君は光ってるから/シュガーの話
この画像は彼女が作ってくれた朝食
2021年、わたしが東京に通うようになったころ。わたしが上京を目指して転職活動を続けていた数ヶ月前から月に数回の恒例になっている。面接のたびに彼女に家に泊まったその次の日の朝の朝食のひとつだった。
彼女はご飯を作るのがとても上手だった。
話を聞くと元々付き合っていた恋人にもよく作っていたが、あまり気に入ってもらえなくて、それを時々思い出したように口にする。そんな情報が無意識に刷り込まれていたわたしは、彼女の作ってくれたものを褒めるように心がけていた。
この日の朝のことはあまり覚えていないけれど、多分、褒め方が足りなかった。
だから、朝食を出して食べようとした瞬間の彼女は不機嫌だった。
「頑張って作ったのに、ひどい」
びっくりした。
ひどいことを言った記憶はない。
最初は分からなかった。だから、とにかく彼女の機嫌を直すことに必死になった。
元を辿ると、もっと喜んでくれると、思っていた反応ではなかったと、そう思っていたようだ。
彼女はそう言う女の子だった。
わたしより4歳下の、社会人一年目。
時に、急に不機嫌になり、分からずに平謝りすると、
「可愛いワンピースを着ていたのに褒めてくれなかった」
「喜んでくれると思って準備をしたのに、あんまり喜んでくれなかった」
「会いに来てほしいのに、会いに来てくれなかった」
どこで彼女の琴線に触れるのか分からなかった。会いに行きたいが遠距離恋愛だった。すぐに行けるわけじゃない。自分なりの彼女が喜ぶ反応もしたつもりだった。でもうまくいかない時があった。
思い通りにいかないと彼女は癇癪を起こした。
でも好きだった。嫌なことばかり書いているけれどこの時のわたしに誰より寄り添って支えてくれたのは彼女だった。
彼女なりの生き方だったのかもしれない。
ひねくれている私は、今ならそう思えるけれど、後に綴るが結局裏切られていたわたしは、やはり彼女のことを綺麗に書き切れる自信ない。
でも、わたしが彼女を徹底的に拒否してしまったことで、彼女が自殺を選んだ一端を担ってしまったのかという自責の念は一生消えない。