最高さー行こうぜ/シュガーの話 


高速の事故渋滞に巻き込まれた日。トイレを我慢するのが大変だった。時にトンネルの中を歩いてトイレを目指した時の写真。

上の写真はシュガーとの直接の関係はないですす。ただわたしの運命が180度予想もしない方向に変わった日の写真。この後心が張り裂けそうなくらい苦しい思いをして、地元から上京を決意をします。

彼女との出会いはSNSだった。
同じものが好きでそのコミュニティで知り合った。彼女は絵を描く人だったし、わたしも絵を描く人間だった。そしてそのコミュニティは決して大きいものではなく、わたしたちはすぐに意気投合して仲良くなった。

仲良くなった頃は彼女は大学の卒業前、就職活動を終えて新社会人になる前の比較的心にも余裕がある期間だったように思う(卒論とかもあったかもしれないけど)
当時のわたしは社会人。稼ぎが少ないながらに業務時間もさほど長いものではなく、時間にはゆとりがあった。

最初はSNSのコメントで話し合う程度だった。いつか会いたいねー、なんて言って、そのうちメッセージのやりとりが増えた。イラストを描いてもらったり、描いたり、同じお互いの好きなものを褒め合ったり語り合ったりした。
今度電話しよう!という話になった。もちろん快諾した。楽しみだった。
初めて通話した時のことを覚えてる。わたしはずっと仲良くしてたはずのシュガーといざ話すその時はとても緊張していて、いろいろな御託を並べたりして。彼女はさほど緊張などしていなさそうだった。

わたしは正座して縮こまりながら一言目を発する。「鹿です」
彼女は明るい女の子だった。すぐにハンドルネームを名乗ると、すぐに口からいろんなことを話し始めた。
彼女は社交的だった。会話も上手で、話してて楽しい。
自分のことを話すことが好きだった。でも、わたしの話も聞いてくれる。自分がずっと話すことが得意ではないわたしは彼女との会話の時間は心地の良いものだった。

インターネット上のやり取りなら、文章ならいくらでも話せる。でも、いざリアルで会ってみたりするとうまく話せない。そんなことはよくあることだった。

でも、シュガーとはすぐに仲良くなった。
でも、シュガーは誰とでも仲良くなれる女の子だった。
それでも、シュガーはわたしと仲良くなりたいと歩み寄ってたくさんの話をしてくれた。
思えば、コミュニティが狭いから、同じような感覚を持った人間が少なかったから、という理由は大いにあるけれど、理由はなんにせよ、わたしたちはすぐにお互いが大切な関係になった。
毎日メッセージで趣味の話をして、月に2、3回通話をした。

当時コロナ禍だったことや、住んでいる場所が遠方だったこともあって、わたしたちは直接会おうという話にはなかなか至らず、仲良くなってからどれくらいの経っただろうか、ロックバンドがライブ活動を徐々に再開を始めた頃。

ただ、再開をしたばかりのころはソーシャルディスタンスであったり、キャパシティの制限などで行きたい人全員が行けるほどのチケットが用意されている公演は少なかった。
そんな時期が続いて、少しだけライブ再開の活気が落ち着いて、少しずつ会場に人がたくさん入れるようになって、チケットが取れるようになったころ、
わたしは横浜へとあるバンドのライブに行くことにした。

シュガーもそのバンドが好きだった。
「鹿ちゃんがくるなら、わたしも行こうかな」

わたしは社交的ではない。人に会うのが怖い。ましてや初めて会うなんて信じられない。でも、ずっと話してたシュガーと会える。
怖い。会いたくない。思ってたイメージと違うと思われていたらどうしよう。
嫌われたくない。

シュガーの発言にいろんな考えが頭を巡りながらも、会いたい、という気持ちが僅差で優った。

ライブの当日、わたしはまたいろいろな御託を並べて、約束があるから、とかちょっと遅れちゃうかも、とか、シュガーに伝えた。
でも、シュガーはどんな時でも「待ってるね!」と言ってカフェにずっといてくれた。普通に3時間とか待たせてたと思う。最悪だ。
やっと心が決まって、今から会えるよ、という連絡を入れた時のわたしは、その時誰より心臓がバクバクしていたと思う。

彼女のことはすぐに分かった。
澄んだ空色の髪の毛。
初めて会うシュガーはとても可愛かった。
うそ、彼女はずっと可愛い。

こんな可愛い子とずっと仲良くしていたなんて。
緊張するわたしを前に彼女は朗らかだった。笑顔で「やっと会えたね」って、そういうから、勇気を出して会ってよかったと思えた。
ライブまでの時間はほんの数十分ほどしかない。
そのわずかな時間に歩いて話して、お互いの好きなものの話をして、電話でずっと話していた彼女と変わりなくて、わたしはずっと会うのを躊躇っていたことを悔いた。

ライブの時間になり、席が離れていたわたしたちは一旦離れて、また終わったらすぐに合流して、駅まで歩いて、わたしは地元に帰らなければいけないからここに長居はできなくて。
そうしたらシュガーは、「少しだけ鹿ちゃんの駅方面まで行くよ」と言って自分の家とは真逆の方向の電車に乗って、遠回りしてくれた。
電車で隣に座りながらたくさん話した。
寂しいね。って。
またライブで会おうね。
会えてよかった。って。

わたしは、シュガーと初めて会えたことが、ライブよりもずっと大切な思い出になった。

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