【一人用朗読台本】彼岸花 |3分

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神様、何故私に色なんて付けたのですか。

嫌われるくらいなら目立ちたくなかった、咲きたくはなかった…

ずっと不思議だった。
私をみた人間はどこか複雑そうな顔をしながら離れていく。
…ねえ、そんなに私の姿は醜いかな。

前に人間が身につけているものに反射をした私をみたことがある。
綺麗な赤色だった。そう思っていた。

街ゆく人に「死人(しびと)」「地獄」「幽霊」などという言葉をかけられる。
…もういっそのこと枯れてしまえば良いのに、雨なんか降らないでよ...

自分の隣には全く同じ形をした白い花が咲いていた。
通りかかったカップルは「素敵...」などと言いながら写真を撮っていた。
...どうして?この赤い色が悪いの?

神様、何故私に色なんてつけたのですか?
憎い、とても憎いです。
綺麗な言葉をかけて欲しいなんて贅沢は言わないから、誰か私に微笑んでよ...

カラフルな傘を持つ人間たちが見えた。
どうやら今日は雨らしい。

父親に手を引かれながら歩く自分と同じ色の長靴を履いた少女を見て願った。
あの笑顔が歪みませんように...


もしあの少女が、誰かにひどい言葉をかけられて辛い思いをしているのなら、私が雨になってその色を落としてあげるね。
....なんて、自分の色の落とし方もわからないのに何を考えているのだろう


もういいよ、なにも考えず、早くここから消えてしまいたい。

次に生まれ変われるのなら、サクラがいいなあ

咲く前から期待をされて、咲き始めてから散るまでもずっと喜ばれる。

誰かに必要とされるなにかになりたい。
自分が必要とされた回数?
そんなの数えようと思う方が馬鹿を見る。
得るものは傷だけだ。

何日が経ったかな、少しだけ身体がかったるいや

....雫が落ちてきた。温かい。雨ってこんなにも温かいものだったっけ?
 

目の前を見ると、薄汚れていてすぐには気が付かなかったが、まえにみた赤い長靴の少女が立っていた。1人で。

目から雨を降らす少女は、私をみて何かを悩んでいた。


……10分程経っただろうか、少女は言った。

「あなたが必要なの、だから許してね」


次の瞬間、身体を駆け巡る鋭い痛み。


嬉しかった。痛みよりも、誰かに生まれて初めて必要とされたのだ、これに勝る感情など今は何も無い。あるはずが無い。


彼女の胸に抱かれしばらくすると、目の前には同じ形に揃えられた石が沢山並んでいた。

全てに何かが掘られている。

少女は一つの石の前に立つと「お父さん、綺麗な花を持ってきたよ」と呟く。


私にお父さんの姿が見えないのは、自分の限界を感じていたからだと思う。


そろそろ意識が飛びそうだ。


神様、色をつけてくれてありがとうございました。

嫌われても、咲いてよかった。


自分のことを必要としてくれる人がいた。

最後まで少女の目から溢れる雨が気になったが、
もう限界だ。

これから、沢山笑ってね



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彼岸花の花言葉

赤色: 情熱/独立/再会/あきらめ/悲しい思い出/想うはあなた一人/また会う日を楽しみに

白色:想うはあなた一人/また会う日を楽しみに

参照: https://kurashi-no.jp/I0016208

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