おやすみ

今日は何をしようか。そう考えながらラボ内をふらふらとしていた。いつも通りジリアさんに何か悪戯をするか、それとも局長室に何か悪戯でもするか、それとも・・・悪戯をするか、いずれにしても何か楽しいことはないのか、ラボのドアを開けては見渡しを繰り返した。そうだジリアさんからは使うなって言われてた『N.A.B.E.』あれでも使ってみるか。部屋に入りうす暗い部屋の中を探す。
「いたっ」
机の角にぶつかったのか腕に軽い痛みが走る。この程度ならべつにどういということはないのだが。さて探し物の続きでもしようかと思った瞬間。カランと何かが落ちる音がした。音のした方に目をやると砂時計が落ちていた。そして砂が昇って行っている。
「あれって確か」
思い出そうとしたときに意識が薄れていくのを感じた。次の瞬間には意識が途絶えていた。

あぁ、何だろう。何か懐かしい匂いがする。どこか懐かしい匂いに包まれながら目を覚ます。体はなぜかうまく動かない。周りの風景から察するに今いる場所はあの街だということだけはわかる。怒号と喧騒が飛び交っている。目の前には見たことあるような無いような、そんな姿の女性が私のことを抱えている。私にどこか似ているような気がするのは気のせいなのか。この女性の目は憎悪なのか哀れみなのか、気持ちを汲み取れないような目で私を見ている。なぜか体は動かせないからこのまま身を任せるしかない。
暫くすると女性の足が止まった。そして私のことを地面に置いた。置いた私に毛布をくるませ食料を入れた。そして女性が自分に着けていたヘアピンを私の髪につけ一言
「さよなら」
と告げこの場を去っていった。
そこから暫くは街を歩く人たちが私のことの方をちらりと見た後見て見ぬふりをして通り過ぎたり、見ず知らずの人が水分を飲ませてくれたりと、体はボロボロになりながらもなんとか生きながらえていた。しかしいつの時か毛布を盗まれ寒さにやられそうになっていた。
いつの日かまた私の前に見知らぬ女性が立ち私のことを見下ろしていた。そして私の隣に何かを置いた。隣に置かれたものに触れ久しぶりに温もりを感じた。あの女性は何も言うことはなくこの場を去っていった。
あの人はいったい何だったのか、何をしたかったのか。隣に置かれたものの方に目を向ける。
夜月?

ふと目が覚めた。景色はラボ内だ。先ほど見た情景を思い出し鼓動が早くなる。目の焦点が定まらない。昼に食べたものが込みあげてきて戻してしまった。この短時間で何回意識遠のいちゃうんだろうな。地面が冷たい。
「はー。自由にやりすぎてる罰なのかなぁ」
視界がブラックアウトした。

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