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黄色泥亀繁殖記

これまで爬虫類の記事を3回にわたって書いてきた訳ですが、今回は動物観を主体にした論文モドキの記事とは違いポップな内容です。なのでデスマス調でお送りします。

爬虫類飼育の醍醐味の一つとして繁殖というものがあります。一般的な書籍などでも生態、飼育、繁殖と大まかに括られて紹介されていることが多いと思います。生態を学び飼育をおこない繁殖に向かうということは動物園などでもおこなわれているプロセスだと思います。爬虫類飼育でも同様のことが言えますが、繁殖個体や繁殖の情報が多く出回るようになった最近では繁殖に照準を合わせて飼育をはじめる方も多くなってきました。

そんな時代に私は繁殖に関して、面倒臭いからどうしても個体に負担がかかってしまうという理由でおこなってきませんでした。というか過去の記事をみても分かる通り生態やスペースの関係上、繁殖激ムズの種類ばかり飼育してきたのでまずは飼って育て上げるというところに重きを置いていたという側面もあります。もう一つは育て上げるという側面上、幼体から飼育をはじめるのですが、まぁ雌雄が偏る・・・笑。なかなかペアが揃わないという状況が幾つもあるのですが、そこらへんの話をすると長くなるのでまたの機会に。

WC(野生採取個体)の♂とCB(繁殖個体)の♀

そんな中、この仕事をはじめて個人的にも何か殖やした方が良いなと考えていました。丁度幼体から育てて5〜7年くらい(最近いつ飼ったか明確に覚えられない)のキイロドロガメ(Kinosternon flavescens) のメスが良い感じに育ったので、オスを導入して繁殖することにしました。なので今回は簡単ですが繁殖の手順と反省という名の愚痴を記事にしていこうと思います。

キイロドロガメ

繁殖の手順の前に、今回繁殖計画を立てたキイロドロガメについて紹介します。
分類学的にいうとカメ目潜頚亜目ドロガメ上科ドロガメ科ドロガメ亜科ドロガメ属のカメです。ドロガメ、ドロガメうるせーよと思われる方も多いと思いますが、そもそもドロガメとはなんぞやということで。一般的にドロガメとはドロガメ属のカメを指します。ドロガメ科はドロガメ属の他にニオイガメ属が分類されるドロガメ亜科。ハラガケガメ属、オオニオイガメ属が分類されるオオニオイガメ亜科に分けることができます。名前からも分かるとおりオオニオイガメ亜科は大型になりますが、ドロガメ亜科は最大でも20cm程度で、世界最小種のヒラタニオイガメ(Sternotherus depressus)が属する小型種の多いグループです。”泥亀””匂亀”と安直な和名からも分かるとおりにあまり知られていないグループでしたが、小型で丈夫で飼いやすいことや、色彩が綺麗な種類も多いことから少しずつ人気が出てきているグループだと思います(個人の感想です)。ちなみに和名の由来は”マッドタートル””マスクタートル”からの直訳です。
キイロドロガメに話を戻すと、本種はアメリカからメキシコにかけて分布する最大甲長16cmほどの中型のドロガメです。比較的マイナーチェンジの激しい容姿をしているドロガメにおいて、全体的に丸っこい印象とアホ面は本種のみの特徴と言えます(個人の感想です)。本当は過去に亜種とされていたアリゾナやデュランゴもいるのですがややこしいのでここでは割愛します。そして名前の由来ともなっているイエローやオリーブグリーンに発色する甲羅がとても綺麗です。はっきりとした発色ではなく家具調や琥珀調といった深みのある発色が上品で魅力的な種類なのですが、大体の人が渋いと感じてあまり人気があるとは言えません・・・笑。

クーリング

案の定、前置きが長くなりましたが、ここから繁殖の手順を紹介します。ほとんどの爬虫類はクーリングによって繁殖活動を促します。クーリングとはようは冬眠なのですが、日本の冬の野外では少し厳しいので、室内で温度の変化が少なく15℃くらい(熱帯産の爬虫類のクーリングはこの温度帯でやられている方が多いかなと思います)の場所を探す必要があります。そんなところない!笑。ということで恐らく15℃一定ではないですが、とりあえず廊下で3ヶ月間のクーリングをおこないました。

ペアリング

キイロドロガメの繁殖でよく聞く失敗として片方が殺されてしまうというものです。そのため同居には注意が必要です。これにビビって秋口のペアリングはおこないませんでした(カメは秋口と春先に後尾して初夏あたりに産卵する種類が多い)。まぁこのままでは何の為のクーリングなんだということで、同居させてみたところ、意外とメスの方が気が強い印象。オスはほとんど陸地にいるという状況でした。ただエサの時はメスなど関係なしに水に入ってくるので、用がある時以外は干渉しない私みたいなヤツなのかなと思っていました。

そして交尾確認。3回確認して離しました。特に傷付けることもない優秀なオスでした。さすがWC。

産卵

交尾をして産卵まで少し時間があるので余裕をぶっこいていたらメスが膨らんできたので、そろそろかなと思い産卵床を設置しました。スロープも作って砂を買ってきて足らない・・・。とかをやっていたら1回目は水中産卵。これが今回の1番の反省です(かなり初歩的)。ただカメは1度の産卵期に何回か産みます。これをクラッチと言います。というわけで2クラッチ目に期待。また膨らんできて潜りはじめました。1週間経っても出てこないなということで掘ってみたら3つ出てきました。すでにガッツリ発生していました。ひっくり返しちゃったかもしれない・・・笑。

キイロドロガメの卵

孵化

産卵から180日で卵が孵ります。と聞いていたのですが、180日を経過しても孵りませんでした。まぁ初回なので有精卵が採れただけよかったかなと思っていたら・・・。

おや・・・?

ということでしっかり孵化しました。有精卵は腐るまでとっておきましょう。キイロドロガメに関しては生まれてしまえばこっちのものなので丈夫ですぐに人工飼料も食べてくれました。

このように今回は非常にざっくりですが、繁殖記録をご紹介しました。なにかの参考になれば幸いです。今年は片手間にやっつけでおこなってしまいましたが、データは採れたので来年は頑張ろうと思っています。

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