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お酒の席で、すごい人。

 つい先日、遊びに誘っていただき、ついでに10人ぐらいの飲み会に参加しました。とはいっても私はまだ未成年のため、飲酒することはできません。

 一般的に18歳で大学生になるため、一概に大学生といっても法律的に飲酒が認められている年齢に到達するのは、早くて大学2年生の初め、遅い人だと大学2年生の終わりごろまで待たなければなりません。大学生というと吞兵衛なイメージがあるかもしれません。しかし、合法的に飲んだくれることができるのは、実は大学生活のおよそ3分の2だけなんです。
 そして、3,4年生になると就活等が始まりますから、次の日に面接等があれば、きっと酔いつぶれるまで飲んでいるわけにはいかないでしょう。そうすると、合法期間が3分の2ほどあったとしても、後先気にせず飲んでられる期間はさらに短いのでしょう。

 話が少々それましたが、一概にみんな立場が異なる状況で飲み会をしようとなると、ある人は飲めるがある人はそうでないという厄介なことが起こり得ます。となると、飲めない人は気まずく、つい乗りを合わせるためにアルコールを口にしてしまうし、一方で飲める人も思い切り楽しめないと感じてしまうでしょう。そんな中、大学生の飲み会という難しいシチュエーションでうまく立ち回っており「すごいなぁ」と感じた人に幸運なことに出会うことができたのです。便宜上、その人をSさん(「すごい」のS)とします。

 状況としては大学2,3年生の集まりといった次第で、そうすると大多数は飲めるけど、私を含む一部の人はそうでないといった状況です。

 当然ですが、注文する前はまだ皆シラフなわけです。ですから、目を配ることができます。しかし、時間が経つにつれて、盛り上がってくるとともにだんだんとお酒が回ってくるわけです。そうすると、周りにまで気が回らなくなるわけです。アルコールを摂取している以上、これは当たり前のことで全くもってしょうがないことです。

 しかし、Sさんは皆と一緒にお酒を飲んで盛り上がっているのに、酒が入る前と変わることはないのです。このような状況下で飲めない私に「みんな飲んでいるんだからその分頼みたいもの頼みなよ」とメニューを手渡してくれました。
 定食屋に行くのと違い、単品を数頼む飲み屋では各自で自身の分を支払うことは現実的ではありません。ですから、支払は割り勘になります。私は割り勘で全然いいと思っていましたが、飲まない人の中には不公平に感じる人もいます。そんなことを分かって、Sさんはそのような対応をしてくれたわけです。
 そういってもらえると、私としても自分の頼みたいものを注文しやすく感じます。そんなお言葉に甘えて、私は馬刺しなんて値が張るものを頼んでいましたが。(馬刺しって美味しいんです!良いものだと口の中ですーっととろけるんです!)

 そんなこんなで酔いも時間も回ってくるとテーブル上に皿やグラスがたまってきます。私は相変わらずシラフなのでそれらをまとめて店員さんに下げてもらっていました。皿を落としたら損害賠償請求(民法709条?)されるかもという単純に法学部脳的な理由でそうしていただけですが、Sさんは気が利くねと一言声をかけてくれました。人間、人に褒められていやな気になる人はいませんから、まあうれしいものです。いやあ、そこまで気にかけられるSさんこそ気が利きますね。

 そして、そろそろいい時間です。お会計となったときには多少あれど皆酔っている中、Sさんは支払に関してまとめてくれました。「一人○千円」と言われましたが、よくよく考えるとそんなきれいな金額で割り切れるわけがありません。百円単位までなら皆で割っても誰も不平不満は言わないでしょう。きっとどたばたしても大変だから単純な数字にしてくれたのでしょう。「きれいに割れたね」としか思っていない私は気が利きませんね。

 退店後、Sさんに何杯飲んだか聞いてみました。答えは意外なことに3杯。それもあんなにみんなと一緒になって盛り上がっていたのにです。
 驚いている私に顛末を説明してくれました。まず、乾杯で1杯。それを皆が飲み干した2杯目の注文時に1杯。あとは、それがなくなった時に個人的に1杯、とのこと。
 正直お酒のコントロールがうまいなぁと感動してしまいました。Sさんはお酒に弱いわけではありませんが、翌日のことも考えてそうしていたようです。ただ、お酒を飲んでいないと雰囲気を壊すのではないかと思う面もあるでしょう。その点、Sさんは言われてみれば絶妙にそれをコントロールしていました。
 そもそも見ている限り、Sさんの前からジョッキがなくなっていたことはありません。ですから、たくさん飲んだのだろうと思った私は何杯飲んだか聞いたわけです。しかし、実際のところはそのようにして雰囲気を壊さずに飲酒量を制御していたわけです。空のジョッキがあればきっと新しく頼まれてしまうでしょう。一方で、全く減っていなくとも一人だけ飲んでない感じになるかもしれません。
 適当なタイミングでちょびちょび飲むことで、飲んでいる風を出しながら飲んでいなかったSさんにすごいの言葉しか出ませんでした。

 言葉に出さず、動作に出さず。皆で食事した時にサラダをとりわけしてくれる人は女子力があるとか気が利くとか言われます。しかし、お酒の場に限らず、真に気が利く人はそういった様子を周りに感じさせません。一言で表すのなら「さりげなく」といった感じでしょうか。
 そんなわけですから、ぼーっとしていると、何かしてもらったとも気がつかず、ありがとうの言葉を伝えもせず、ただただその状況を当たり前のものだとして享受してしまいます。

 Sさんに「いやあ、すごいや。」と言うと、「はは」とすらりとかわされてしまいました。思わぬ場所で大切なことを知らされました、ほんとに気が利く人は、一見気が利く人ではなく、一緒にいて不快でないと感じさせてくれる人なのだと。

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源 勝芳(法学部生ブログ)
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