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接客態度に問題あり

突然の電話

下着の話になると、いつも思い出すお客様がいる。
大手ファストファッション店で接客業をしていた頃、1本の電話が鳴った。

予想外の質問

自分は男性だが売り場に行けば女性用のブラジャーは販売してもらえるのか、ということだった。実際に介護や入院等で奥様やご母堂の下着を買いにこられる男性は比較的多い店舗であり、紳士服の取り扱いもあることからお客様としても他店より入りやすい店舗だったのだと思う。

誠実な姿勢

そういった経験から電話口のお客様には「もちろん可能です」と答えた。しかしサイズがわからないという。よくよく話を聞くとご自身の頭部に被るためのブラジャーをお探しで、今まではネットで購入しそれを装着していたということだった。
私はまだ接客をする気でいた。自分で解消できない欲求をどうにかしようと、勇気を振り絞って電話してきた。なるべく最小限の迷惑でご自身の欲求を満たそうとするその姿に、誠実さを感じたからだった。

サイズの確認

まずは「今使用されているサイズはおわかりですか?」と尋ねた。続けて「ホックの部分にタグがございますので、一般的にはそちらにアルファベットと数字の記載が比較的大きめに印字されているはずです」と申し上げた。「ちょっとわからないですね」と返ってきた。
その後、私は「アンダーの数字がフィット感に一番影響するはずだ」と考えた。カップ部分に特別な収納がなければ、アンダーの数字さえ合わせれば満足できるはずだと思ったからだ。

意外な答え

「頭部のサイズはおわかりですか?」と尋ねた。どのような被り方かはわかりかねますが、ぐるりと一周する部分のサイズがお分かりになれば、そのサイズに合わせたブラジャーのご提案ができます、と申し上げた。「ちょっとわからないですね」と返ってきた。

その質問

そんなことよりといった風にお客様は切り出した。「頭にブラジャーをつけるのは、やはり変ですかね?」とご質問された。社会性のある私は「人にはそれぞれの趣向がございますので」と答えた。100点満点。

衝撃の告白

「実は今もブラジャーを被りながら電話しているんです」、とお客様は仰る。私はガッツポーズをしながら「それでは現在装着なさっているブラジャーを少しの間外していただいて、ホックの部分にあるアルファベットと数字をお聞かせ願えないでしょうか?」と。多少声が大きくなっていたかもしれない。

予期しない結末

私の声の大きさに驚いてか、あるいは食い気味の質問に驚いてか、電話は切られてしまった。

反省

接客員として、常に平静を保つことができなかった私は、自戒の意を込めてこの文章を残すことにした。


#接客 #日常 #電話 #コミュニケーション

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