するようにしたい。あとは成体になればある程度の耐寒性はあるが、完全なものではないため保温はできるだけした方が良い。ここがテグーと違うところである。
モニターは種類が多いためざっくりとなってしまったが飼育方法はこんな感じである。野生収集個体の場合は寄生虫の問題はあるが、基本的に大きくなる爬虫類は地力があるので余計なことをしなくても大丈夫である。個人的にモニターは人間側に合わせてくれるというか、イレギュラーなものにも対応してくれる種類だと考えている。

モニターの脱走

ここまでモニターについて述べてきて、少しくらいは飼ってみたいと考えていただいた方もいると思うが、飼育の楽しさばかりを伝えるだけではないこのnote。飼育する上で注意することも伝えなければならない。それは脱走である。非常に残念ではあるが最近はモニターが脱走したというニュースを目にする機会が多くなってきている。昔からみないわけではないが、2023年はよく目にしたような気がする。大体ミズオオトカゲなのであるが・・・。そして2023年9月14日に滋賀県大津市でペットとして飼われていたサバンナモニターを逃してしまったとして、危険動物解放の疑いで書類送検される事件が起きてしまった。結果的に不起訴になったようだが、他人事ではない事件である。危険動物解放は要するに他人に危険だと思わせる動物を逃してしまった事であると考える。実際にはサバンナモニターは危険ではないと私は考えるがそういうことではない。私は爬虫類飼育はマイノリティーな趣味であると考えている。最近は理解のある人も増えたなと感じる時もあるのであるが、一定数以上は不快感を持つ動物であることを考えて飼育しなければならない。一方で特に悪さをしたわけでもないのに騒ぎすぎだよなとも思ったりもするのであるが、声を大にして言ってはいけない。
そのようなことでモニター飼育者の肩身が狭くなったり、新規飼育に至らなくなってしまうのではないかと考えこの記事を書いたという側面がある。飼育者に対しては逃すな!とは言いたいが、逃げてしまったものは仕方がない。これに関しては明日は我が身である。批判をすることよりも正しい管理や脱走防止方法の提案を誰かやってくれないかなと思っている・・・。おしまい。

いや、自分でやれ。

ということで本当は権威のある人間が発信した方が良いのであるが、やるべきことはやろうということで権威のない人間の一意見としてモニターを飼育する上でやっておいた方が良いことを考えていく。
モニターに関わらず爬虫類の脱走する一番の要因はケージの締め忘れであると考える。これに関しては締める癖をつけましょうとしか言いようがない。スライド式の場合は開けてしまう恐れがあるため、施錠もしたほうが良い。これは完全なケアレスミスのためその他のことについて考えていく。
モニターは脱走が上手い。というか頭が良いので暇な時は脱走のことを考えている節がある。市販のケージの上蓋部分は立て付けが弱かったり、はめ込み部分が内部から開けやすかったりする。身体が柔らかいため少しの隙間でも脱出できてしまう。一度やろうと決めたことは怪我をしてでも遂行しようとするため、必要に狙っている箇所は注意が必要である。また狭いケージの場合は単純に力でこじ開けて脱出してしまう。狭いケージで妥協できない問題はこれである。そのためテープなどで補強するか広いケージに移行することが必要になる。ちなみにオーダー品は上蓋が接着しているものが多いためおすすめである。ケージの脱走経路は一度覚えると忘れないため放置は厳禁である。
こんなことを書いているので1度や2度は意図しないところでケージの外に出してしまったことはあるのだが、重要なのは家の外に出さないことである。庭ならOKだが間違いなく外に出る。その対策として飼育スペースは密室を作れるところをお勧めする。要はドアのある部屋である。これによってケージ、部屋のドア、玄関のドアと3重に対策ができる。吹き抜けのリビングやワンルームでの管理では難しいかもしれないが、最低限の脱出経路を把握し外へのアクセスは塞いでおいた方が良い。窓に関しても外出時は網戸であっても開けて出ないよう徹底したほうが良い。モニターの多くは立体活動ができるためより多くの場所から脱走してしまうのである。話の主旨とはズレるがケージから出てしまった場合でも、棚やケージの上をつたって移動したりするためバスキングライトなど火災の原因になる物の落下などにも気をつけたい。
モニターに限った話ではないが動物飼育には予期しないことが起こる物である。特に爬虫類は慣れる動物であっても懐く動物ではないためケージから出てしまえば隠れてしまいみつからないことも多い。その点ではモニターは身体が大きくみつけやすいといえる(だからこそ外に出ればみつかってしまうとも言えるのだが)。またある程度慣れていたり飼育している空間が安心できるものであれば、そこに留まっていることも多いのではないかと考える。実際にケージから脱走してもストーブの横でくつろいでいたりする。そのためにもある程度慣らすことは大切である。ただいくら慣れているからといってウチの子は大丈夫という考えは禁物である。飼育者は常に脱走について危機感を覚えていなければならないと考える。

エピローグ

ここまでモニターについて長々と書いてきて、範囲が広い故に文字数の割に内容がスカスカかなとも思ったりもするのであるが、私のモニター普及活動はお楽しみいただけただろうか。モニターは大きくなるというイメージが先行しがちであるが、記事内でも頻繁に強調しているとおり大きくなるということよりも頭の良い爬虫類かなと個人的には考える。もちろん大きくなることも魅力であるがそれはテグーも一緒である。これらに限らず大型の爬虫類を飼育する上で、大きくなることに対して覚悟がいるとお考えの方も多いだろう。私は大きくしてから言え飼育をしていく中で覚悟は勝手についてくるのではないかと考える。飼育をしていれば成長も感じられ愛着も湧いてくるはずである。その個体が快適に過ごして欲しいと思えば、自ずとスペースを割きたいと思うのではないかと考える。もちろん色々と制約もあるかもしれないが、仮に犬猫を飼育することに比べれば、コストも労力も低いため無理な話ではない。
私はテグーは可愛さと格好良さを併せた爬虫類であると考えるが、モニターは単純に格好良い爬虫類であると考える。自然界の厳しさを表現したような凛々しさはモニター独自の魅力である。またモニターは”オオトカゲ”としてネイチャーな側面で有名な動物である。故に人気者であると信じているのであるが、もし爬虫類が好きでモニターを飼育することに躊躇している人がいれば、一度挑戦してみても良いのではないかと考えている。

参考文献

冨水 明 2002 『大蜥蜴世界』 マリン企画
Go!! Suzuki 2006 『爬虫・両生類ビジュアルガイド オオトカゲ&ドクトカゲ』 誠文堂新光社
マーク・オシー 2021 『トカゲ大全』 エムピージェー

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