本をつんだ小舟によせて ~ゲッツ板谷著 わらしべ偉人伝~
私は古本が好きだ。値段が安いというのもあるが、誰かのフィルターを通してその本にふれているような気がするのも一因である。義父が定期的に貸してくれる本が好きなのも同じ理由である、無料で本が読めるというのも大きな理由のひとつであるが・・・。
中学生の時、我が家は9時に寝るというルールがあったため、ドラマを見ることできなかった。深夜に放映されているお笑いを見るなど夢のまた夢であった。
ある日、教室で友達が、深夜放送のお笑いのネタを再現していた。なぜか僕は猛烈におもしろくてゲラゲラ笑っていた。また、ある日友達の家でダラダラしていた時、ゴリラーマンという漫画があったので読んでみたらこれまた大爆笑した。
今になって思うとネタや漫画自体がおもしろかったというのもあるけれど、自分がかっこいいなぁと思える友達がおもしろいと思っていることを共有した気持ちが爆笑につながったのだと思う。
ゲッツといえば、私はゲッツ板谷を思い出す。
彼はギャグ名人であり、わらしべ偉人伝は彼の才能がいかんなく発揮された名作である。
彼の作品に通底していることは、細部まできっちりおもしろい、という一言につきる。例えば、巻頭や巻末での著者紹介、キャプション(写真下に入る説明文)などに絶妙な一言をそえてくる。
そして、解説すらおもしろい。直感サバンナにおける松尾スズキ氏の解説を一部引用してみようと思う。
“たとえば、比喩に関するこだわり。
「〇〇みたいな」とか、「〇〇のように」の「〇〇」の部分にいかにバカな言葉を入れるか、というような些末(さまつ)なことに頭が”かゆくなるほど心悩ませることがたまにあるのだが、ゲッツさんの文章にもそういった「バカな比喩」の前で背筋伸ばして正座しているような生真面目さを感じるのである。”
おもしろい人の雑談を聞くのはおもしろいし読むのもまたおもしろい。
追伸 キャームさんのご冥福を心より申しあげます。