ただのオタクが放課後のプレアデスを布教するために書いた。
「SUBARUがさ、アニメ作るらしいんだよね」
「ふーん」
友人の車で夜の首都高を走っていた。
この時はまだ「放課後のプレアデス」という名前すら知らなかった。
自動車メーカーのSUBARUとアニメ製作会社GAINAXがコラボして作ったアニメ作品がある。それが「放課後のプレアデス」だ。
TVアニメ版「放課後のプレアデス」は違う運命線にいた女の子5人が(いわゆるパラレルワールドというやつ)プレアデス星人によって1つの運命線に集まり、7年前の事故で壊れた宇宙船を修復するためにエンジンのカケラを集めることになる話だ。
「放課後のプレアデス」はTVアニメ版が放送される2015年の4年前、2011年にWEBアニメとして配信されたのが始まりだった。
(ファンやスタッフの間ではYouTube版と呼ばれている)
私が「放課後のプレアデス」の存在を知ったのはYouTube版が配信されてから少し経ってからのことだった。
それ以前からSUBARUがアニメを作るという話はSUBARU車に乗っている友人から聞いていたが、私がそれを「放課後のプレアデス」として認識したのはもう少し後だった。
学生時代のバイト先で知り合った友人がSUBARUの車が好きで、よくバイト終わりに首都高を走りに行ったり食事に行ったりしていた。その友人の影響でSUBARUの車が好きだった。
SUBARUがアニメを作るという話を聞いた時、私はまるで興味がなかった。広告に使うプロモーション用の簡単なアニメーション映像を自社で製作でもしたのだろうと思っていた。
「放課後のプレアデス」という作品を認識してからまず驚いた事は製作に協力しているのがGAINAXということ。
GAINAXは「新世紀エヴァンゲリオン」「天元突破グレンラガン」などの製作に携わっている。(アニメーション制作の多くは共同制作名義で他社へ委託する形をとっている)
「放課後のプレアデス」は自社単独名義による元請制作の最後の作品となっている。(その後のガイナックスは大人の事情が色々あるようなので気になる方は調べてみるといいかもしれない)
SUBARUとGAINAXで作ったアニメと聞いて、勝手に車が変形して戦うロボットものを想像していたら180度違う作品だった。なんなら540度くらい予想外だった。
可愛い女の子たちが変身して空を飛びまわる、魔法少女もののアニメだった。
まずはとにかくキャラクターが可愛い。
キャラクターデザインの大塚舞さんのキャラクターデザインが素晴らしい。「灼眼のシャナ」「のんのんびより」「うらら迷路帖」「この美術部には問題がある!」など可愛いキャラクターには定評のあるデザイナーだと思う。
5人それぞれのデザインが素晴らしいのはもちろん、キャラクターの背景や性格など細部への拘りが尋常ではない。キャラクターの個人回がある(1人にスポットを当てて、そのキャラクターの過去を掘り下げた話がTVアニメ版に組み込まれている)のだが、担当した声優の過去の実話や背景を元に製作されている。
例えばメインキャストの1人である牧野由依が声優でありピアニストである背景を元に、担当しているキャラクターのひかるの個人回(TVアニメ版4話)はピアニストであるひかるの父親とひかるの思い出をピアノの曲を鍵にして描いている。
余談だが、牧野由依の父親は実際に音楽家であり、キーボーディストで、私の好きな水樹奈々に楽曲提供をしていたりする。
(水樹奈々の初期の頃の「真冬の観覧車」「LOOKING ON THE MOON」などの名曲は、牧野由依の父親である牧野信博が作曲をしている)
話が逸れてしまったが、各話がとても丁寧に作り込まれており、いとも簡単にキャラクターに感情移入してしまう。
TVアニメ版4話は何度見ても泣いてしまう個人的に大好きな回なので、人に「放課後のプレアデス」を勧める時はまず4話から見せたりする。
何も知らない読者はこれだけ読むと「放課後のプレアデス」はほのぼのした魔法少女アニメだと思うかもしれない。
思い出してほしい。
