見出し画像

秋を駆ける貴方へ

このエッセイは、2024年10月に書いたものです。


 朝晩はだいぶ涼しく感じられるようになりました。貴方はいかがお過ごしでしょうか。お元気でいらっしゃりますか。季節の変わり目で、息切れしていませんか(そもそも、そちらには四季があるのでしょうか)。かく言う私は、人のことを言える立場ではないのですが。

 秋は、好きですか。私は好きです。でも、苦手です。空回りしやすい時期なので。色々意気込んで、詰めすぎてしまうんです。はじめは。最近は、ゼミに模擬授業。続々迫る、資格試験。アルバイトに、思い切って申し込んだ、勉強会。どれも大変なのを承知で選んだのは私ですし、全部妥協したくないって、思っていました。でも、なんだか、どれも嫌になってしまったんです。この前も。朝から晩まで頭は回らないし、勉強をしようと思っていた空きコマは、ほとんど思いっきり寝てしまいました。授業も、全ての時間、首が船を漕いでいました。…睡眠スペシャリストを名乗ってもいいくらい(たった今考えた称号です)。5限後の外の風が、まるで駄目な自分を責めてくるかのように、痛く感じました。なんで、こんな冷たい風に晒されながら帰らなきゃいけないのだろうと、思ってしまいました。気づいたら、涙が止まりませんでした。貴方が、恋しくなりました。

 貴方はお見通しかもしれないけれど、こういうのって、私、初めてではないんです。毎年、こうなってしまう。人間、そう簡単には変われないんですよね。無茶だと分かっていても、同じことを繰り返してしまう。でも、そんな不器用な私に、貴方はずっと寄り添ってくれていましたね。その頃は自分のことで精一杯で、気づかなかったけれど。心から感謝しています。ありがとう。本当は直接言えたら、1番いいのですが。文面上になってしまうのをお許しください。

 …貴方のことを書いていたら、いつの間にか、秋風のひんやりとした空気が、心地良く感じるようになりました。つめたいけど、あたたかい。

 そういえばさっき、電車で席を譲った親子が、仲良く並んで本を読んでいました。読書の秋だな、素敵だなって、幸せな気持ちになりました。でも、少し羨ましくなりました。もうすぐ、葉が色付いてきますね。真っ赤に染まったもみじ、一緒に見たかったな。貴方の好きなモンブランも、おいしいねって食べたかった。この前は、逃してしまったから(すっかり忘れてしまっていて。ごめんなさい。)。おしゃれな貴方と秋服を探しに、色んなお店を見て回れたら、とっても楽しかっただろうな。…たられば言っても、現実が変わるなんてこと、ないですもんね。

 貴方に会えるのはかなり先の予定だから、そのときの楽しみに取っておきます。それまでは、貴方からの愛を噛みしめて、一歩一歩、歩いていこうと思います。進んで戻って、時には止まって。また、進んで。

 秋は、苦手です。でも、好きです。相変わらず空回りばかりする日々だけれど、貴方のあたたかさを思い出すから。

 どうか、お元気で。

いいなと思ったら応援しよう!