感情が滲んだ風景。
昼すぎには箱根湯本駅に着いた。改札を通り、歩いてすぐにところに川が流れている。前に訪れたのは社会人1年目の5月。
選考時、新規テレアポはないと聞かされながら、入社から3週目でバリバリテレアポをやらされ、入社早々に社会人の洗礼を浴びて、大学受験ぶりのストレスに心の余裕を奪われていた矢先、助けを求めるようにやってきた場所。それが箱根だった。
変わらぬ風景を見て、あの頃のずっしりとした気持ちを思い出していたが、今と昔との心境の違いに、自分でも驚いていた。川辺で遊ぶ家族や男女、川水の色、流れ、風が運んでくる温度と、隣を歩く相方の声。そのどれもがあの頃より近くに感じて、心地よかった。
箱根登山バスに乗り、山を登っていく。予約したフォーレは仙石原近辺にあり、20分強揺られ続けることとなった。
子供の頃は、遠足だろうが移動教室だろうが、何時間バスに揺られてもお構いなしにお菓子をこっそり食べたり、ゲームしていたが、今は別だ。あの頃の丈夫なはどこへやらといった様子で、必死にバスの重心移動に対応しながら、余裕ができては外の景色をじっと見ていた。特に相方は相当きていたらしく、ホテル最寄りのバス停に到着した時には軽いグロッキー状態となっていた。
(バス停近くの東屋にて。)
チェックインは15時と、まだ少し時間があったため、荷物だけ預けることにした。対応いただいたのは初老の男性で、仕草もゆったりとしていて、かつ朗らかで紳士的な雰囲気を身に纏っており、リゾートホテルのお客さんとして扱われていることに、少し気恥ずかしさを覚えた。
荷物も軽くなって、足取りが軽くなった僕らはお昼ご飯がまだであることに気づいた。事前の調べでは、仙石原のすすきの草原近くに美味しそうな釜飯屋さんがあり、グーグルマップ上で印をつけていた。再度バスに乗り、仙石原のすすきの草原へと足を運んだ。
このすすきの草原、想像以上に規模が大きく、景勝地という言葉に負けない見事な風景だった。僕らは顔を合わせて驚嘆の表情を見せ合った。
13時を回っていたからか、店内は混んでおらず、ゆっくりと腹を満たした後に、すすきの草原の中に歩いていくこととなった。
当然なのだが、小麦色の絨毯が1本1本のすすきで成り立っていることが実感できるため、近くで見るとそれはそれで圧巻だった。
遥か先にある折り返し地点を見て、中腹で早々に折り返すことを決めた僕らであったが、それは1日目のメインスポットとも言えるポーラ美術館へ足を運ぶためであった。
つづく
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