SUBARUが作ったアニメなのだ。
実はこのアニメ、TVアニメ版の劇中にSUBARUの車が登場するシーンはほんの数回しかない。しかもどれも数秒なのだ。
にも関わらず、Twitterで検索をかけると「放課後のプレアデスを見てSUBARU車を買いました」という旨のツイートがたくさん出てくるのだ。
車を宣伝するアニメではないのに、どうして皆SUBARU車を購入してしまうのか。
「放課後のプレアデス」ではキャラクターたちが魔法の力で変身して空を飛ぶのだが、箒で空を飛ぶのではない。ドライブシャフトで飛ぶのだ。
「放課後のプレアデス」のキャラクターたちはドライブシャフトという名の、SUBARUの車のエンジン音が鳴り、車のフロントグリルを模したデザインの、車のプロペラシャフトのような形状の魔法の杖に跨って空を飛ぶのだ。
メインキャラクター5人のモデルになった車がそれぞれあり、キャラクターに感情移入し好きになってしまったファンはそのモデルになった車を買ってしまうのだ。
ちなみに私の推しであるあおいは、WRX VAがモデルになっており、EyeSight(衝突回避)が搭載されているらしく、劇中で警告音が鳴る描写がある。いつか納車したい。
また、「放課後のプレアデス」は効果音や音響が心地いい。
プレアデス星人を星に返すためのエンジンのカケラが接近した際に流星予報が鳴るのだが、この予報の音には速度超過の警告音が使われている。(キンコン音というらしいが、1986年に装備の義務付けが廃止されているため私は実際に聞いたことがない)製作スタッフの遊び心が感じられる。
また、TVアニメ版4話でひかるの父親が作曲した曲にひかるが「ソ」の音を書き足したという過去があるが、この話の挿入歌に使われた「夜空のノクターン」という曲は、ひかるが書き足した「ソ」の音まで主旋律に「ソ」の音が一度も出てこない。
作曲家の粋な計らいだった。
曲の細部に至るまで「放課後のプレアデス」の世界観を落とし込んでいるのだ。
最後に「放課後のプレアデス」は背景の描写が息を呑むほど美しい。放課後に雲まで飛び、大気圏を超え、月へ、土星へ、木星へ、ついには太陽系を飛び出してしまう。
そんなデタラメなスケール感に遜色ない背景美術を作り上げてしまう製作スタッフには脱帽だ。
国立天文台が監修しているだけある。
土星に行った話で、土星のリングが氷の粒のような欠片が集まってリングのように見えている描写や、そのリングに密度の違う物体が混ざった時にプロペラのような模様が出来る表現。こんなのアニメで描いた作品が他にあるのだろうか。
2019年の4月に史上初のブラックホールの撮影に成功したという写真がTwitterで話題になった時。驚いた。放課後のプレアデスで見たブラックホールその物だったのだ。
今まで撮影されたことがなかったものをこんなに忠実に再現していたのか。(実在していなかったものを描くことを再現と言っていいのか分からないが)
大分興味を持っていただけるような内容になったのではないか。
私が「放課後のプレアデス」の1番好きな所をあげるとするならば、
12話で綺麗に話がまとまっているのに、その先の未来を無限に想像出来るところ
ではないかと思う。
「放課後のプレアデス」の最終回は5人の別れの話。1つの運命線に集まってしまった5人がそれぞれが元々いた運命線に帰るのだ。
声優さんのトークで聞いた話では、最終回は「卒業式」だと思ってくださいと監督が言ったらしい。
悲しいけれど、それぞれの未来があるのだと。
最終回は5人が元の運命線に帰り、1話と同じ日に目が覚めて幕が下りる。
単純に1話に戻ったのではない。
「みんなと出会って変われた私」になった。
「放課後のプレアデス」は、自分を少しだけ好きになれる、少しだけ前に進もうと思える、そんな話だと思う。
また1話から見直したくなったなぁ。
簡潔に纏めると
「放課後のプレアデス」は全人類に見て欲しい作品
だということです。
長くなりましたが、放課後のプレアデスはいいぞ。
▼TVアニメ「放課後のプレアデス」PV第一弾