縦割りと論理的思考力
民間企業から役所に出向で来ている人曰く、公務員の業務ではかなり論理的思考力が鍛えられるらしい。
もちろんどんな職業でも、論理的思考力は必要になるだろうし、特にバックオフィスで勤める方なら、むしろそれがメインスキルになるかもしれない。
ただ、ここで彼が言っていたのは、役所間の業務分担(ポジティブな言い方をすれば。ネガティブな言い方をすると縄張り争い、縦割り)の際の話のようだ。
以前言及したように、公務員の業務では各省庁間の役割分担を意識する場面が多々ある。制度や予算は省庁別に管理しているため、できることには限界がある。その限界を超えて活動することは違法になってしまう。
そもそも、勝手に業務を引き受けて進めようとしても、もともと所管外なので必ずどこかで行き詰ってしまう。先にも進めず後戻りもできない、にっちもさっちもいかない事態になって、バッシングを受ける。
また、所管省庁からも冷ややかな目で見られる。政策を実行したのちの結果についても、基本的にはその分野を所管する省庁が責任を持つ。したがって、仮に所管外の省庁が勝手に他省庁の所管業務に踏み込んで、世間から反発を食らおうもんなら、その後始末をする所管省庁としてはたまったものではないのだ。
そのため、各省庁は自らの所管外の業務については、徹底的に引き受けることを拒むことになる。その時はありとあらゆる証拠をそろえて自らの正当性を主張する。各省庁の権限を定めた法令によることはもちろん、過去の国会答弁から各種会議での検討内容まで調べまくるのだ。
その過程で、その証拠からなぜ自分の所管でないと言えるのか、相手の言い分を上回る理由付けをしなければならない。結果として論理的思考力が鍛えられるということである。
なんとなくネガティブな側面ばかり浮き彫りになった気もするが、政策立案においても論理的思考力は必要になる。一種のトレーニングとして理解することもできるのではないだろうか。