日本酒×バインミーのペアリング体験!お酒の「味変」と「立体感」を知る【Bánh mi Tokyo】
日本酒に、バインミーが合う? 最近さまざまなところでお酒と料理の「ペアリング」が提案されています。そんななか見つけたのが、このイベント。
「バインミー × 日本酒 口福マリアージュ 」(Bánh mi Tokyo 音仲紗良 × 未来日本酒店 てるじい)
バインミーって、ベトナムのサンドイッチです。いろいろな具が中に入っています。そのペアリングって、どうするんだろう? たとえば煮物や漬物みたいに「この味の品にはこのお酒」という、1対1の関係にはなりにくいのでは?
そう思って参加しましたが、結果、すごく合いました。味の立体感という概念を少し知ることができました。
外苑前のBánh mi Tokyoへ
やってきました。外苑前駅から5分程度。
(イベント直前の大忙しの店内)
お店に入った瞬間、エスニックな匂いです。普段日本酒をいただく居酒屋さん感は一切なし。こういうところで、また昼(の回に参加)から、逆に異世界の酒を飲むということにテンションあがります。
手前が「Bánh mi Tokyo」の音仲さんです。「意外な組み合わせだと感じますが、食べると意外と意外じゃないです」という謎の(かつ興味深い)説明をされていました。
こちらがてるじいさん。日本酒ソムリエとして活動されているそう。
今回のイベントでは、料理と日本酒のセットを4つ順番にいただきます。ひとつの料理に対し、お酒は同じものが2杯。2杯目に「アレンジ」をほどこして、より合うようにしてくれるそうです。
好きです、そういう途中で味覚がかわって楽しい仕掛け。
早速、いただきます。
ペアリング①パクチーサラダ×久保田sparkling
まずは前菜と乾杯酒。サラダとスパークリングで乾杯します。
久保田のスパークリングってこんなに軽いんですね。サラダにある柑橘とあわさって爽やかです。
「Bánh mi Tokyo」の特徴は、ベトナムの味を「日本風に再構築した」ところがポイントだそうです。このサラダではナンプラーの代わりに日本の魚醤「しょっつる」を使い、柑橘は晩柑。確かに、日本酒と一緒でも違和感はまったくありません。
①味変:レモン+ジンジャー
ここでてるじいさん、10%のレモンを加え、ジンジャーパウダーを追加しました。お酒に「調味料」を足すのですね。本人曰く、これにより「味の立体感」がうまれるそうです。…味の、立体感?
「立体感!」
アレンジした久保田の味は、これはもう、スパークリングワインです。とても軽くて飲みやすい。日本酒のベースの「甘み」が、レモンで引っ込み、代わりにでてきた酸とか刺激が、パクチーの香味とあう、という仕組みなのだそうです。合います。
ペアリング②レバーパテ×WAKAZE ORBIA LUNA
続いてはレバーパテ。こちらは「油を使わず、甘酒とカシューナッツで軽く仕上げています」というもの。ソースはたまり醤油で、バゲットは米粉、ピクルスに見えるのは「なます」です。ビジュアルこそ違いますが「おつまみ盛り合わせ」みたいな一皿です。
お酒はフランスと三軒茶屋で酒造りを行う気鋭の酒造「WAKAZE」のもので、中でも貴醸酒(→甘いお酒)でオーク樽仕込み(→独特のクセとか風味)というもの。レバーには多少癖のあるお酒のほうがあうのですね。
②味変:シナモン&熱燗
熱燗でレバーが溶け、口のなかで混ざります。意外というか、シナモンとたまり醤油がぴったり合います。たまにナマスをつまみ、またお酒がすすむ。
これ、おいしいです。いったんイベントストップしてこれだけで数杯ちびちび楽しみたいほどです。レバーパテと熱燗の組み合わせ、今度家でやります。
ペアリング③タラバインミー×山形政宗まろら
3品目で主役の「バインミー」が登場です。Bánh mi Tokyoのバインミーは米粉100%。具材はタラ、昆布みかんの葉、赤味噌、柚子胡椒。これほど和の食材を使っているのに、食べるとしっかり「エスニック」を感じるから不思議です。
日本酒は「山形政宗まろら」。赤ワインで使われる「マロラクティック発酵」でつくったお酒だそうで、乳酸系のやさしい味わいになるそうです。
合わせてみると、まずパンがおいしいです。香ばしくてつまみになるパンです。お酒自体の個性は控えめ。でもバインミーを頬張りながらいただくと、おいしさがはっきり出てきます。合います。
③味変:カルダモン&熱燗
熱燗にし、おちょこの上からほんの少しパウダーを振るアレンジ。
すごいです、香りが一気にさわやかになります。アレンジ前は「噛んでいるときのお酒のおいしさ」があっていたところ、「口に含んだ瞬間の香り」も合うようになりました。つまり、食べ始めから飲み込むまでずっと合っています。
この日、てるじいさんは「味の立体感」と繰り返し話していました。
ペアリング④チャーシューバインミー×玉旭
ラストはガッツリ系の「チャーチューバインミー」です。ソースには豆たまり、アクセントに五香粉を使っているそう。お酒もパンチのある純米酒です。「濃さを揃えた」とのことですが、確かにどちらも負けていません。大口で頬張りたいタイプのおいしさです。
④味変:メイプルシロップ+ナツメグ&熱燗
…マジか、と驚きました。メイプルシロップ投入のアレンジです。
日本酒って基本的に「甘み」のお酒であり、アレンジやカクテルでは他の要素(柑橘とか刺激とか)を足すものだと思っていました。なのに、日本酒の根幹となる「甘み」自体を足すとは、想像もしていなかったです。
だけど、これが合う。すごいです。超合います。
甘みがましたお酒が、甘辛いソースにぴったり。チャーシューの脂身がお酒で溶けて、濃厚な味と味(と味と…いくつ合わさってるのかわからない)が渾然一体となります。バインミーの中からたまにでてくる香味野菜の変化も楽しいです。
バインミーと日本酒の「立体感」の正体
(バインミーにはひとつひとつ焼印が押されます)
最初は「いろいろな味が入っているバインミー」が、どのように日本酒と合うのかが不思議だったのですが、これがとても面白いです。
バインミーと日本酒の味わいが、最初は「香り」に合い、次に「メイン具材」と合い、それに加えて「たまに出てくる野菜」「ソースのかかり具合による濃淡」さらに「下支えするパン」まで、食べ進める間、口の中のあちこちでカチッカチッと、合うポイントが変わってきます。
繰り返しでていたキーワード「立体感」とは、こういうことなのか…とうっすら感じました。アレンジによるお酒の変化も楽しいですし、すごい手品を体験させてもらったみたいです。
ちなみに、今回のお酒は「未来日本酒店」で購入できるとのこと。「玉旭」ほしいです。てるじいさん、音仲さん、ごちそうさまでした。