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SNSは実体のない電子名刺

「LINE交換しよ〜」なんて言われることが増えた。この”交換”というワード、かなり前から気になっていたのだ。何を交換したのだ?私の手元からLINEアカウントは消えてなどいない。通信交換したらLINEのアカウントが進化するとでも...?いやいやそんな。てことで、久しぶりにちょっとした考察モノ、書いてみます。

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【SNSアカウント、彦摩呂風に言えば情報の宝石箱】

今やSNSアカウントというものは、紙の名刺や免許証なんぞよりもよほど有益な個人情報が詰まっているといっても過言ではないと思うのだ。瞳に映った風景から場所を特定するストーカーがいるようなこの時代、「今日〇〇と遊んだ!」「〇〇に行った!」という速効性のある情報がリアルタイムで投稿されるSNSアカウントというのは、エサの塊みたいなものだ。ネチケットなんて言葉はもう死語になりつつあるものの、「炎上」とか「ネットリテラシー」とか、そんな言葉は未だよく目にする。SNSに触れる世代が年々増えているのだからそれは当然のことか。

スマホを持つ子供たちなら、ほぼ100%くらいの確率で何らかのSNSアカウントを持っていると思う。合コン等で知り合う女の子は何故かことごとくLINEアカウントを持っていないことが多いが、それはそれで...。このSNSアカウントという概念には、LINEやTwitter、InstagramにFacebookに加えて、Tinderやタップルといったものを加えても問題ないと私は思う。出会い系アプリというのは、まさに自分のプロフィールを「名刺」のようにして相手を探すので、間違いなくSNSアカウントの一種になり得る。

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【ミエナイチカラで誰もが強く繋がっている】

SNSをやっていない、ということはコミュニティに属することができないことと同義だ。私の時代にはなかったが、電話による連絡網というものがわかりやすい。例えば学校のクラスであれば、電話がない家庭だとしたら連絡が回ってこないことになり、自動的にコミュニティから外されてしまう(隣人が訪問するなどの何らかの対応はあると思うが)。実体のないコミュニティに属することができなかった場合、タイムリーな話題の共有が行えず、リアルでのコミュニティにも属することが困難になる場合が多い。スマホが欲しい!と懇願する子供の真意は、「仲間はずれにされるのが嫌だ」ということが多いなんて話もよくある。

SNSのコミュニティに属するためには、まず自分のアカウントを作り、他者のSNSアカウントなどと繋がりを持つことで初めて可能になる。この過程において、本題となる「交換」というワードが登場する。SNSアカウントの交換というのは、何らかのコミュニティに属するための通過儀礼とも言えるのではないか。

進学進級就職などなど、新たな環境に飛び込んだ時に、多くの人はそこにいる何らかの同質の関連性を持つ人々とSNSアカウントを交換することだろう。まったくの初対面の人間とSNSアカウントを交換するという行為は、両者がその場で対面しなければできない行為だ。ネットで繋がるにはまずリアルでの関係構築が不可避といえる。
学生などには未だ馴染みがないかもしれないが、社会に出ると名刺交換という儀礼を経験することになる。かくいう私もついこの間初めて経験した。電子媒体の名刺ともいえるSNSアカウントを今まで散々交換してきたというのに、ここに来て紙媒体に逆行してしまうのが何とも面白い。

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【侵入者に気をつけろ!】

ただ、同じコミュニティの中にいる人を全て味方だと過信するのもまた危険なことだ。コミュニティに招いてくれた人物はリアルで対面したのだから信頼しても問題ないと思われるが、そのコミュニティにいる他者は面識のない場合が多い。そんな人物から一方的にアカウントの交換を迫られる場合も多い。「えっ、勝手に追加(登録、フォロー)されたけど誰だろうこの人...」なんてケース、SNSをやっていたら何度も遭遇するはず(面識のない相手が主たる場合の出会い系アプリは除く)。
そうなればもはやそれは交換ではない。勝手に自分の家に入り込んできているようなもので、いわば「侵入」といってもいい。断りなく勝手に学生証を見られることに匹敵する、恥ずかしいよね。
『友達登録する』『フォローする』というボタンひとつで簡単に繋がれる時代ではあるが、アカウント交換というのは実は想像以上に複雑な事象が絡むと言ってもいい。いや、何ならリアルでの関係をしっかり醸成していなければ、軽率に交換を試みてはいけない、とまで言えるのではないか。

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紙媒体の事物がインターネットの進化により時代遅れになりつつある世の中で、若者たちが互いのSNSアカウントを共有することを「交換」と呼ぶのは、多感な時期をSNSとともに過ごし、またSNSによって人間関係を構築してきたからこその概念なのではないだろうか。社会人になってから経験する名刺交換という行為を一足先に経験し、SNSによって人付き合いを学んでゆく今の若者たちは、もしかしたらオトナたちよりも更に複雑で成熟した世界を生きているのかもしれない。

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