紀州のキーワード【編集後記】
ある日突然思い立って実行する旅行は、それこそ"奇襲"だと思う。本日未明、紀州への奇襲を決行する。紀州 is not far --- 紀州はそれほど遠くない。つまり、この作戦のキーワードは…
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こちらは編集後記になります。本編については下記リンクより動画をご視聴ください。
関西の中心に位置する大阪府は、兵庫県、京都府、奈良県、和歌山県の4つの県と隣り合っている。放射状に張り巡らされたきめ細かな路線網のおかげで、そのどれもへアクセスすることは非常に容易だ。
和歌山県もそう。JR線ですら2通りのアクセスルートがあり、南海電鉄もそれに競合するように路線が伸びている。ただひとつ難点があるとすれば、大阪中心部からちょっと"遠い"ことくらい。
大阪府の中心駅「大阪駅」から和歌山に行くには、阪和線を通っていくのが一般的にはメジャーだ。難波を出発点にするのなら、南海電鉄の特急に乗るのが手っ取り早い。
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JR和歌山駅から和歌山市駅に行き、そこから南海電鉄加太線に乗り換える。加太線の車両はバリエーション豊かで、見てる分にも楽しい。時間を調整してお目当ての車両に乗るのもいいかもしれない。
お目当ての喫茶店でランチを済ませて、さて、和歌山駅へと戻らなければならない。和歌山から南へ向かうには、今日の旅程を考えると、13:30の普通電車御坊行きに乗りたいところ。時刻は13時になろうとしているところ、しかし今からまた東松江駅に戻っても、そこから時間を逆算してみるとどうしても予定の電車に間に合わない。
こういうときは路線バスを活用するのだ。近くを通るバスの時間を調べてみると、電車の空白時間をうまいこと埋めてくれたりする。鉄道旅がメインになりがちだが、使える公共交通機関はすべて駆使して最良のプランを組むのが楽しい。
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和歌山駅からさらに南下していく。電車の本数は30分に1本ほどの間隔になるが、特急くろしおが往来するため、線路は電化されておりさらに複線化されている。電車は海南、加茂郷、箕島、湯浅と町を抜けていき、いよいよ今回のお目当て、御坊(ごぼう)にたどり着いた。これこそ和歌山ごぼう抜きである。
JR御坊駅の端っこには0番線なるものが設けられている。BLEACHかな?専用の改札もないようで、列車内でバスのように精算する仕組みらしい。特急くろしおを待っているとおぼしき観光客がちらほらホームに見える中、紀州鉄道を待っているのは、私ともう一人の女性だけであった。そうこうしているうちに、接近チャイムもないまま1両の列車がトコトコとやって来た。
そもそも今回、なんでわざわざ和歌山の僻地にあるこの紀州鉄道に乗ろうと思ったかということなんですが、平素より私がよく見させていただいているYouTubeチャンネル「限界ニュータウン探訪記」で、この紀州鉄道が紹介されていたんですね。で、この紀州鉄道という会社、なんというか複雑な歴史を持つ会社でして。少し挙げてみると、現在の経営母体の源流が遠く離れた福島県にあったりとか、鉄道事業は発足時から現在まで万年赤字だったりとか、そもそもメイン事業が鉄道経営じゃなかったりとか、まぁ話すとキリがないので詳しく知りたい方は限界ニュータウン探訪記さんの動画を見てください。
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西御坊駅には改札も窓口もない。やってきた電車は、しばらくするとまた御坊駅に折り返していく。駅というかもはやバス停だ。駅の裏手に回ってみると、かつて西御坊から先に続いていた線路の跡が残っていた。もともとここは御坊臨海鉄道という路線で、国鉄期にはこの付近の工場への物資の搬入などを行っていたそうだ。
もちろん駅には誰もいない。無人の電車が折り返した後、しばし途方に暮れる。とりあえず、廃線伝いに南の方へ歩いてみることにした。
廃線になった線路は普通、すぐに撤去されてしまうが、ここまで住宅地に溶け込んだ状態で線路が残っているのは珍しい気がする。一応、線路の周囲には「紀州鉄道管理地」と書いてあるが、あまり丁寧に管理されている様子はない。こういう風景を見るとなぜかねじ式が思い浮かぶ。
廃線跡はノスタルジーを感じる。かつてはこの錆びた線路の上を多くの人が乗った車両が行き来していたのだろう。休日のこの時間の車両には私含め3人しか乗っていなかったが、全盛期にはどれほどの人が乗っていて、ここからどこへと向かって行ったのだろう。そんなことを考えていた。
西御坊から近いところにあったコンビニで何か買おうと思ったが、別に近所のコンビニと品ぞろえが変わらないので何も買わなかった。こういうところでコンビニの素晴らしさを実感できるのは、旅行ならではである。
しばらく御坊の町並みを見ながら練り歩いた。かつては御坊にも遊郭があったようで、北新地なる地名や、遊郭っぽい建物、転業店舗、さらには検番跡(遊女の事務所のようなもの)もあった。ざっと見る感じでは、かなり規模が大きかったようだ。紀伊半島の南端、今は寂れてしまったこの町にかつて色街が形成されていたことがまるで夢のようだ。
御坊のさらに先には、和歌山が誇る観光地「白浜」がある。さらに東進すれば、串本、紀伊勝浦、太地と、和歌山の奥座敷が連なっており、紀伊半島をグルリと周遊する頃には、和歌山県の最果ての町「新宮」に着いているはず。さらにその先は三重県。いつかくろしおに乗って、されど世間の潮流には乗らずに、この広大な紀伊半島を一周してみたい。
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ということで、和歌山日帰り旅行編、これにて終了です。道中は思い付きでいろんなところに奇襲をかけてみましたが、どれもいい体験になりました。それではまた、ここではないどこかで。
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旅のしおり【編集後記集】
私のYoutubeチャンネルでUPしている旅行動画の編集後記として執筆した記事をまとめています。マガジンの購読自体は無料です。
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