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好きな曲について考察してみる②

コード理論とかスケールとかそういう技術的な話が一切わからない私が曲について語るという、いつかやったあのシリーズの第2弾。前回の分はAmebaのほうに置いてます。【https://ameblo.jp/peperoncino0310/entry-12461950188.html

この曲を知ったのは今年の7月の話、この曲がリリースされたのは6月。聴く直接的なきっかけになったのは、7月の頭に行った「ROKKO SUN MUSIC」というライブ。それにodolも出ていた。3曲目くらいにこの曲を演奏していたのだが、イントロから引き込まれてしまった。すぐにShazamで検索して聴いていた。


 歌詞の概要をざっくりと説明すると、「日々の小さな不安や、社会での生き辛さ、なんてものは世界規模で見るとちっぽけなものだが、その世界も確実に悪い方向へ動いて行っている。だが誰もそんなことを気に留めないし、自分も結局何もできないまま・・・」みたいなところだろうか。

 イントロは感情を煽るようなピアノから始まり、全体的に暗い雰囲気の曲調。ボーカル・ミゾベリョウのアンニュイな歌声。歌詞も相まってテンションが上がる曲ではないが、どことなくオシャレな曲なので体は動いてしまう。odolスゴイ。そう言えば、以前odolについての何かのネット記事を読んだ際、「メランコリック」という単語があったのを覚えている。メランコリックとは英語で「憂鬱」「ふさぎこんでいる様」を意味する。あぁ確かに、この曲に関してはピッタリな言葉だ。


一番Aメロ「カロリー気にしながら昼食を買う君に最初から向いてない仕事だった。資質は要らないけど、土日祝休めるし悪くないんじゃないとも思ってたけど

 「君」という人物が出てくることから、誰かに話しかけていることが想像できる。この君という人物はこの曲の主人公と同一人物であるかはこの時点ではわからないが、"カロリーを気にしながら"という歌詞から察するに、なんか激務に追われているのだろうか。おそらく転職したのだろうか、なんにせよ日々の労働に追われ心身ともに摩耗している人物が想像できる。


Bメロ「今日はもう寝ないで 記憶があるうち 全部吐き出しておきなって

ここでイントロから鳴っていたピアノとギターの音が消え、ベースとドラムのみの浮遊感漂う曲調になる。誰かに語り掛けている口調だ、あるいは語り掛けられているのだろうか。吐き出しておく、というのは言葉か体の中身か。主人公が着実に心身ともに蝕まれていっているのが想像できる。


サビ「ここどこだか分かんないけど 多分僕以外もうシラフぶってる

サビで繰り返されるフレーズ。「僕」という人物が出てくる。さっきまでの「君」は「僕」であろうと予想。ABメロから考えるに、僕はなんらかの仕事に就職(転職)したがそこで心身ともに疲弊し追い込まれる。そのうち、この世の不条理や理不尽について考え始める。狂っているのはこの世界か、それとも自分か。自分以外の奴らはこの世界の不条理に気づいていないのか、気づいていないフリをしているのか。おかしいのは僕なのか。とりあえずシラフぶって踊るのさ。


二番Aメロ「頭が痛いのは気圧のせいらしいし、除湿器も最近動かないんだ。この国の異常気象を思えば不安にもなるけど、誰かがまた頑張るでしょう。

主人公は寝ないで何かを吐き出せたのだろうか。寝ても寝なくても日々は進みまた新たな一日が始まる。気圧、除湿器、という言葉で生活感を出し、場面をより身近なものにしているように思える。仕事で溜まった疲労やストレスが、自分の生活にも影響を与え始めていることを意味していると考える。

話が変わるが、最近は台風やなんだかんだで日本各地で災害が起こっている。それらは直接自分に関係ないものの、テレビで連日報道される災害のニュースを見ているとやはり気分は上がらない。

自分には関係ない、けれど確実に日本のどこかで苦しんでいる人、死ぬ人がいる。かくいう自分もこの社会の中で激務に追われ苦しんでいるが、その反面順風満帆な人もいるわけで。自分だけが苦しいのではない、けれど自分だけが幸せなのではない。災害で滅茶苦茶になった町もインフラも、自分じゃない誰かが直してくれる。「お悔やみ申し上げます。」とか言う人は結局何にも行動を起こさない。そんなもんなんだな人間って。自分に直接利害関係がないなら関わる必要もない。


二番Bメロ「スーツを着たって似合う自信はあった。気づかないうち首が締まって

ここの歌詞が個人的に好きだ。今の仕事に就く前は、バリバリ働いてやるという意気込み=スーツ、であったのだろう。しかし、仕事に追われ心身ともにすり減っていき、あんなに自信のあったスーツはいまや窮屈な拘束器具にしか見えない。こんなはずではなかった、そういった「転落」「絶望」というワードが見える。スーツを着て社会人になれば金を稼いで家を買って、なんて子供の頃抱いた幻想が壊れ始める。そしてここからサビへと流れてゆく。


ラストCメロ「残酷な事件も連日の下がり続ける株価も、いつの間にかちょっと実感なんて湧いてきてる。誰の目にも全部明らかな結末が、多分すぐそこの暗闇に潜んでる。

サビを繰り返したのち、最後の歌詞。ここでもまた「残酷な事件」「株価」など、日常で目にしやすいワードを使うことで、親近感ある世界観を作っている。未曽有の災害や経済の破綻など、自分には縁遠く関係のないものだと思っていた事柄。しかし、この国はゆっくりではあるが確実に悪い方向へと進んでいる。自分が今置かれている過労という状況、これも大きな目で見れば「若者の過労死」「ブラック企業」といった社会問題である。テレビで連日取沙汰されるほどのことではないかもしれないが、水面下では確実にこの国を蝕んでいるものである。

それはやがて残酷な事件などに繋がりかねない、決して他人事ではなくなってきていることに今私は気づいた。そんなのみんなとっくに分かってる。けどみんな気づいてないフリをしてる。事態は思ったより深刻だけど、多分誰かが何とかしてくれるし、第一どうしようもないし。ならば自分もとりあえずみんなと同じように気づいていないフリをしておこう。


「事なかれ主義」な人々の批判の曲なのかなと思ったり、流される現代の若者の曲なのかなと思ったり。企業体制とか政治などに対して暗に社会批判しているのかなとも思った。歌詞に「土日祝」とか「除湿器」とか「株価」など、身近なワードを出してくるところが面白い。そのようなワードを使いながらも、誰もがときどき感じるような不安や焦燥を切り取って日常の暗部として描き出し、それをこのメランコリックなサウンドに乗せているのが絶妙。是非聴いてみてください。

 

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