公務員の仕事と行政法学的観点
今回は、実際に自分が経験した業務を例に、行政法上の論点について、実務的観点から紹介してみようと思う。
◆設例
・8月●日、所管の独立行政法人から、△△法に基づく□□計画書の改定について認可申請があった。なお、当該改定は翌年度から施行されることを前提に申請されたものである。
・所管課である××課はこれを受理し、その改定内容について適法であると認め、当該改定につき9月●日付で認可した。
・その後、10月●日に、同独立行政法人から、申請内容に誤りがあることから、正しい内容に修正した内容で再度認可申請があった。
・所管課である××課はこれを受理し、その修正内容について適法であると認め、当該改定につき11月●日付で認可した。
◆論点
今回の設例は、所管の独立行政法人が、申請内容に誤りがあったことから、その内容を一部修正し、全く同趣旨の申請を再度行ったというものである。
①9月●日付認可と11月●日付認可の関係性
まず、今回の論点として挙げられるのが、9月●日付認可(元の認可)と11月●日付認可(修正認可)の関係性である。
行政サイドとしては、無用な混乱を避ける観点から、全く同趣旨の認可であることから、誤りのあった部分のみを差し替えて、元の認可を修正認可で治癒する形にしたいという思いもある。
ただし、やはり一度認可してしまっている以上、修正認可を行ったからと言って、当然に元の認可がなかったことにすることはできない。
この場合、元の認可をなかったことにするには、認可取消という、また別の行政行為が必要となると考えられる。
今回の場合は××法に特別に認可取消手続が定められているわけではないから、行政法の一般規則に則り取消行為を行うことになるだろう。
②有効な□□計画書
別の論点として、各時点で有効な□□計画書はどれかということが挙げられる。特に、今回の計画書は一般国民に影響のある内容であるため、特に問題となる。
今回の場合、施行日を翌年度としていたところ、今年度中に元の認可も修正認可も全て手続を終了している。このため、今年度中においては、どの時点においても元の認可前の計画書が有効となる。
ただ、元の認可と修正認可の間の時点においては、一般に広く知らされていないとはいえ、客観的には元の認可内容を反映した計画書が将来有効なものとして認められることになる。修正認可までの期間によっては、一般国民に対し誤った内容の計画書が知らされる可能性もあったため、この誤りを軽視することはできない。
※その他特殊な論点
今回の□□計画書の改正方式は、新旧対照形式ではなく、全部改正方式であった。そのため、仮に修正認可が行われなければ誤った内容の計画書が翌年度から有効になる可能性があった。
この点、仮に新旧対照方式であれば、正しく改められていなければ、その部分については無効となり、翌年度からの計画書には反映されないことになっただろう。