ISSUGI / GEMZ
購入日: 2024.09.04
購入場所: ディスクユニオン渋谷クラブミュージックショップ
購入価格: 1,000円
日本のヒップホップシーンにおいて唯一無二の存在感を放ち続ける稀有なラッパーであるISSUGI。
MONJU、Sick Teamなどのクルーでの活動だけでなく、BESとのジョイントアルバムやDJ SCRATCH NICEとのコラボアルバム、さらには16FLIPとしてのビートアルバムのリリースなど、その活動ペースはシーンの中でも圧倒的。
2019年リリースの本作は新曲と過去の関連作のリメイク曲によって構成されており、バンドによる生演奏とビートメイカーのトラックの二つの手法によって作られているのが大きな特徴だ。
ただISSUGIが巧みなのは「バンド・サウンドによるヒップホップ」を声高に主張するような音作りに傾くことなく、あくまでもビートメイカーによるトラックと併存させることを前提にしたサウンドアレンジを徹底していることにある。
それは16FLIPとBudaMunkの一貫した美意識と洗練されたプロダクションによるものだと思うのだけど、ISSUGIのストイックなラップの強度も相まって非常に硬派でクールな仕上がりになっている。
この“ONE RIDDIM”などに顕著だがまるでサンプリングと打ち込みによるトラックだと勘違いするような演奏に驚かされる。
この“硬派でクールな"作品というのは今のシーンにとっては貴重なもので、流行りのビートやサウンドが正義になりがちなヒップホップのゲームに踊らされることなく、純粋に彼(ら)自身が信じる音を突き詰めるその姿勢にこそ惹かれてしまう。
オーセンティックでありながらも現代的なアレンジとサンプリングのセンスの良さは筆舌に尽くしがたく、いわゆる「ブーンバップ」というラベリングに収斂することも拒みたくなるほどに上質なヒップホップアルバムだと思うのである。
ISSUGIのラップはいつも通りシンプルで重厚、無駄な言葉や派手なフローに頼らずに淡々と感じるほどタイトにライミングを重ねているのだがそのビートアプローチが完璧なのでスムースにグルーヴが生み出されているのがまた素晴らしい。
日本のヒップホップもすっかりJポップシーンの中に定着した感があるけれど、かえってISSUGIの存在感は日を追うごとに増していると思う。
彼の関連作品に駄作などないが、その中でも至極の1枚。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?